エンゲージメントとは? その重要性と高めるメリット・施策例を紹介

2021年10月12日

最近ビジネスシーンでよく聞かれるエンゲージメント。経営のキーワードとして重要性がさらに高まっています。

時代の移り変わりとともに企業と従業員の関係が大きく変化する今、従業員のエンゲージメントは企業が持続的に成長することにも大きく影響しています。
経営が、そして、社員一人ひとりが、自分たちがイキイキ働けるような、つまり、エンゲージメントが高い状態を意識して活動していかなければ、中長期的に企業は存続していけないということが言えるのではないでしょうか。

本記事では企業経営におけるエンゲージメントの意義と、向上への取り組み方、よくお聞きする課題を取り上げています。
「エンゲージメント向上」というテーマで施策を検討、推進される際の参考にしてください。

エンゲージメントとは

「エンゲージメント」とはもともと「約束」「婚約」「雇用」などを意味する英語ですが、ビジネスシーンで使われる場合には、マーケティングにおける「顧客と企業との結びつき」、人事における「企業と従業員の結びつき」「仕事と個人の結びつき」の3つの観点があります。

本記事では、「企業と従業員の結びつき」について解説します。

「仕事と個人の結びつき」に関心のある方はこの記事も読んでいます
バーンアウトの原因や対処法を解説! ハイパフォーマンスの裏側にあるリスクを理解する

エンゲージメントの定義

エンゲージメントの解釈や認識のされ方はさまざまで、一つの合意された定義はありません。

たとえば経済産業省主催の研究会の資料では以下のように記述されています。

“エンゲージメント(Employee Engagement)とは一般に、組織構成員の所属組織に対する愛着心や仕事への情熱、構成員と組織の双方向の関係性や結びつきの度合い”。

続いて“エンゲージメント施策とは一般に、構成員と組織が一体となり、互いの成長に自発的に貢献しあえるように、相互の信頼関係、結びつきを強めるための取り組み全般を指す”としています。

引用:「経済産業省 主催 経営競争力強化に向けた人材マネジメント研究会

ウィルソン・ラーニングでは、エンゲージメントを「定義」するのではなく、エンゲージメントが高い状態を「変化に対しての見方」「エネルギーの発揮度合い」の2つの軸で捉えています。
エンゲージメントが高い状態とは、「変化を肯定的に捉え、変化に対してエネルギーを発揮している状態」を指します。

ロイヤリティ、従業員満足度との違い

エンゲージメントと混同されやすい言葉としては以下の2つがあります。

  • ロイヤリティ(Loyalty)
    従業員の「会社に対する忠誠心」を指します。
    企業と従業員との間に主従関係があり、従業員が企業に対して忠義を尽くすことを指します。一方エンゲージメントは、企業と従業員の間に「主従関係はなく」、企業と従業員が「双方向の信頼関係」を築いている状態です。
  • 従業員満足度
    待遇や職場環境、福利厚生など、企業が提供するものに対する従業員の満足度を測る指標です。
    現在の環境に関する満足度の指標ですので、従業員が企業に愛着を持ち貢献したいかどうかといった「想い」までは測れません。エンゲージメントは、従業員が企業に対して貢献したいという想いそのものです。

エンゲージメントが注目される背景

エンゲージメントが注目される背景には、社会や仕事の現場でのさまざまな変化があります。

若い層を中心に転職に対する抵抗感が薄れてきていることもあり、人材の流動化は激しくなっています。また、新卒、第二新卒、中途採用など入社時の状況は人それぞれ、かつ契約形態も正社員、契約社員、派遣社員などさまざまになりました。フレックスタイム制、時短勤務、テレワークなど働き方も多様化しています。

従業員の仕事への意識も大きく様変わりしました。終身雇用・年功序列が崩壊しつつある今、働く上で自身の志向や希望を尊重する人が増えてきています。仕事とプライベートを完全に切り離し、仕事以外での職場内のつき合いを避ける傾向も見られます。

企業と従業員の関係性や個人の価値観が多様化するなか、以前のように画一的なマネジメントでは、組織に対する帰属意識や信頼感、モチベーションを維持することが困難になっています。従業員一人ひとりの仕事観や価値観などを理解して尊重し、従業員と企業との双方向の信頼関係を築くことが重要です。

エンゲージメントを高めるメリット

エンゲージメントの向上が企業にもたらす主なメリットを挙げてみましょう。

  • 離職率の低下:企業に対する愛着を感じる従業員は、意欲を失わずに働き続けられます。
  • 業績・利益率の向上:優秀な人材が離職することなく企業を支え続けてくれれば、企業運営が安定します。新しい事業を推進していく原動力が確保できれば、業績も上向きになる可能性が高まるでしょう。
  • 従業員のモチベーション向上:組織の目標を理解し、そのなかで果たす役割を知ることで、従業員のモチベーションが向上します。企業とともに成長する自分に喜びを感じられるようになれば、さらなるモチベーション向上が期待できます。
  • 組織の活性化:エンゲージメントの高い企業では、情報共有がスムーズに行われ、共通の価値観を持って事業を進めることができます。自然と社内が活気に満ち、元気のある企業となっていきます。

経済産業省主催の研究会の資料でも、「エンゲージメントスコアの高い企業は業績指標が高いだけでなく、離職率や品質上の欠陥についても低い傾向がある」とまとめています。

エンゲージメントの高い企業では、従業員が自律性に富み、企業における自身の貢献を理解していると考えられます。必要な人材を引き付ける魅力を持つ企業と、企業戦略に沿う行動ができる従業員との間には、より一層の相乗効果が生まれます。企業目標に従い従業員が最大限のパフォーマンスを発揮できれば、企業運営の大きな力となるでしょう。

エンゲージメントの向上は、人材の定着率、企業の業績・生産性の向上というさまざまな効果につながっていきます。

エンゲージメントを高めるための施策例

エンゲージメント向上のための施策例を紹介します。

組織として取り組む環境づくり

  • 従業員の価値観の把握
  • リーダーシップ教育
  • 社員の自発的取り組みの承認・支援
  • 1on1による対話・コーチング

エンゲージメントを高めていくためには、従業員とのしっかりとした対話が重要とされています。従業員が何を考え、何を企業に求めているのかを把握する必要があります。また、従業員の自律的行動を促進するためには、一人ひとりの意識や視座を上げていくための働きかけや支援も欠かせないでしょう。

また、自律的な行動をとった時にお互いに認め合うような関係性を作っていくことも重要です。そのような行動をとろうとすることへの障害を取り除くような取り組みも好循環が生まれている企業では見られています。エンゲージメントは関わる一人ひとりが作っていくものですが、そのきっかけを作るという意味で、リーダーの行動や言動は重要なポイントとなります。

エンゲージメントを高めるリーダーシップについてもっと知りたい方へおすすめ
次世代リーダー必見!エンゲージメントを高める5つのポイント

企業の経営目標・重要情報の共有

  • 目標・KPIの開示
  • 経営者によるビジョンの粘り強い発信・浸透
  • 全従業員ミーティングの実施

従業員が企業の目標や方向性を理解できない状態では、エンゲージメントの向上は期待できません。目標に対して現在の組織の立ち位置、最終的に目指すところなどを折に触れて共有しているか、は意識すべき点でしょう。

評価ポイントの明確化

  • 適正評価の実施と周知
  • 評価に見合うステップアップの機会の獲得

公正な評価がないところに信頼関係は生まれません。評価ポイントや評価基準を明確にすること、そして自身の評価に対して従業員が納得しているのかを観察していくことも重要です。

福利厚生・教育の充実

  • 福利厚生施設、オフィス環境整備
  • 研修、eラーニングなど自己研鑽のための施策
  • キャリアカウンセリング

従業員が気持ち良く働くことができ、自ら向上できるような環境を整備することも、エンゲージメントの強化につながります。

社内連携の強化

  • 社内コミュニティ活動の奨励

従業員同士の連帯感、親近感を高める目的でのサークル活動やワークショップなどの開催を奨励・支援することは、コミュニケーションの活性化につながります。

社内コミュニケーションの活性化のための施策を知りたい方へおすすめ
社内コミュニケーションの活性化でエンゲージメントを高めよう!

エンゲージメントに影響するチームワークの向上の方法を知りたい方へおすすめ
チームワークとは? 高める方法やエンゲージメントとの関連性などを紹介

サーベイによるモニタリング

モニタリングを行い、新たな施策の立案や実施中の施策改善に活用していくことも効果的です。エンゲージメント向上に関連するサーベイの例としては、以下が挙げられます。

  • エンゲージメントサーベイ:心理的充実度や主体的な貢献意欲について包括的に問う
  • パルスサーベイ:現在の心理状況や直属の上司、職場に対する満足度など、時期や範囲を限定した内容

エンゲージメントを高める施策について企業が抱える課題

ウィルソン・ラーニングで実際にヒアリングをしたところ、「調査や施策を行ってはいるもののうまく成果に結びつかず、課題がある」という声が多くありました。共通の課題としていくつか挙げてみましょう。

  • 認識にバラつきがある
    何のためにエンゲージメント向上に取り組むのか、発信側、受信側双方の認識に齟齬があるケース。いろいろ施策に取り組んではいるが、手詰まり感が出てきている時の理由のひとつと考えられます。
  • 手段が目的化してしまっている
    エンゲージメントの施策の効果測定的な意味合いでエンゲージメントサーベイのスコアをKPIに設定している企業に起きがちですが、スコアアップが目的化してしまい、何のためにエンゲージメントを高めたいのかが置き去りになってしまっているケースです。
  • メンバーの当事者意識の欠如
    エンゲージメントを高めることはメンバー一人ひとりが関係していることにもかかわらず、「組織」や「管理者」の役割ととらえてしまい、自分事になっていないケースがあります。施策の現場感の欠如が一因と思われます。
  • キーパーソンへのサポート不足
    エンゲージメントはメンバーの一人ひとりの意識が重要ではあるものの、エンゲージメントを高めるキーパーソンは間違いなく現場のリーダー層です。しかし、リーダー自身も従業員であり、本人のエンゲージメントにも波があります。部下のエンゲージメントを高める活動を推進しながらも、「自分たちのエンゲージメントが置いてきぼりになっている」と感じているリーダーも多く見られます。そのように、エンゲージメントを高めるための重要人物へのサポートが不足しているケースは少なくありません。

このような課題から、成果に結びつかず停滞してしまうケースは少なからずあります。種々の課題への取り組みを含め、エンゲージメント向上に役立つ資料をダウンロードしていただけます。ぜひご参照ください。

まとめ:エンゲージメント向上が企業力を引き上げる

企業を内部から強化するためには、エンゲージメント向上がカギになっていると言えます。組織に関わる関係者の多様性も増しており、違いを認め合いながら、社員がお互いに信頼関係を持てるような状態を作ることが重要です。そのためにはお互いにそれぞれの声に日々耳を傾け、自社に適した具体的な施策を打ち出していく必要があります。

強い関係性で裏付けられた企業は、激動する社会のなかにあっても安定した経営を維持していくことができるでしょう。エンゲージメント向上は、企業が顧客や社会に対して価値を提供し続けるための土台であり、それ自体が目的ではありません。何のためにエンゲージメントを高めるのか、そのために今、ここで私たちは何を目指し、何に取り組むのか、問い続けながら取り組む必要がありそうです。