営業組織の人と文化を育む共通言語

2019年12月17日

お客さまインタビュー 片山ナルコ様

片山ナルコ様では、10 年以上にわたり、ウィルソン・ラーニングの「CSP カウンセラー セールスパーソン」を導入いただき、社内の共通言語として現場の営業活動に活かしていただいています。

  • 写真左:(株)片山化学工業研究所 総務部長 吉川 由剛様 、右:片山ナルコ(株)人材開発室 トレーニングマネジャー 古賀 一也様

片山ナルコ(株)は、共に長い歴史を持つ㈱片山化学工業研究所と、米国に拠点を置く※Nalco社の日本法人ナルコジャパンが設立した水処理とプロセス薬剤の販売会社です。高い技術力と国内外での豊富な経験を有する水処理のプロフェッショナルとして、日本の産業を支えるお客さまをサポートしています。
「企業力=人財力」とらえ、お客さまのビジネスパートナーとして活躍できる知識とスキルを身に付けた「インダストリアルエキスパート」の養成に注力しています。

  • ※こ2011年に米ECOLAB社と合併。

その片山ナルコ様が、販売会社として営業職が 8 割を占める組織の営業人材育成を、どのように考え進めておられるのか、トレーニングマネジャーの古賀さんにお話を伺いました。

  • 【Q】今、ビジネス環境の変化、技術の進化はこれまで以上に加速度を増して、どの業界も難しいビジネスに直面していると言われますが、貴社を取り巻くビジネス環境はいかがですか?

私たちのお客さまは、石油化学/石油精製産業、紙パルプ産業、鉄鋼産業、飲料・食品加工や自動車産業など多岐にわたります。
近年は脱石油やペーパーレス化が進み、設備投資を控える産業も多く、確かにお客さまを取り巻くビジネス環境は厳しいと言えます。また、工場の海外移転や年々厳しくなる国内法規制への対応など、お客さまのビジネス環境変化に沿って、私たちにも変化が求められている一方で、競争は年々激化しています。そのような外部環境下で競合からのシェア獲得と、新たな市場創出がビジネス成長の鍵になっています。今後も厳しい環境がつづくと予想していますが、これらを実践することで、業績アップを続けられると考えています。

  • 【Q】そのような厳しい環境の中で、順調に業績アップを続けてこられた秘密はどこにあるのでしょうか?

まず、お客さまのビジネスの理解という観点があります。ニーズを的確に把握し、組織や現場の装置などに関する正確な情報を把握し、お客さまにとっての価値、つまり投資対効果(ROI)を出すことが重要です。
さらには、当社の強みである技術力を最大限に活かすということがあります。先程申し上げたように、当社は多岐にわたる産業のお客さまをサポートしており、設備やお客さまが抱えていらっしゃる課題も様々です。その様々な課題を解決できるよう、専門性の高い技術営業員育成に力を入れています。
もうひとつ、当社の特徴のひとつとして、実績(数字)にコミットする文化というのがあると思います。どのような状況下でも、事業部や会社全体で目標達成に向けて 努力するように心がけています。

  • 【Q】そのようなすばらしい営業人材や組織風土を育てるために、どのようなお取り組みをされているのでしょうか?

技術専門性とセールススキルのバランスのとれた人材育成に取り組んでいます。
技術専門性については、3 年で習得できるよう若手社員必修の専門技術教育を用意し、その後も中長期のスパンで自社技術の理解をアップグレードしていけるメニューを整えています。

セールススキルについては、ウィルソン・ラーニングの 「CSP カウンセラー セールスパーソン」を全営業が受講します。
新入社員はじっくり育てる方針で、入社時に座学でCSP を実施した後、OJT で顧客経験を積んでもらいます。そしてビジネス理解が進んだ 3 年目に「CSP リフレッシュ」と題し、事業に応じたシナリオでロールプレイ実習を行っています。

  • 【Q】CSP は、ある程度経験を積んだ営業担当者を対象にしたプログラムですが、それを入社 1 年目から実施されるのは、何か特別な狙いがあるのでしょうか?

1 年目は「座学」が中心で、(経験がないと学習効果が上がらない)ワークや、ロールプレイ、アクションプラン作成などを除いた、CSP の哲学である営業の考え方や、スキルを論理的に理解することが中心となります。
片山ナルコの営業としてのマインドセット醸成ということも当然ありますが、何しろ CSP のスキル用語が社内共通語になっていますので、それがわからないと会話についていけないという面もありますね
(笑)
たとえば、CSP にお客さまと「信頼関係をつくる」スキルで、意図を伝える PPP(Purpose、Process、Payoff)というのがありますが、上司に何か企画や依頼事項を伝えるにしても「それではペイオフがわからないよ」というフィードバックをもらったりするわけです。

  • 【Q】育成の取り組みを通して、トレーニングマネジャーとして古賀さんご自身が大切にされているのは、どのようなことでしょうか?

先程もお話しましたが、営業は業績にコミットするという文化があります。つまり、できるだけ営業活動に時間を割きたいと思っているので、研修で 1 日、2 日と現場を離れるには、それ相応の価値がなければなりません。私自身が研修の企画と講師も担当しますので、いかに役に立つ価値ある研修であるかを事前にしっかり伝えること、そして必ずその価値を持ち帰ってもらうことを何よりも大切に考えています。

それと、当然ながら育成施策にも費用対効果が求められるため、数年前からは CSP リフレッシュ以降の OJT を強化して、スキルの定着や営業活動の成果につながるような仕組みづくりを重視してきました。

  • 【Q】それらは、具体的にどのような形で実践されているのか教えていただけますか? まず、研修の価値をしっかり持ち帰ってもらうという点について、いかがでしょうか?

受講者に届ける研修案内の段階から、しっかりと情報を伝えること、特に参加者にとっての価値、まさに「ペイオフ」は気合いを入れて書きます。研修当日に、参加者が「今日は何の研修だっけ?」という状態でやってくるようでは、学習効果も上がりません。研修の成果は、始まる前にすでに7割が決まっていると言われるとおり、いかに参加者が意欲的に学ぶ態勢を作ってきてくれるかが重要です。
それと、私自身が 20 年ほど営業をしてきた経験がありますので、参加者が直面する営業の現場に合わせた、社内インストラクターならではの具体例やアドバイスをインストラクションに盛り込むようにしています。

  • 【Q】スキルの定着や営業成果への反映という点については、いかがでしょうか?

若手とマネジャーの双方に働きかけています。
本社にいてOJT をフォローすることはなかなか難しい課題で、20 を超える営業所を全部見ていくには限界がありました。そこでまず、CSP スキルの商談への活用と成果の振り返りが PDCA として組み込まれている、ラーニングトランスファーの仕組みを利用しました。さらにマネジャーには CSP を核にしたセールスコーチングのプログラム「CCSP コーチング カウンセラー セールスパーソン」を導入しています。

ラーニングトランスファーサービスでは、営業担当者のスキルを実践した活動報告に対し、上司がフィードバックを入力する仕組みになっているので、必然的に上司は部下の活動をよく観察するために同行する機会が増えました。これまで同行が少なかった営業所では、まもなく成約と聞かされていた商談が、実はそこまで進展していなかったなど、わかったこともいろいろとありました。

  • 【Q】お取り組みの成果をどのように見ておられますか?

CCSP のトレーニングでは、目的やマネジャー自身にどのようなメリットがあるかについてもしっかりと伝えることに努め、積極的に参加してもらえていることに手ごたえを感じています。移動中に 1 on 1 でフィードバックをする機会が増えるなど、若手とマネジャーのコミュニケーションも増えてきました。

当社で導入しているCRMを活用して、定量的に評価するようにしていますが、一定の成果が出ていて、成長に貢献できていると考えています。

  • 【【Q】長年にわたり CSP をご採用いただいていますが、継続の理由を教えていただけますか?

はい、コースの哲学が、営業担当者に期待する考えや活動にマッチしているからです。
当社では営業担当を「Sales Rep(sales representative)」と呼んでいます。営業担当者は、会社を代表するお客さまのビジネスパートナーという認識で、日々活動しています。
お客さまが当社のソリューションを継続的に使ってくださるために、自社商品であっても改善の提案を行ったり、海外事例など折に触れ新しい情報をご紹介していくといった活動を通して、お客さまに価値を感じていただく、またその価値を維持していただけるよう努めています。
こうした活動のおおもとにあるのは販売サイドの視点ではなく、お客さまサイドの視点で営業活動をとらえる CSP の考え方です。

また、コースは理論に基づいた実践的なもので、現場で活用できるよう考えられていることも大きな理由です。スキルの定着までをサポートする一連のプログラムが用意されていて、上層部の理解を得て導入しやすいですし、何より理解が深まり、実践に役立っています。

社内では、これまで各世代が継続して CSP を受講しており、完全に共通言語化しています。別のプログラムをあれこれ試してみるよりも、しっかり定着させて成果を上げていくためには、継続していくことが大切だと考えています。

  • 【Q】最後に今後、古賀さんがチャレンジしたいことについてお聞かせください。

現在、管理職に就いたマネジャーには部下育成の重要性などを理解してもらうために「MHP パフォーマンス マネジメント」を受講してもらっていますが、今後コーチングをさらに社内に浸透させ、部下を育成できるマネジャーを増やし、人を育てるカルチャーを創っていきたいと考えています。
まだまだ、マネジャーの育成マインドやコーチング能力には、ばらつきがあると認識しています。
コーチングの重要性を再認識してもらうことに引き続き取り組みたいですし、何についてどのようにコーチングするのかを学ぶ点で、CSP を会話の軸に据える CCSP には期待しています。

部下を育てられると、マネジャー自身が楽になることを伝えていく必要がありますが、多忙ななかコーチングを継続してもらうためには、育成に取り組むマネジャーが評価される指標を目標管理に入れるなどの取り組みも必要になってくるのではないかと考えています。

古賀様、貴重なお話をありがとうございました。
ぜひ、今後とも末永く貴社のすばらしい営業人材の育成と発展のお手伝いをさせていただければと思います。

(2019 年 10 月 24 日取材)

■ 片山ナルコ様でご導入いただいているプログラム

CSP カウンセラー セールスパーソン
CCSP コーチング カウンセラー セールスパーソン
MHP パフォーマンス マネジメント