【ウェビナーレポート】
1/23開催【NTTデータ関西の実践事例】全社員を“価値創造の挑戦者”へと育てる組織文化の創り方

2024年3月28日

企業戦略における組織文化醸成のねらい


植野 剛至 様

第一部では、「企業戦略における組織文化づくり」と題し、株式会社NTTデータ関西 取締役執行役 人事総務部長 植野様より、事業戦略においてなぜ組織文化づくりが大事なのか、その背景に込められた想いについてお話しいただきました。

NTTデータ関西は2023年7月に設立20周年を迎え、これからの20年に向けてパーパスを定義し、社会課題の解決、地球環境への貢献、経済価値の創出の同時実現に取り組んでいきます。IT技術の進歩により、さらなる成長に向けた転換期を迎え、従来のビジネスだけではなく、新たなITサービスの価値創造が求められています。従来のシステム受託開発を中心としたビジネスからクラウドサービス主体の新たな事業・サービスの提供への転換期を迎え、お客さまの IT パートナーとしてサービス型ビジネスの拡大を目指していく方針です。

新たな価値を生み出すために“人材”に着目

未来が不透明・不確実性と言われるVUCAの時代、産業・社会構造の変化、労働市場の流動性が高まる中で、競争優位の源泉やサステナビリティ経営の重要な要素は人材です。
「人がその気にならないことにはエネルギーが生まれてこない。人が中心となり、人が育ち、人を活かす企業へとよりシフトしていくために、社員の主体性を育て、社員の成長意欲を引き出すマネジメントが必要である」と植野氏は語ります。

人的資本経営には、経営戦略と組織・人材戦略の2つが連動してバランスを取ることが大事だとされていますが、売上、経常利益、経営数値などの経営戦略が重視されているのが実情です。

非財務は企業文化や企業風土に影響しますが、明確な正解がなく、取り組みには手間も時間もかかります。「一過性の施策で終わっていては、人を活かす経営は実現しない。社員の主体性や挑戦意欲がベースにあり、経営サイドも寛容でなければこの問題は解決しない」と問題点を述べました。

さらに植野氏は、「従来の管理型のQCDマネジメントでは、上意下達の文化になり、新たな価値創造、変革に向けて動き出そうとなった時に自由闊達な議論になりにくい。挑戦という先のわからない状態で議論を交わす時に、レビューして指摘されたらモチベーションが下がってしまう。挑戦者をサポートする、伴走する、フラットなマネジメントを組み合わせて、従来型のマネジメントとイネーブルメント型のマネジメントを使い分けていく必要がある」と述べました。

社員の主体性と挑戦意欲を育てる取り組み

そこで、社員の主体性と挑戦意欲を育てる取り組みとして2つの施策を考案。一般社員向けに手上げ方式での参加型ワークショップと、若手管理職にイネーブルメントを学んでもらい、想いを支援するイネーブラーとしてワークショップ参加者を伴走するイネーブルメントプログラムを実施しました。

  • ワークショップ
    対象者:一般社員
    参加形式:手上げ方式で参加者を募集。
    入社年次、階層、部署に関わらず募集し、入社2年目の若手社員から勤続20年のベテラン層まで多種多様な社員が参加。通常の業務では得られないつながりや仲間意識が醸成された。
  • イネーブルメントプログラム
    対象者:若手管理職
    参加形式:手上げ方式ではなく選抜で人選。
    組織上の上司・部下は関係なく、挑戦者のイネーブラーとして伴走。初対面のぎこちなさを越え、実施後は支援者としての大きな経験値を得たと実感。

実施後の意識調査結果は以下の通りです。

  • ワークショップ挑戦者の意識変化についてのアンケート結果

    ワークショップ実施後に挑戦したいテーマやアイデアを持つ人の割合が増加。
    すでに行動を起こしている社員は約2倍に増加。

  • 作りたい組織文化を実現するための重要指標についてのアンケート結果

    職場の環境改善や主体的なマインド形成に対する重要度が上がっている。

挑戦者の想いを実現する取り組み

今回の取り組みの中から、現業の枠を超えて自らの想いを実現するという体験をしてもらうために実施している2つの取り組みを紹介しました。

  • 新規ビジネス創出施策
    新規ビジネス創出のチャンスをすべての社員に提供。発案者のプレゼンにより選定。アイデアの良し悪しや完成度ではなく、面白さや着眼点に注目。ライトな審査で、一定額の支援をする。
  • クロスワーキング
    社内副業を「クロスワーキング」と呼び、スキルを身につける目的で年間100時間程度、異なる担当の仕事を経験する。

ついた火を消さないための今後の取り組み

今回の活動を通して社員に芽生えた成長意欲や自らの想いで行動し続ける熱量を持続させるためにも、今後の取り組みが重要になります。
「社員の心に火をつけることができれば、その火は伝播する。せっかくついた火なので、この熱量を消してしまうのはもったいない。次年度は、挑戦者が活動を持続できるように活動の場を提供し、想いを触発するような場を提供したいと考えています。社内でさまざまな取り組みを実践している実践者に発信してもらったり、挑戦事例を持つ外部スピーカーを招聘したり、皆が気づきを得て学べる場を作っていきたいです」と植野氏は想いを述べました。

オフタイムの取り組みでつながりの場を作る

さらに、オフタイムの取り組みとして、植野氏が支配人を務める「イブニングサロン」について紹介しました。教養を深める目的として、月に1回程度、事業部の枠を超えて皆が集まり、日本酒、ワイン、コーヒー、ビールなどの嗜好品、美容、健康、関西にゆかりのあるものなどについて語れる場を運営しています。

取り組みの中から新たに生まれたサービスには、社員が発案したものから顧客との会話から生まれたものもあります。ここで生まれたサービスがさらに展開して拡大していく可能性に期待を寄せています。

中期計画に向けた組織文化の土壌作りと今後の課題について

こうした取り組みは、土壌作りが大事であり、土壌を耕さなければ芽を育てることはできないと述べ、中期計画である2025年度までは土壌となる組織文化の醸成や人を育てることに注力し、その期間は、目標設定・目標管理などはせずに結果や成果に一喜一憂しないという方針を述べました。そして、2026年度からは、耕した土壌から行動変容の芽が芽生えて、新規事業の創出につながり、事業の成長と共にもっと社会に貢献していきたいと想いを語りました。

最後に植野氏は、「エンゲージメントとウェルビーイングを両立させるための取り組みに対し、どのようなゴール設定をしていくのか。それが我々コーポレート部門の次なる課題だと思っています。弊社の取り組みに興味を持たれた方や同じ想いを持っている企業様がいらしたら、ぜひ情報交換や意見交換を交えたいです」と、熱い想いを語りました。