近年、研修を自社で内製化する企業が増えているようです。
研修の内製化は、単に研修コストの削減という側面だけでなく、その企業独自の研修プログラムを実現できることや、社内にノウハウを蓄積できるなど、さまざまなメリットがあります。
本記事では、研修の内製化とは、内製化するメリットやデメリット、外部サービスとの使い分け方、研修内製化を成功させるためのコツを説明します。
目次
研修の内製化とは
研修の内製化は、企業が外部の研修サービスを利用せずに、社内で必要な研修プログラムを企画、設計、運営することを指します。独自の教材やカリキュラムを開発し、社員が講師役を務めることが一般的です。
もともと外部委託していたものを何らかの理由から社内リソースに移行し実施するケース、最初から社内リソースを前提として実施するケースがあります。
なぜ企業は研修の内製化を進めるのか
研修の内製化はコスト削減や社内カルチャーの強化、ノウハウの蓄積などの観点から進められる傾向があります。外部講師や外部のカリキュラムに依存せず、自社のビジネスニーズに合った柔軟なテーマやカリキュラムを作成し、企業の資産として提供することができるのです。
研修を内製化するメリット
研修の内製化には以下のメリットがあります。
- 現場の実情に合った研修を実施できる
研修の内製化をする場合、自社の業務に詳しい人材が担当し、現場の環境に即した形で、業務内容に直結した研修を作成・実施できる点が大きな利点です。会社の独自性や戦略に沿った、即効性に優れた育成施策とすることができます。 - 研修を通して講師がスキルアップできる
研修を内製化する場合、講師は社内から選抜することになります。講師となった社員はあらためて内容の復習をし、時には知識のアップデートも行うでしょう。
また、「わかっている」ことと「相手に伝わるように説明できる」ことは別です。伝わりやすさや研修時に受講者を飽きさせない工夫をすることで、講師としてのスキルが磨かれます。 - 研修内容の修正や改善のスピードが速い
外部に研修を委託している場合、内容の修正や改善には費用や時間がかかりがちです。
しかし、内製している場合、研修の内容や進行を迅速に調整できます。これにより業務に即した研修が柔軟かつスピーディに実施できます。 - 社内の情報共有がスムーズに
内製化の研修では社内のリアルタイムな情報を素早く反映でき、社員が抱える課題を早期に解決しやすいメリットがあります。
研修を内製化するデメリット
一方で、内製化には以下のデメリットも考慮すべきです。
- 時間と社内リソースが費やされる
研修を内製化する場合、コースの設計、資料の作成、研修の実施と調整、参加者へのフォローアップまで、すべてを自社の人員で行います。その時間と労力は「目に見えないコスト」として社内のリソースを圧迫する可能性があります。 - 講師を育成する必要がある
研修講師には、該当分野の知識だけでなく、教えるスキルも必要とします。 内製化の場合、講師を社内で育成する必要があるため、それ自体が別の大きなプロジェクトとなり得ます。また、社員の他の業務都合や異動あるいは退職などの可能性を加味して、日頃から複数の講師人材を育成しておく必要があります。 - 効果的なプログラムの設計・構築・評価が難しい
研修プログラムを効果的に設計し、構築するには専門知識と経験が必要です。教育理論や教授法、学習スタイル、評価方法などについて熟慮された研修を内製することは、容易ではありません。 また、研修の効果を評価し、改善する必要もありますが、内製の場合はどうしても講師の力量次第となってしまう可能性があります。
すべての研修を内製化する必要はない
研修を内製するか、外部に委託するかを選択する際には、さまざまな要素を考慮する必要があります。内製化するべき研修のテーマを選ぶ際、以下の指針を参考にしてみてください。
内製化に向いているテーマ
- 企業文化やビジョン:企業独自の価値観やビジョンは、社内の人間が一番よく理解しているはずです。企業の価値観やビジョンを共有する目的の研修は、内製化が適しています。
- 自社製品・業務上の知識:自社製品や自社サービスに関する詳細な知識や業務上のノウハウを伝えるための研修も、内部の専門家が最もよく理解しています。
- 企業政策や手続き:企業独自のシステムや手続きについての研修は、内製化に適しています。
外部サービスを利用したほうが良いテーマ
- 特殊な専門スキル研修:新しいテクノロジーや特定の業界スキル(例えばAI、データ分析、医療技術等)研修は、社内に知見がないことが多いため、その分野の専門家から直接学ぶことが有益でしょう。
- リーダーシップやマネジメント研修:これらのスキルは経験と深い洞察が求められます。そのため、この分野の専門家から学ぶ方がよいでしょう。
- ソフトスキル研修:コミュニケーション、目標設定、時間管理などのソフトスキル開発は、専門の研修会社によるプログラムを利用することが効率よく効果的でもあるでしょう。
上記の研修テーマにおける判断はあくまで一般的なものであり、自社のリソース、専門性、必要性などによって最終的な選択は変わるかと思います。
研修計画立案の際には、外部サービスも含めたリソースや専門性を適切に組み合わせて、最大限の効果を期待できるように計画することが大事です。
研修の内製化を成功させるためのアプローチ
- ニーズ・目標の明確化
まず、研修によって得たい成果や改善したい点を明確にします。これは内製化する、しないにかかわらず、研修を設計するうえで重要な項目です。 - リソースの確認と教育
研修計画を立案する際、どれだけのリソース(時間、人的投資、費用等)を研修に割くことができるかを評価します。多くのリソースを投入できる場合は、独自の内製研修を多く開発する余裕があるかもしれません。一方、リソースに限りがある場合は、効果的な研修を提供できる外部のサービスを依頼するのが良いでしょう。 - 評価とフィードバック
研修を行った後、その効果を評価しフィードバックを行います。その結果を基に、今後の研修計画を見直すことができます。
まとめ
企業が研修の内製化を進める理由として、コスト削減、社内カルチャーの強化、ノウハウの蓄積などがあります。しかし、すべての研修を内製化する必要はなく、テーマによっては外部の研修会社に委託する方が適している場合もあります。
社内の人間が最も理解している企業文化やビジョンを伝える研修や、自社製品・業務上の知識などの研修は内製化に向いており、特殊な知識やスキルを習得する研修などは専門の研修会社に依頼した方が効果的な場合が多いです。
研修の内製化におけるメリットとデメリットを理解したうえで、テーマ別に外部サービスを使うか内製するかを判断し、効果的な研修を組み立てられるとよいでしょう。
慎重に計画し、適切なリソース管理を行うことで、内製研修は社員のスキルアップと組織の成長を促す有効な手段となりますが、効果的な研修を実施するためには、インパクトのある、ターゲットに合った研修を開発することが求められます。研修計画立案は、組織が直面している課題を解決し、新しい機会を開拓する上で極めて重要なプロセスと言えるでしょう。