【ATD2018】企業倫理浸透のキーパーソン「エシカル・リーダー」(WLWセッション1)

2018年7月26日

ATD2018で、ウィルソン・ラーニングは2つのセッションを開催いたしました。

セッション1は、『エシカル・リーダー(Ethical Leaders)の育成』です。「エシカル・リーダー」は、近年大きな脚光を浴びているトピックです。200セッション以上もの講演の中から、本セッションに多数のご参加をいただき、このテーマに対する関心の高さを感じました。まことにありがとうございました。

セッション報告と題しまして、講演概要をご紹介します。

「エシカル」とは?

「エシカル」という言葉の認知度が高くなり、次第に浸透してさまざまな場面で使われるようになるにつれ、その定義の曖昧さを感じる人も多いのではないでしょうか。

“Ethical(エシカル)”は、「倫理的な、道徳上の」と訳されますが、この意味をどのようにとらえればよいのでしょうか?

“Ethical(エシカル)”に込められている意味合い

「倫理的」という意味を持つこの言葉は、社会保全や社会貢献という場面や文脈で使われることも増えてきています。しかしこれは必ずしも何か大きなことを成し遂げるという意味ではなく、一人ひとりが日々倫理的な認識と思考を持ち、高い倫理観に基づく行動をできることを指しています。

なぜ今「エシカル」なのか

不正などの多発という要因もありますが、背景には国や地域、文化をまたぐような多様性のある環境が多くなることで、対応しなければならない倫理観や価値観のバリエーションが急激に増えていることもあるでしょう。

ある国では非倫理的な事柄が、別の国ではそうは受け止められないという矛盾や、それに伴うインシデントが増加しています。
また、個人のレベルでも、これまでは黙っていても通じ合えたことがそうはいかなくなってきています。

一人ひとりがさらに視座を上げて伝達し合わなければ、通じ合えない世界になってきているということです。

非倫理的な行動による組織へのインパクト

このような環境の中で、今、非倫理的な行動によって起きる問題の連鎖と発生コストを十分に理解しておく必要があります。

“非倫理的な行動によってアメリカのGDPのおおよそ6%、プロジェクトの総コストの約5%が失われている

その他にもブランドイメージ、社員のパフォーマンス、採用・離職などへの影響は計り知れません。

ウィルソン・ラーニング グローバルR&Dバイスプレジデントのラインバックは、不正や非倫理的行動による組織への多大なインパクトを防ぐためには、組織全体での倫理教育に取り組むだけは足りないと言っています。

組織開発・人材育成から見た「エシカル」

ある状況でどちらを選ぶか、自身の価値観が問われるような選択に悩むことを「エシカル・ジレンマ(Ethical Dilemma)」といいます。「エシカル・ジレンマ」に直面した場合に、守るべき価値観に照らして判断をし、アクションをとれる人材を育てる。「エシカル・ジレンマ」に対して誠実に向き合い、問題解決を促すことができるようなリーダーシップの発揮と組織環境作りが組織開発・人材育成におけるミッションとなります。特に行動模範となるリーダーを、階層別に配置できるように取り組んでいくことが重要です。

階層別「エシカル・マインド」の考え方

なぜエシカル・リーダー育成を階層別に考える必要があるのか

一言で「リーダー」と言っても、社員の経験や能力によってその人の直面する課題が異なるように、直面するエシカル・ジレンマは階層によって異なるからです。

階層別に直面するエシカル・ジレンマの例と組織開発・人材育成のポイント

エシカル・マインドを言動に移すための3つの鍵

リーダー層別でのエシカル・マインドの育成が、行動として組織に浸透するためには、共通して次の3つの点をおさえることが重要です。

  1. 行動を変えるきっかけ(トリガー)となるイベントからエシカル・マインドを理解する。また、自分がエシカル・リーダーとなる必要性やふさわしい行動をとった場合ととらなかった場合のインパクトを理解し、エシカル・ジレンマの解決のために重要なバリューを特定する
  2. エシカル・ジレンマを乗り越えるために必要な階層ごとのリーダーシップの本質を引き出す
  3. バリューに基づいた行動への変化につなげる

エシカル・リーダーとして考えるべきバリューそれぞれに対して取り組んでいくことが育成のポイントとなることを紹介しました。

当然のことですが、リーダーシップ育成、エシカル・リーダーや自社の価値観に関する対話の方向性は、はじめから明確にはなっていません。1回や2回の短期間で完結するものでもありません。もしかしたら、まったく新たなアプローチで自社の現状を再認識することが必要かもしれません。

本セッションでは、対話のワークショップとして、参加者同士と講演者とで自社の現状を把握するためのディスカッションを実施しました。
自社のリーダーシップ育成アクションプランの策定の出発点として、この国際会議から戻った後に自社の状態を把握するための対話の材料となるトピック抽出のプロセスを体験していただきました。

講演概要

タイトル:

“Developing Ethical Leaders from the Ground Up”
多彩な価値観・社会環境を配慮し行動できる「エシカル・リーダー」の育成~

内容:

  • リーダーシップ開発において“エシカル”であるとは?~組織開発・人材育成の視点~
  • リーダー層別「エシカル・マインド」の考え方
  • “エシカル・リーダー”を生み出すためのポイント

本講演は米人材育成専門誌Training Magazine主催の弊社連載ウェビナーでもご好評をいただいたセッションです。

スピーカー:

デイビッド・イェスフォード(シニアバイスプレジデント)
マイケル・ラインバック(グローバルR&Dバイスプレジデント)

■ レポート

浅井 綾子
ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社
プログラム開発担当(米国駐在)
米国ミシガン州立大学コミュニケーション学部卒、同大学院修了。異文化コミュニケーション、医療・公衆衛生分野を対象としたヘルス・コミュニケーションを中心に研究。在米日本語補習授業校 初等部教師、日系医薬品開発業務受託機関(CRO)での勤務(クオリティマネジメント、メディカルライティング)を経て、2015年ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社に入社。2017年5月より同社米国支社に駐在。

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