人材育成プログラムの開発現場では、今、企業を取り巻く経済環境、社会情勢をどのように見ているのか?どのような人材が求められているのか?その結果、どのような考え方や方法をプログラムに取り入れているのか?今回は「営業担当者」に焦点を当ててウィルソン・ラーニングの浅井が米国よりお届けします。
また、併せてポストコロナ時代の営業活動にフォーカスした『Selling to Value セリング トゥ バリュー:ポストコロナ時代の営業活動を支える新基準』というEbookもご用意しております。併せてご一読ください。
今の時代、お客さまはどのような営業担当者を望んでいるのでしょうか?
時代をあらわすキーワードに「VUCA」[Volatility(変動性)/Uncertainty(不確実性)/Complexity(複雑性)/Ambiguity(曖昧性)]という言葉が使われるようになり、特に2014年あたりからATDでも頻繁に取り上げられ、人材開発においても注目されるキーワードとなっています。
つまり、私たちを取り巻く情報は複雑化かつ高度化し、顧客のニーズは多様化し、変化の速度は加速し続けています。企業は、かつてないビジョンの構想や課題解決の必要性に直面し、スピード経営・競合優位性の確立がいちはやく求められています。
このような環境下で、日々変わりゆくお客さまは、どのような営業担当者を望んでいるのでしょうか? あなた、もしくはあなたの会社の営業担当者がお客さまに受け入れてもらうには、何が重要だと考えますか?
この答えを探るため、変化するお客さまの状態を少し詳しく分析してみましょう。
VUCAワールドで営業担当者が直面する顧客の行動とは?
問題は感じているが、取り組むべき課題がわからない
取り巻く環境の激変を感じ、何かしなくてはいけないとは思いながらも、はっきりと何を最優先して取り組むべきか目指す道が見えない。前例のない課題に直面する中、顕在する問題の本質をつかみきれない。解決してくれそうな製品やサービスの情報が山ほど飛び交うため、何をどの基準で選ぶことが最適なのか自分も周りもどう進めればよいかがわからない。
このような状況の場合、解決に役立ちそうな製品やサービスについての問い合わせや営業担当者に声がかかることは多いものの、お客さま自身が起こっていることや課題をとらえきれていないのかもしれません。
よくあるお客さまの(営業担当者に対する)言動
- はっきりとしたイメージの共有がないまま、提案を求める
- 提案に対し、追加や変更の要望が多く、仕様を確定できない
- 意思決定ができない、またはこれまでの前提が急に覆る
このようなお客さまが求める理想の営業担当者は?
- 製品・サービスの内容以上に、現在の悩みや疑問を打ち明けられること
- 時代の潮流を読み解き、自分や自分たちの組織の、現状と願っている状態をわかりやすく整理し 、ゴール達成に必要な準備や必要な解決方法、道すじを共に考えてくれること
- ガイダンスやサポート
高度情報化社会により、営業担当者に話す必要性を感じていない
簡単に情報が入手・共有できる情報時代において、お客さまが営業担当者とコンタクトする以前から持つ情報はますます増えています。商品やサービスがどのようなものかと言う基本情報はもとより、SNSやユーザー口コミなどを通じて他の類似する製品・サービスとの比較や評価に関する情報も収集できます。
近年は、顧客の購買行動の多くは消費者による情報収集で完結しているといわれるように、絞り込みは徹底的に自分たちで済ませている場合が多く、また、豊富な知識がかえってじゃまをし、「どの製品・サービスも同じ」という先入観から抜け出すことができない状態であるとも考えられます。
よくあるお客さまの(営業担当者に対する)言動
- 情報提供だけを望んでいる
- コミュニケーションをとらない
- 自分が必要と考える商品やサービスのほかのものへの関心が薄い
このようなお客さまが求める理想の営業担当者は?
- 単なる製品・サービスの情報提供ではなく、顧客視点で適した情報をつなぎ合わせて見えなかった価値・意味を引き出しててくれること
- 誰が聞いても伝わる言葉で共有し認識させ、あらたな発見ができるような環境を整える力を持っていること
- 営業担当者と交流することで、自分だけの情報収集を上回る要素や気づきを与えてくれること
VUCAと呼ばれる激変時代の顧客の購買行動から、営業担当者に求められることが見えてきます
- 営業担当者への期待は、自社の商品・サービスの知識のみだけでなく、お客さまの本質的理解を求める姿勢への期待が高まっている
- 顕在ニーズを探るだけでは難しくなり、本人の気づいていない状況や欲求を探るための手助けの役割を求められている
転換のきっかけは「人の力」と「信頼」
VUCAの状況は歯止めがきかず加速し続けています。こうした状況にお客さまだけで適応していくことは困難なことです。お客さまが商談に前向きなるためには、いずれも営業担当者との「信頼」から引き出される要素が鍵となります。
お客さまを取り巻く環境およびビジネスの全体を深く把握するためには相手に質問をして、相手の話を聴くことしか他に方法はありません。
また、相手が気づいていなかった状況を探るためには、これまで以上に深く対話をする必要があります。こうした対話をするためにも、強固な信頼関係作りが注目されています。
強い信頼関係がある場合、対話から案件内容にとどまらない要素が全体としてあらわれ、お客さまだけでは見えてこなかった問題や新たな気づき、さらに感じることができなかった価値をイメージするきっかけを生み出します。その結果、お客さま自身がクリアになり、気持ちよく問題解決に向けて前進できるようになるのです。
Watson Wyattが2002年に米国で実施した大規模調査では、さまざまな業界・役職の労働者12,750名にアンケート調査を実施。調査結果では、高い信頼度のある企業は、信頼度の低い約3倍もの業績を残すことができていることが示されました。また、高い信頼度のある企業は、お客さまの企業の成長を加速させ、イノベーションを支え、さらに共働力、ロイヤリティの向上を助けていることがわかりました。英Warwickビジネススクールが10年もの期間にわたって実施したアウトソーシング業務に関する調査では、これらの業務委託の商談成立の鍵はサービス条件ではなく信頼にあり、信頼によりサービス自体価値に加え40%以上も付加価値を与えることができ、委託側・受託側双方に利益をもたらす要素であることが示唆されました。信頼のビジネスの原動力は非常に大きいことがわかります。(※1)
この信頼関係に関して、テクノロジーの時代であるからこそ重要になってくる要素がもう1点あります。
多くの企業において、顧客情報や案件情報を見える化し、効率的に運用管理するためのテクノロジー(CRMやSFAなど)が導入されています。しかし現場のCRM/SFAを活用していく営業担当者がお客さまの購買心理と購買行動を深く理解する力がない限り、それらのシステムに蓄積される情報の精度を上げることができず、本来の機能を発揮することができません。導入したシステムが最大限活用され、他の企業差別化を図るための鍵も、営業担当者の『人の力』が握っているのです。
強固な信頼関係でお手伝いできる人材
私たちWLWは、このお客さまとの強固な信頼関係からお客さまの課題の明確化、解決をお手伝いできるような力を持ち合わせた人材のことを、 “Trusted Advisor” (信頼されるアドバイザー)と呼びます。こうした人材こそが、激動する顧客行動を正確に読み取るスキルとマインドセットを持ち、さまざまな状況に潜んでいるビジネスチャンスを見出し、長期的なビジネス成果をもたらすと考えます。
お客さまから “Trusted Advisor” 信頼されるアドバイザー”として選ばれるために
WLWでは平成29年11月1日より営業力強化コース「CSP カウンセラー セールスパーソン(The Counselor Salesperson)」の新しいバージョンの提供を開始いたしました。今回バージョンの最大のポイントは、WLWの考えるこのVUCA時代に求められるスキルとマインドセットにフォーカスしたコンテンツを随所に取り入れたことです。 CSPは世界中で導入されてきたロングセラーでグローバル標準の営業力強化プログラムです。当社が米国ミネソタ州で創業した1965年から実績のある営業哲ALC学に基づく方法論(セールス・メソドロジー)を、数多くの実績と調査に基づきグローバルに拡大。「営業」を、人間の持つ普遍的な購買心理と行動原則をもとに、わかりやすいモデルや演習により体系的に学習できることを強みに、主要国で多くのお客さまにご利用いただき続けているプログラムです。 ぜひ、この新たなCSPのバージョンからVUCAワールドを生き抜く力をご体験ください。
CSP カウンセラー セールスパーソン The Counselor Salesperson™
また、ウィルソン・ラーニングではCSPのほかにも、主体的行動のとれる“自律的な部下”の育成に効果的な“営業コーチング”のスキルの修得を目的としたプログラムである『MSP 営業活動コーチ Managing Sales Performance』というプログラムもご用意してます。こちらも併せてご一読ください。
MSP 営業活動コーチ Managing Sales Performance
【参考】
※1:
- 8 Pillars of Trust Excerpt from “THE TRUST EDGE: How Top Leaders Gain Faster Results, Deeper Relationships, and a Stronger Bottom Line” by David Horsager (Summerside Press, September 2011).
https://trainingmag.com/content/8-pillars-trust - http://www.speedoftrust.com/how-the-speed-of-trust-works/business_case
- https://chiefexecutive.net/the-business-case-for-trust/
■ レポート
浅井 綾子
ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社
プログラム開発担当(米国駐在)
米国ミシガン州立大学コミュニケーション学部卒、同大学院修了。異文化コミュニケーション、医療・公衆衛生分野を対象としたヘルス・コミュニケーションを中心に研究。在米日本語補習授業校 初等部教師、日系医薬品開発業務受託機関(CRO)での勤務(クオリティマネジメント、メディカルライティング)を経て、2015年ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社に入社。2017年5月より同社米国支社に駐在。
営業力強化プログラム(CSP カウンセラー セールスパーソン)ご紹介イベントのご案内
人材開発フォーラム「セールスプロセスを前に進める方法論(メソドロジー)」
~その営業力強化施策は、戦略とシステムと連携していますか?~
【日時】2017年12月15日(金)15:00~17:00(開場14:30)
【会場】ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社 1階 イノベーションセンター
【講師】大谷 彰一(おおたに しょういち) ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社 取締役執行役員 ソリューション・コンフィギュレーション・コンサルタント