【営業に効く心理学シリーズ】第15回 契約時の「抵抗」や「文句」を乗り越えるための「5K」とは

2020年1月8日

営業活動を心理学の観点から紐解き、効果的な成果をもたらすヒントを、 『営業に効く心理学』シリーズ 【全17回】でお送りします。

一度は提案を受け入れ、いざ契約というタイミングで出てくる「やっぱり高いな」「本当にこのやり方でうまくいくの?」というお客さまとのやり取り。
これはお客さまの緊張感や不安の現れと言えるでしょう。このような状況を乗り越えるためのスキル、「緊張緩和の5K」を紹介します。

契約間近で「ちょっと待って!」ためらうお客様をサポートする方法では、お客さまが契約の時に感じるためらいについて述べました。
いざ契約する時というのは、お客さまも営業担当者もいちばん緊張が高まる時です。

お客さまは自分の感じている緊張感を、営業担当者への「反論」という形で表します。
いったんは納得したはずの価格に「高すぎるよ」と文句をつけたり、「このやり方じゃ、やはりうまくいかないと思うな」と問題点を蒸し返したり、といったお客さまの態度に、戸惑いを感じた経験はありませんか。
これは、裏を返せば、みなさんに「そんなことはありませんよ」と納得させてほしいのです。

つまりお客さまの抵抗や文句は、みなさんに対する「質問」なのです。

本当は「この価格をどうやって上司から決裁をもらおうか」とか「どうやったらほかのメンバーにこのやり方がベストなのだということを納得させられるのか」という質問をしたいのに、緊張感が高いために、「反論」の形でみなさんにぶつけられたわけです。

このような時にお客さまと一緒にこちらまで緊張したり、間違っても反論を返したりしてはいけません。
お客さまの不安な気持ちを理解し、それに共感を示せばお客さまも気持ちが落ち着きます。
そしてあなたがその提案に強い自信を持っていることがわかれば、お客さまも同じように自信を持つことができるのです。

お客さまの緊張を和らげ、「反論」を乗り越えるためのスキルがあります。
これを、各スキルの頭文字をとって「緊張緩和の5K」と呼びます。

緊張緩和の5K

  1. 傾聴
    お客さまの言葉に耳を傾け、もっと話すように勧めて、緊張や不安を吐き出させること。
  2. 共感を示す
    お客さまの立場に立ち、お客さまの言葉を自分の言葉に言い換えて、十分に気持ちを理解していることを示すこと。ここではお客さまの言ったことをそのまま受け止め、反論しないことが大切です。
  3. 確認する
    お客さまの「反論」の背後にある問題点を見極め、「質問」の形で、何を問題視しているかについての同意を得ること。これがいちばん大事なスキルです。第三者の事例などを通して、お客さまが自分の状況を新しい観点から見つめ直せるようにサポートします。
  4. 解決策を示す
    その問題点に対し、こちらのアイデア、ほかに考えられる方法など、こちらからの答えを示すこと。
  5. 行動を求める
    こちらの出した解決策に対して、肯定的な決定と行動をしてくれるようにお客さまに依頼すること。

1,2は緊張を和らげるためのスキルです。後の3つは、「反論」を乗り越えて契約に至るまでのスキルです。
最後の「行動を求める」は、もう一度「契約を求める」ことにほかなりません。
お客さまの「反論」を通して真の問題が明らかになった時、それを一緒に解決して契約を成功させるプロセスが「緊張緩和の5K」なのです。

緊張が高まっているお客さまの気持ちを理解しサポートするためには、みなさん自身が冷静で自己管理ができている必要があります。
そのために、この5Kを有効に使ってください。

このようなスキルを身につけるには、営業担当者自身がある種のカウンセラーになる必要があります。ウィルソン・ラーニングでは、『カウンセラー セールスパーソン(CSP)』という、営業担当者向けの育成プログラムを用意しています。
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