企業での学びの場と言えば、かつては集合研修が主でした。ブレンディッドラーニングは、そこにオンライン研修やeラーニングなど、複数の学びの手法を組み合わせることで、学習効果を最大化していく方法です(広い意味では通信教育のスクーリングのようなものもブレンディッドラーニングの範疇と言えます)。企業人の学習でブレンディッドラーニングが再注目されていますが、それはなぜでしょうか。
ここではブレンディッドラーニングを採用するメリットや、これから必要とされる学びのスタイルについて解説していきます。
ブレンディッドラーニングとは
従業員の継続的な学びと成長は企業にとって重要な要素です。今注目されているブレンディッドラーニングの基本情報と、必要とされる背景を解説します。
ブレンディッドラーニングの概要
ブレンディッドラーニング“Blended Learning”とは、複数の学びを「ブレンド」して新しい学びを構築する手法です。
一般的なブレンディッドラーニングは、従来から行われている対面式授業とパソコンやスマートフォン、タブレットなどの端末を活用したeラーニングやオンラインでの研修を組み合わせ、それぞれのメリットを活かしたハイブリッド形式で行います。
ブレンディッドラーニングには、いくつかの組み合わせがあります。主な例としては、以下のような方法が見られます。
- eラーニング→集合研修(対面) or バーチャルクラス
eラーニングによる事前学習を行ったあと、講義やワークショップなどのインタラクティブな内容を実施する - eラーニング→集合研修(対面)→ バーチャルクラス
eラーニングによる事前学習を行ったあと、講義やワークショップを実施、さらにバーチャルクラスでフォローアップを行う - 集合研修(対面) or バーチャルクラス → eラーニング
講義やワークショップなどのインタラクティブな内容を実施した後で、eラーニングによる学習でフォローアップ効果を高める
ブレンディッドラーニングによって、集合研修では人が集まっている時でなければできないことに集中することができるため、定着を含めた全体の学習効果が高まります。インターネットが社会の隅々まで普及し、さまざまな端末が利用できるようになった現在、ブレンディッドラーニングはビジネスから子どもの教育まで幅広く、その活用が期待されています。
ブレンディッドラーニングが注目される背景
ブレンディッドラーニングが注目されている背景について、見ていきましょう。
- テクノロジーの進化
ネットワークが高速化し、動画配信やWeb会議が生活の中に浸透しました。動画の画質が格段に向上し、デジタルデバイスでストレスなく視聴可能となったことで、教育的なニーズにも対応できるようになってきています。
また、端末の低価格化が進み、パソコンだけではなく多様なデバイスが普及しました。さらに教育動画やデジタル教材などのさまざまな学習コンテンツの提供やユーザビリティ向上など、学習環境が整備されたこともブレンディッドラーニング活用の追い風となっています。 - 社員教育にかけられる時間が減少
ブレンディッドラーニングの人気の陰には、最近の企業側の事情が関係しています。働き方や就業形態の多様化、社員の流動化が進行するなか、以前のように連続して長い時間を確保する集合型の研修開催には限界があります。コロナ禍によってその傾向は一気に高まりました。
一方で情報の多様さや、量の多さは過去とは比較になりません。社会人としての学びの総量は、これまでの「いわゆる」研修だけでは補いきれないほど大きくなっています。
技術の進化や社会の流れは速く、学びの内容は随時更新されていきます。この状況下において、学び続けることの必要性は高まる一方です。単一の学びの形だけでは追い付かないうえ、継続していくことも難しい状況にあります。
ブレンディッドラーニングのメリット
ブレンディッドラーニングには、企業側にも受講者側にも多くのメリットがあります。それぞれの立場からのブレンディッドラーニング活用のメリットを解説します。
受講者側のメリット
- 自分のペースで学習が進められる
eラーニングを予習・復習で利用することにより、自分なりのペースでの学習が可能となります。 - 不明点を重点的に学習できる
eラーニングや学習ツールの利用では、何度でも同じところを学び直しできます。不得意な箇所や不明点など、重点的な学習が可能です。 - フィードバックの機会が得られる
研修やバーチャルクラスなどでは、講師への質疑応答や意見交換によりフィードバックの機会を得ることができます。個々の学習成果を確認し、また学びの方向性の誤りを発見できます。 - 遠隔地からも参加が可能
バーチャルクラスは参加する場所を選びません。遠隔地にいる受講者も、移動のコスト負担なく、同質の学習をすることができます。 - 事前学習により集合研修の効果を高められる
eラーニングによる事前学習で基礎知識を固めておくことで、集合研修が効率的に進められ、また学習効果が高まります。
企業側のメリット
- 集合研修の開催を減らすことができる
eラーニングやバーチャルクラスなどの活用により、集合研修を必要最小限の開催に抑えられます。場所や講師の確保など、コストの削減と教育事業の合理化を図ることができます。 - オンライン・オフラインの両方の良さを享受できる
eラーニングでは学習履歴や進捗の管理がしやすいというメリットがあり、集合研修ではディスカッションや質疑応答などにより理解力を強化できるメリットがあります。双方を活用することで、効率的な学習成果を期待できます。また、集合研修後、実践を経てバーチャルクラスを開催・フォローアップを行うなど、計画・実行・振り返りまでデザインする形で実施することが可能になり、学習の定着が期待できます。 - 遠隔地の拠点に勤務する社員に対する学習機会の創出
拠点が各地に散らばっている企業の場合、一同に会しての研修をたびたび開催するのは困難です。ブレンディッドラーニングにより、全社均一的な学習内容を、拠点を問わず提供できます。
ブレンディッドラーニングと学習の継続
先の解説にもあったように、現代社会の学びは一度で終わるものではありません。そうした観点からも、ブレンディッドラーニングは、今後さらにニーズが高まる新しい学びのスタイルと強く結び付いていると言えるでしょう。
ラーニングジャーニーという学びのスタイル
現代人の学びの形態に関連した言葉に、「ラーニングジャーニー」があります。「学びの旅」、つまり一度で学びが終わるのではなく、さまざまなことを経験しながら学び続けるという考え方を表しています。
激変する市場、消費者ニーズ、ビジネスモデルに対応していくためには、今世界で何が起きているのかを正しく認識する必要があります。過去の常識や慣行にとらわれず、見方を柔軟に変え、変化の兆しの意味を考えることで、未来への洞察を得ることができます。そのためには「学んで終わり」ではなく、その時々に必要な知識を吸収していかなければなりません。
「ジャーニー型」の学びとは一度の研修で完結するのではなく、長い期間のなかでさまざまな経験を経て学んでいくものです。場面ごとに変わる多様なメンバーでのディスカッションや、実務での実践を通じて学習をしていくスタイルです。
さまざまなシーンを活用して学ぶというラーニングジャーニーの考え方は、いくつもの学びのパターンを組み合わせる点で、ブレンディッドラーニングと通じるものがあります。
教育に求められる変革「学びのDX」
企業運営にテクノロジーを用いた変革が進んでいるのと同じく、学びの場にもDXが浸透・定着し始めています。学びのDXは、教育領域でのテクノロジー活用であるEdTechなど、幼児から社会人までのすべての学習者が自律的な学びを実現する取り組みとされています。デジタル技術の活用によって、以下のような学びの実現が期待されます。
パーソナライズ | : | 個人の興味・習熟度・必要性に応じ最適化できる | |
シームレス | : | 多様な環境が学びによってつながる | |
ダイバーシティ | : | 多彩な価値観・多様な選択肢が学ぶ環境にもたらされる | |
クリエイティブ | : | 既存の価値観から離れ、創造・協創する可能性が広がる |
企業運営におけるDXとは、単に技術を導入するだけではなく、ビジネスの在り方そのものを変革・変容することを指します。
学びのDXにおいても同様で、単純にオンライン化やeラーニングの導入だけでなく、それにより、よりクリエイティブな学びの実現ができる、社員一人ひとりの能力や興味に即したきめ細かなプログラムが可能となるといった学びの変容こそが重要です。
企業にはオンライン・オフラインそれぞれで完結せず、柔軟に組み合わせながら、時代に合った新しい学びが可能となる体制を、常に模索していくことが求められます。
ブレンディッドラーニングを取り入れて、生涯学び続ける環境を構築する
社会のあらゆる分野でDXが求められているように、学びの分野でも変革が始まっています。変化の激しい現代社会においては、常に新しい情報や知識へのキャッチアップが求められます。場所や時間にとらわれず、継続的に学び続けていくためにはオンライン/オフライン、個人で学ぶ/集団で学ぶといったさまざまな学習機会を活用する必要があります。ブレンディッドラーニングの理解と活用は、個人スキルを向上させ、企業力の土台を強化する力となるでしょう。
ウィルソン・ラーニングでは、デジタルを活用したラーニングプログラムをご用意しております。パッケージを組んで個人学習に利用する、集合型研修や職場学習会、OJTの一部に取り入れるなど、さまざまな活用が可能です。学びの手法にお悩みの際には、ぜひご検討ください。
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