リーダーになりたがらない若手社員、企業はどう対処する?

2022年5月31日

組織のパフォーマンス向上において、リーダーは重要な役割を担います。多くの企業では、自社が求めるリーダーシップ像を明確にして、それに沿った人材開発を進めているのではないでしょうか。しかし、若手社員のなかにはリーダーの役割を担うことに苦手意識を持ち役割変更を拒むケースや、リーダーに挑戦させたもののうまくパフォーマンスを発揮できないケースもあるようです。

今回は、組織の将来を担う若手社員から、どのようにリーダーシップを引き出すべきかを考えていきます。

若手社員がリーダーシップを発揮したがらない理由

若手社員がリーダーシップを発揮することに対して苦手意識を抱いている、どうフォローすれば良いかわからないといった悩みを持つ企業もあるのではないでしょうか。

リーダーシップを発揮したがらない若手社員、実はその理由の多くは本人が所属するチームのリーダーにあります。たとえば以下のようなケースが考えられます。

  • リーダーがトップダウン型やカリスマ型である
    所属しているチームのリーダーがけん引タイプのリーダーシップに固執しており、独りよがりになっていないでしょうか。
    けん引タイプのリーダーはうまくいけば大きな効果を発揮しますが、リーダーの責任が重くなり自身が過大なプレッシャーを抱えることになるケースもあります。
    けん引タイプのリーダーを間近に見ていて「あのようにはできない、なれない」と感じた結果、自身がリーダーになることに抵抗を示してしまうのかもしれません。
  • リーダーのフォローが手厚すぎる
    リーダーの個人スキルが高いゆえに、問題が発生した場合にリーダー自身がそれを解決しようとしてフォロー過多になってはいないでしょうか。
    フォローや問題解決はリーダーの役割のひとつではありますが、マネジメント業務と合わせると業務負担が多く、メンバー側はリーダーへの申し訳なさ、自身のふがいなさなどを感じてしまいます。また、問題解決において必要以上にリーダーが関わることはメンバーの成長機会を奪うことにもつながり、意欲あるメンバーに不満を生じさせることがあります。

    若いメンバーの場合、リーダーイメージは身近な所属チームのリーダーによって培われることが多いでしょう。上記以外のリーダーの場合であっても、「リーダーシップを発揮する=所属チームのリーダーのようにふるまうこと」と感じてしまい、自分自身の指向や性格とイメージとの差が大きいと、結果としてリーダーシップ自体に苦手意識を持ってしまうのかもしれません。

    では、今求められるリーダーシップとはどのようなものなのでしょうか。それがわかれば、若手社員が持つリーダーシップへの苦手意識を克服するヒントが見えてくるかもしれません。

今求められるリーダーシップとは

近年は、メンバー全員がリーダーシップを発揮する「シェアド・リーダーシップ」や、各メンバーの能力、専門性、個性に対して相互作用を促し、協調性のあるチームに育てていく「グロース・リーダーシップ」など、コミュニケーション重視のリーダーシップを目指すことが主流となっています。

ビジネス環境の変化が激しい現在、「正解」は誰も持っていないことがほとんどです。方向性を決め目標に向かって率いていくタイプのリーダーシップを成功させることは難しくなっています。また、リーダーの個人スキル(フォロー)にばかり頼っていると、チーム全体のスキルの底上げが難しくなっていきます。

変化の激しい時代だからこそリーダー個人の才覚のみに頼るのではなく、メンバー一人ひとりのスキルを向上させていくことで、組織としての強度を上げることが求められます。

また、けん引型やフォロー過多のリーダーシップの場合、プレッシャーや業務がリーダーに集中しがちです。負担が多いようすはメンバーにも見てとれるため、ワークライフバランスの観点からリーダーになることを避ける、もしくは躊躇する傾向が強まっている可能性もあります。

リーダーだけが一方的にリーダーシップを発揮するのではなく、メンバーがそれぞれの立場で自立して主体的にリーダーシップを発揮できるチームを目指すのが理想と言えます。

そのような現在求められるリーダーシップ像について、若手社員に知ってもらう機会を意識して設けることも、苦手意識克服の足がかりとなると言えるでしょう。

シェアド・リーダーシップについて詳しくは、「注目されるシェアド・リーダーシップ―メンバー全員がリーダーになれる環境とは?」をご覧ください。

リーダーシップの本質とは

続いて、発揮すべきリーダーシップの本質について確認していきましょう。

リーダーがメンバーと関わる際に必要なスキルには、マネジメントスキル、コーチングスキル、コミュニケーションスキルなどさまざまなものがあります。リーダーシップを高めるため、そういったテクニックを学ぶことは大切です。加えて、スキルとマインド(内面)の両方を、バランス良く備えておくことも重要です。

外に向けて発揮されるのはスキルや言動ですが、実はリーダーシップを取る本人のマインドに「ぶれない軸」があることが、何よりも重要なのです。マインドとは自身の価値観、信念、哲学といったものです。

マインドの軸がなければ言動に一貫性を欠いてしまいます。
「この人は口ではこう言っているが行動が伴っていない」「この人は場面場面で言動が違う」などとなれば、メンバーとの信頼関係にかえって悪い影響を及ぼしてしまいます。メンバーに受け入れられるリーダーシップを発揮するには、スキルとマインド、両者のバランスが重要です。

ぶれないマインドに基づいた言動と必要なスキルを持ち合わせていれば、おのずと一貫性のあるリーダーとなり、メンバーとの良好な信頼関係の構築が期待できます。

ただし、マインドとは本人の内に存在するもので、誰かに教えてもらうのではなく自発的に気づくものです。しかし、日々の業務をこなすのが精いっぱいで、マインドを自覚する余裕もないリーダーも多いかもしれません。

マインドと言動・スキルの両側に焦点を当てた人材開発を意識することが大切だと言えるでしょう。

ウィルソン・ラーニングでは、自身の価値観、信念、哲学といったマインド面を「エッセンス」、外に向けて発揮される言動やスキルを「フォーム」として整理しています。

リーダーシップを構成する2つの要素「エッセンス」「フォーム」のバランスの重要性については、次の動画でもご紹介しています。

グローバルで共通する「リーダーシップの変わらない本質」

また、内なる「エッセンス」に気づくためのヒントについては、次の動画で触れています。どちらの動画も30分ほどなので、ぜひお気軽にご参照ください。

ぶれないリーダーは、何を考え続けているのか

若手のリーダー育成を成功させるポイント

既述のとおり、メンバーがそれぞれの立場で自立して主体的にリーダーシップを発揮できるチームを目指すのが理想です。とはいえ、実際にリーダーの役割は必要です。リーダーシップを発揮したがらない若手のリーダー育成が難しい場合、どのように対応していけばいいのでしょうか。

まずは、若手のリーダー育成が難しい理由には、以下のようなことが挙げられます。

  • 本人がリーダーという役割に勝手なイメージを持っている
    「リーダーとはこうあるべき」という固定化されたイメージを持っているケースがあります。そういったケースでは概ね、完璧な理想像を持ちがちです。その結果自分との乖離を感じてしまい、自身がリーダーの役割を担うことに自信を持てなくなるといったことが考えられます。
  • 本人が「何を求められているか」ばかりに意識が行ってしまっている
    相手や周囲が「何を求めているか」ばかり気にしてしまうケースです。仮にリーダーシップを発揮したとしても、評価が他人軸になってしまうため達成感を得にくく、リーダーの役割を担うことにストレスを感じてしまいがちです。完璧な理想像を目指したり他人軸でリーダー像をとらえたりしていては、リーダーとしての役割を果たすことに自信を持てなくなってしまいます。

    「何を求められているのか」ではなく、「自分がどうありたいか」を考えることで、内なるリーダーシップが引き出されることが期待できます。また、自分で発見した目的意識を持って仕事に取り組むことは、自律的成長につながります。

    リーダーになることに苦手意識を抱いている人にも、過去にリーダーシップを発揮した経験があるはずです。その過去の経験をあらためて整理し、そこからなりたい像を組み立てていくことも有効な手段です。

    重要なのは、与えられたイメージではなく自分の内面を掘り下げることです。それが、若手メンバーが次世代を担うリーダーへ向かう第一歩となることでしょう。

自己のリーダーシップのあり方を再構築>>>リーダーシップバイタリティ

リーダーになりたがらない若手社員の自律的成長を促そう

若手メンバーの中にはリーダーシップを取ることを敬遠する人がいますが、今の時代の組織においては立場を超えて一人ひとりがリーダーシップを発揮することが必要です。リーダーになってからではなく、メンバーの段階からリーダーシップを意識できるような育成を行うことにより、組織活性化と業績向上の双方の両立が期待できます。