【ウェビナーレポート】
1/23開催【NTTデータ関西の実践事例】全社員を“価値創造の挑戦者”へと育てる組織文化の創り方

2024年3月28日

社員の主体性、挑戦意欲を育てる取り組み内容と生まれた変化


緒方 康博 様

第二部では、「社員の主体性、挑戦意欲を育てる取り組み内容と生まれた変化」と題し、株式会社NTTデータ関西 人事総務部 人事担当 課長 緒方様より、具体的な取り組み内容についてご説明いただきました。

今回の取り組みの背景には、事業課題と組織・人事課題の2つの課題がありました。
主な事業課題は、受託型のシステム開発からサービス型のビジネスの創出といったビジネス形態の転換、将来に向けた新規サービス・新規事業への取り組み、事業成長のチャレンジです。

これに対し、組織・人事の課題には、新規事業や事業変革に取り組む挑戦人材の育成、要件に従う業務遂行だけでなく自ら構想して共創する行動変容を促すこと、社員の主体性が伴うボトムアップの価値創造や変革への挑戦を生む組織文化の醸成が挙げられました。

「やらされ感」ではなく「やりたい感」を醸成する

取り組みを実施する上で大切にしていたのは、会社や上司から言われて参加する「やらされ感」ではなく、自らの意思で参加する「やりたい感」を醸成することです。自らの意思で参加することを前提とし、多様な年代・階層のメンバーと接して熱量を伝播し合うこと、仲間を見つけて適切なサポートを受けられる環境を提供することに注力しました。

「最も大切にしていたのは、挑戦者を生み出し、その挑戦者を孤立させずに支援する仕組みを構築することです。仕組みの構築を検討している中で、ウィルソン・ラーニング社の「価値創造リーダーシップ実践プログラム」、「価値創造イネーブルメント実践プログラム」が、我々の想いと一致していたので導入を決め、伴走していただいています」と緒方氏は語ります。

社内の枠を超えて自らの想いが新規事業創出のカギになる

次に、6ヶ月にわたり実施された、一般社員向けのワークショップと若手管理職向けのイネーブルメントプログラムの内容について説明しました。2022年の導入当初は、一般社員向けの「変わる」ワークショップのStep4までを先行導入し、2023年度よりStep5、Step6および管理職向けのイネーブルメントプログラムを実施しています。


上段:Step1 価値創造マインドセット
ウィルソン・ラーニング社の価値創造カードゲームによる疑似体験を通してマインドセットを学ぶ。和気藹々としながらも各々の価値観と向き合う。

下段左:Step3  リーダーシップエッセンス
内省した自分の想いやビジョンを円になって共有。言語化することで新たな気づきが芽生え、意欲が高まり、共有により仲間意識も醸成される。

下段中央:Step6 構想発表
最初は緊張しながら取り組んでいたが、徐々に熱量が上がっていくのを実感。部署も年代もバラバラだが、普段の職場では生まれないような関係性、仲間意識が醸成されている。

下段右:Step5 イネーブルメント
挑戦者のフィールドリサーチ実践に対してイネーブルメントを行う実践型のプログラム。


Step1マインドセット実施後に、感想や実現したいカルチャーについてブレストした結果。
楽しく、ワクワク、チャレンジできるカルチャーを求めていることがわかる。
そうした要素が今の組織カルチャーには不足していると実感する瞬間でもあった。

ワークショップから生まれた3つのチーム

「変わる」ワークショップでは、ビジネスに限定せずに自分のやりたいことや想いを起点に、挑戦者主体でチームを編成しています。その中から、社内コミュニケーションを活性化したいという想いから生まれた3つのチームの取り組みを紹介しました。

  • 人物大図鑑を作ろう!チーム
    「社員同士が繋がる土台となる仕組みを作りたい」という想いが起点となり、自ら各事業部に協力依頼のアプローチをかけて、自己紹介シートを作成。
  • お仕事ワガママにやらない?チーム
    「やりたい仕事に参加したい」「仕事しながらワガママも叶えたい」という社員の想いを実現している他社事例を調査。企業HPからインタビュー依頼をかけ、関西から東京までインタビューを実施。
  • 定年まで楽しく働く‼︎チーム
    退職者数を減らし、定年まで楽しく働く仕組み作りのため、社員の「ホンネ」を聞くアンケートを自分たちで作り、社員調査を実施。

「この活動のポイントは、結果がどうであれ、自分たちがやりたいという想いで行動していることです。運営する人事側も最終発表を聞くまでこの活動を知りませんでした。発表を聞き、自分たちだけでここまで活動できるのかと驚きを感じました」と緒方氏は語ります。

取り組む上での3つの課題

取り組む上での課題は大きく分けて3つありました。

  1. 仕事を優先して欲しいという上司の意向、取り組みに対する疑問や抵抗感
  2. 手上げ式のため、参加希望者からなかなか手が挙がらない
  3. 6ヶ月のため途中離脱者が出てしまう

上司の抵抗感に関しては、人事から取り組みの趣旨や目的を説明して想いを共有。手が挙がらないという課題に関しては、興味がありそうな社員に声をかけて参加意欲を引き出すなど、見えないところで地道な努力を重ね続けていました。また、欠席者に対しては、個別に研修の内容を伝え、事前課題を一緒に取り組むなど、離脱者を出さないためのフォローアップに力を入れました。
こうした地道な活動を通して、改めて手上げ式の難しさを感じたと緒方氏は述べます。
「いきなり手上げ文化というのは作られないという難しさを実感しました。主体性を尊重し、自らの想いをもとに参加して欲しいという趣旨で手上げ式の自由参加にしています。そのため、参加に対する強制力がなく、どうしても目の前の仕事が優先されてしまう。これは今後の課題でもあり、注意しながら取り組んでいきたいです」。

研修と職場をつなぐ「場」作り

従来の研修では、研修と職場が分離されてしまい、研修で熱量を高めたとしても、職場に戻っていく間に熱量がだんだん小さくなってしまうという課題があります。研修で得た熱量を保った状態で職場に戻ってもらうために、ワークショップ以外でも想いを語れる場作りとして、ランチ会を実施しました。しかし、当初は誰も来ない日が続き、緒方氏が一人で延々に待ち続ける日があったことを明かしました。「徐々に参加者が増えていき、タイミングさえ合えば来てくれるようになりました。参加できるがあることが大事だと実感しました」と当時の様子を振り返ります。

最後に緒方氏は、「今までは組織内だけの関係性が強かったですが、世代を超え、事業部を超えた関係性が構築されつつあると感じています。小さな変化の積み重ねが、組織文化の土壌を耕すことにつながっていきます。社員の小さな変化を見逃さないように観察して、芽生えた想いや情熱を波紋のように広げていく、それが人事としての今後の課題とミッションだと考えています」と、締めくくりました。