【営業に効く心理学シリーズ】第4回 お客さまの心を開く「共感のスキル」とは

2019年10月16日

営業活動を心理学の観点から紐解き、効果的な成果をもたらすヒントを、 『営業に効く心理学』シリーズ 【全17回】でお送りします。

お客さまの緊張感を下げ、ビジネスの話に専念できる状態を作るにはどうしたらよいでしょうか。
「この人と話してみよう」とお客さまに思っていただくための具体的な方法について考えてみます。

営業の場で理解しておきたい「2種類の緊張感」の回では、「緊張感には2種類ある。対人関係の緊張は早く下げ、仕事上の緊張は早く上げることが大切」と書きました。
今回は「対人関係の緊張を早く下げる方法」について紹介します。

お客さまの緊張感が高いのは、「この営業担当者は私をコントロールして買わせようとしている」という警戒感を持っているからです。
「その手には乗らないぞ」と自己防衛している姿が「緊張感」となって現れているのです。

そのような時に営業担当者は、どうすればいいのでしょうか。

それは「私はあなたと同じ側に立っています」というメッセージを伝えることです。

あなたに無理に何かを買わせたりする「敵」ではなく、あなたの問題を解決するのをお手伝いする「味方」である、ということをわかっていただくのです。
そのためには、お客さまの立場に立って、不安や疑問を理解し、考えるだけでなく、「お客さまの立場で考えた」ことを相手にわかってもらわなくてはなりません。
これを「共感のスキル」といいます。
これには具体的なやり方があります。

たとえばみなさんが、あるお客さまを今日初めて訪問するという設定にしてみましょう。

(1)準備

  1. お客さまの立場に立って、お客さまが持つであろう疑問(私たちのどのようなことについて知りたいのか)をリストアップする。
    できる限り頭を絞って疑問を出してみること
    (例)
    • どんな会社の人なんだろう?
    • 何をしに来るのだろう?
    • うちの会社のことを知っているのだろうか
    • どんな営業担当者だろうか
    • 知識や経験はあるのだろうか
  2. これらの疑問にどのように答えるかをあらかじめ考えておく

(2)実行

  1. 「お客さまが持つであろう疑問について考えました」と告げる
  2. 考えてきた「疑問」を伝えて、お客さまに確認する
  3. 疑問に対して用意した答えを話す

ここで大切なのは、「実行」の場面です。
〝私はあなたのために役に立ちたい、あなたの味方です〞ということをはっきりとお客さまに伝える必要があるのです。

また、「もし、自分の考えた質問が的外れだったらどうしよう」という不安を持つ人がいるかもしれません。
大丈夫です。あなたの熱意が伝われば、お客さまが助けてくれます。

このスキルを実践することで、あなたは、お客さまの立場に自分をおく、というとても重要なトレーニングができます。
さらに大事なことは、あなたの誠意と努力によって、「この人は私のことをよく理解してくれようとしている、私の味方だ」とお客さまが思ってくださることです。
それによって「対人関係の緊張」が下がり、ここで初めて双方安心してビジネスの話に専念できるようになり「仕事関係の緊張」が上がる下地ができました。

これが、お客さまが「不信」の状態を脱して「信頼関係を作る」プロセスへ踏み出す第一歩なのです。

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