管理職が抱える悩みとニーズに対応したプログラムを提供

一般社団法人 原子力安全推進協会
総務部 人事グループ 課長
岸 珠江 様

2024年4月23日

ご利用サービス

  • MHPをカスタマイズしたプログラムをご提供し、その後MBO-Sコースとして商品化されました。

一般社団法人 原子力安全推進協会(JANSI)は2011年3月に発生した福島第一原子力発電所のような事故を二度と起こしてはならないという日本の原子力産業界の総意に基づき、2012年に設立された「自主規制組織」です。
『日本の原子力産業界における世界最高水準の安全性の追求(〜たゆまぬエクセレンスの追求〜)』をミッションに掲げ、事業者の自主規制が効果的、効率的に進むよう事業者を牽引しています。
設立当初の組織メンバーは、シニアクラスの専門家が多勢であったため、人材育成を目的とした研修は設けていませんでした。しかし、新規採用、中途採用を開始し、若手・中堅プロパー層が増えてきたことにより、長期時間軸を踏まえた5階層別の育成プログラムを2021年度に立案し、5階層の一番上位であるグループリーダー向け研修を2022年度より開始しました。

課題・背景

  • 管理職経験のある専門家たちで形成されている組織であり、自他ともに育成研修の必要性が感じられず、研修を実施する概念さえなかった
  • さまざまな職歴で価値観の異なるグループリーダーたちに対し、事業者を牽引する「JANSIのグループリーダーの目指す姿」の認識合わせが、組織力向上のために必要であった
  • 対象者は発電所への滞在出張が多く日々多忙であるため集合研修の実施が困難な状況であった

支援内容

  • 受講対象者が実際に抱える課題をすり合わせながら進行する、悩みやニーズにマッチしたプログラムを提供
  • ティーチングよりもディスカッション・意見交換を重視した内容にカスタマイズ
  • Web会議ツールの使用制約条件などにも柔軟に対応
  • 研修後のスキル実践をサポートする資材でフォローアップし、スキルの定着化を図る

課題・背景

  • 【Q】どのような課題・背景がありましたか?

JANSIのグループリーダーとして「目指すべき姿」の認識を合わせる

一般社団法人 原子力安全推進協会(以下JANSI)の職員は、電力会社やメーカーからの出向者・転籍者で構成されていました。長く管理職経験のある専門家が多勢のため、教育研修を実施するという概念自体がありませんでした。
しかし、2016年度より新卒採用を開始、中途採用者も増えてきたことで、長期育成スキームを実施するための教育プログラムが必要になりました。そこで、階層別研修として、入所5年目、主任、副長、役付職員、グループリーダーの5つのクラスに分けたステップアップ研修を新設しました。
なかでも、5つのクラスの最上位であるグループリーダー層に対する課題として、事業者を牽引する「JANSIのグループリーダーの目指すべき姿」の認識合わせ、組織力向上のための連帯感の醸成、マネジメントスキルの復習、という3つの思いがありました。
この3つの課題を網羅的に学べるように、目標管理マネジメントに特化したウィルソン社の「MHP」のコースからエッセンスを凝縮して、JANSI向けにカスタマイズくださったプログラム「MBO-S」を、初回のグループリーダー研修として導入し、2022年度に実施しました。

  • 【Q】ウィルソン・ラーニングを選んだ理由を教えてください

原子力業界の特性にしっかり合わせる対応力と圧倒的なカスタマイズ力が決め手に

今回の研修の委託先候補は3社ありましたが、私たちのニーズに最も合わせてくれたのがウィルソン・ラーニングでした。
原子力業界はITセキュリティが厳しく、Web会議ツールの指定など、使用可能なITツールが限られています。セキュリティの制約もふまえた柔軟な対応力が選定理由の1つでもあります。
実は、ウィルソン・ラーニングとの出会いは、コロナパンデミックまで遡ります。
当時、JANSIが主催する事業者向け研修を急遽オンラインへ移行せざるを得ない状況になり、T4(オンライン研修技法)でオンラインスキルを勉強させていただき、短期間で研修のオンライン化を果たした実績があります。オンラインに関する知見に非常に長けていること、レスポンスが速くていねいであり、私たちのニーズに合わせて柔軟にカスタマイズくださったプログラムを提案してくれるウィルソン・ラーニングに絶大な信頼を置いていたので、グループリーダー研修も依頼しました。
今回MHP(MBO-S)を選定した理由は、マネジメント概論、目標設定、観察、コーチ、業績評価・育成、能力評価・育成と、バランスよくコンパクトにまとまった内容であり、シニアクラス管理職の復習に最適だと思ったからです。さらに実施のために必須だと考えていたグループリーダーへの事前のニーズ調査もサポートいただきました。
さらに、講師の優れたファシリテーション力と、講師およびスタッフ方々の真摯に向き合ってサポートくださる姿勢が非常に助かりましたので、半年後に行うフォローアップ研修のファシリテーター役もウィルソン・ラーニングの同じ講師に依頼させていただきました。

支援内容

  • 【Q】導入にあたり苦労した点をお聞かせください

多忙を極め、マネジメント経験もある管理職対象だからこそ、成人学習の根源である「本人にとってのメリット」を伝える必要があった

グループリーダーは母体で長年管理職を務めてきたメンバーばかりです。
平均年齢は60歳超で、すでにさまざまな職歴と高い専門スキルを持っていますから、「今さら研修なんて必要ない」という意見がほとんどでした。
それぞれ母体も価値観も異なるグループリーダーたちに、この研修を受講する「本人にとってのメリット」を理解してもらうまでには、大変な苦労がありました。
また、グループリーダーは発電所へ出張する機会が多く、発電所に2.5週間ほど滞在することもあり、全員が同じ日に顔を合わせて研修を受けること自体が困難なため、日程調整も苦労しました。

  • 【Q】導入にあたり工夫した点を教えてください

ニーズ調査を基にプログラムを構成し、地道な声かけで動機づけを促した

「忙しくて時間が取れない」「マネジメントは十分経験してきたので研修は不要」と主張する層にも響く内容にするために、まずは、対象者全員に現在の悩みごとや困りごと、研修への期待やマネジメント遂行の自己評価アンケートを実施しました。
そして、事前に拾い上げたニーズを基に試行錯誤していく中で、目標管理マネジメントに特化したMBO-Sを作成していただきました。
具体的には、同期拘束時間を短縮するために、事前課題として、コンパクトな動画をeラーニングとして前出し、同期時間はグループワークを中心に、ディスカッションや気づきの場に徹しました。
ウィルソン・ラーニングはJANSIのことをよく理解しようと思ってくださり、グループリーダーたちに響くような前向きな提案をし続けてくださいました。共に研修を作りあげていく、まるで同士のような心強い存在だと感じました。
さらに、一人でも多くのグループリーダーに参加してもらいたい念があり、組織が提供する一方的な研修ではなく、「自分たちの悩みを解決するための一助となる研修である」と認識してもらえるよう個別に声をかけて参加を促し、地道に動機づけを行っていきました。

  • 【Q】導入して良かった点をお聞かせください

悩みや課題を共有できる意見交換会や交流の場の必要性を実感してもらえた

当初は開催自体が危ぶまれた研修ですが、結果として、参加率は非常に高く、研修の評価もすばらしいものになりました。
「このような研修をもっと早く実施してほしかった」という意見が多くあり、グループリーダーとしての悩みや課題を共有して議論できたことは、大変意義のあることだったと実感してもらっています。
また、グループリーダーたちが、組織内の横のつながりを作る交流の場や、意見交換ができる場を求めていたことも、今回の研修を開催したことでわかりました。運営側にとっても非常に良い気づきの機会になりました。

2022年度 グループリーダー研修実施結果

受講者の理解度・満足度(5点満点中)

  • 第一部 24名中22名参加(参加率 92%)
    理解度:4.2点 役立ち度:4.4点 満足度:3.8点
  • 第二部 22名中21名参加(参加率 95%)
    理解度:4.4点 役立ち度:4.4点 満足度:4.1点

受講者の意見(抜粋)

  • 改めてグループリーダーの役割の重要性を再確認するとともに、他のグループリーダーの日常の取り組みや課題を共有できたことは、今後業務を進めるにあたり大変参考になった。有益で有意義な時間であった。<多数>
  • 意見交換や議論ができる場は貴重であり、こうした研修をもっと早く実施してほしかった。
  • マネジメントスキルの再確認だけでなく、さらに新しい知識・概念を勉強できて良かった。

2023年度は新任者が3名と人数が少なかったので、2022年度の参加者に有志参加を呼びかけたところ、多忙にも関わらず8名もの参加希望があり、活発な意見交換会になりました。
受講対象者の平均満足度は4.3点、有志参加者の満足度は5.0点満点であり、この研修に大きなメリットを感じていることを認識しました。

効果・成果

  • 【Q】どのような効果・成果がありましたか?

苦手意識のあった世代を超えたコミュニケーションが円滑になった。シェアードリーダーシップ概念が広まった。

長年管理職を勤めてきた専門家に対して研修を実施できたこと自体に、周囲からは驚きと賞賛の声があがっています。それほど実施が困難だと言われていましたから、大きな成果だと言えます。
事前のニーズ調査で、シニアクラスの管理職が若い世代への接し方に悩みを抱えていることがわかり、若い世代とのコミュニケーションの取り方、目標設定やフィードバックのコツ、1on1の手法も研修内で触れてもらえるよう、ウィルソン・ラーニングに相談し、対応してもらいました。
研修後は、テキストを用いながら、メンバーとコミュニケーションを取ったり、目標管理面談に挑んだり、1on1を実施する回数が増えてメンバーとのコミュニケーションが円滑になったり、という声を聞いています。
さらに、今回の研修でカスタマイズして組み込んだシェアードリーダーシップの概念を広められたことは、組織としても非常に大きな効果があると考えています。高い専門スキルを持つメンバーの集まりですから、グループリーダーが一人で頑張るのではなく、メンバー全員が自分の得意分野でリーダーシップを発揮している状態になれば、おのずと組織力の向上につながります。シェアードリーダーシップの概念が浸透し、さらなる連帯感の醸成や組織の活性化につながることを期待しています。

研修の効果・成果に関する受講者の声(抜粋)

  • メンバーとコミュニケーションを取る際に、テキストで復習しながらコーチングを実践している。
  • タイムリーな情報共有のため、忙しいながらも時間を作り、定期的に1on1を実施している。
  • メンバーに対して支援する気持ちを意識して伝えられるようになった。
  • 観察・評価・育成の流れを改めて認識し、成長のための勉強会を実施している。
  • シェアードリーダーシップの概念をメンバーに共有したことで、一人ひとりが能動的に動くようになった。
  • 【Q】今後の展望についてお聞かせください

経験者が対象だからこそ、ニーズにマッチした研修を提供し続けたい

今回のグループリーダー向け研修はうまく回すことができたと思えます。この成功のプロセスを他の4つのクラスにも適用して、プログラムを設計・改善していきたいです。
新設当初は、新任対象者にのみ実施することを想定していましたが、受講者の満足度が非常に高く、行動変容も実感できています。新任時だけでなく、今後も定期的に実施することを現在検討しています。
経験者かつ専門家が集まる組織だからこそ、事前にていねいにニーズを拾い上げ、それぞれのニーズに適した研修プログラムを提供することを大事にしていきたいと考えています。