イノベーション人材に求められる能力と望まれる企業側の体制

2021年8月31日

近年さまざまな分野で、時代の先を見据えた新規事業や変革の担い手となるイノベーション人材が注目されています。しかし、多くの企業ではイノベーション人材の必要性を感じてはいても、どのように育成すればよいのか、何が適切なアプローチか試行錯誤をしている状況ではないでしょうか。ここでは、イノベーション人材の必要性をあらためて確認し、イノベーション人材に求められる能力やイノベーション人材を育みやすい企業の特徴などを見ていきます。

イノベーション人材とは?その意味や必要性

イノベーション(Innovation)を日本語で表すなら「改革」「新機軸」などの意味になります。ビジネスにおいては革新的な技術や新しいビジネスモデルの構築などにより、新しい価値や変革をもたらすことを指す場合が多く見受けられます。例えばパソコンでの定型業務を自動で行うRPA(Robotic Process Automation)による業務改革や、カーシェアリングやサブスクリプションといった購入を目的としない新たなビジネスモデルの確立などが該当します。

現代は、IT革命による産業構造の変化、新型コロナウイルスによる新しい生活様式など、変動性・不確実性が高い、いわゆるVUCAの時代です。いつ既存のビジネスモデルが新しいサービスや製品に取って代わられるかわからないと言ってもよいでしょう。現在確実に収益を上げている企業であっても、イノベーションを起こして貪欲に成長していくことが求められます。

イノベーションを起こすためには、変化に強く柔軟性の高いいわゆる「イノベーション人材」が必要とされています。イノベーション人材とは、イノベーションを起こす可能性が高い人材(イノベーター)のことであり、次のような能力や姿勢が求められます。

なお、競争が激化する現代、企業内で完結するクローズド・イノベーションでは対応が難しく、組織を超えて取り組むオープン・イノベーションへと移行しつつあります。オープン・イノベーションについて詳しくは、「オープン・イノベーションで開発力を強化する!共創によりもたらされる革新」をご参照ください。

イノベーション人材に求められる能力・姿勢

イノベーション人材に求められる能力と姿勢を4つの視点で紹介します。

  1. 「Will(自分の想い・意志)」がある
    自分は何をしたいのか、社会にどのような変革をもたらしたいのかという「Will」があるかどうかは非常に重要なポイントです。たとえ天才的なアイデアを生み出せる人であっても、そのアイデアによって、世の中にどのような価値をもたらしたいのかという想いがなければ、一過性に終わってしまう可能性があります。
  2. 広い視野
    今ある業務を正確に行うことは重要なことですが、決められた業務を機械的に遂行するだけではイノベーションは起こりにくくなります。クライアントや消費者は本当に現状で満足しているのか、彼らに言語化できていないニーズはないのか、まだ気づいていない価値はないのかなど、俯瞰的にとらえられる広い視野が必要です。
  3. 主体的に学び行動する姿勢
    課題を見つけ、強いWillでイノベーションを試みる際に、土台になるのは幅広い知識です。イノベーション人材には知識に貪欲で、自ら積極的に学び、行動する姿勢が求められます。
  4. コミュニケーション能力
    課題克服のWillがあっても、ひとりでイノベーションを実現するのは困難です。多くの場合、チームで取り組む、あるいは、何らかの形で社内外の協力を得ることになります。周囲の理解を得るためにも、チームとして機能するためにも、コミュニケーション能力は必須です。

イノベーションは誰もが生み出せる可能性がある

イノベーションは、ドラスティックな変化をもたらすような技術革新や創造性とイコールととらえられ、特別な技術を持つ一部の人や特別なひらめきを持つ人など、ごく限られた人材しか生み出せないと誤解されがちです。

しかし、本来のイノベーションとはそのようなものだけではなく、これまでに存在したものにほんの少しの改善を加える、ちょっとした新しい価値を付加するといったことも含まれます。日々の業務をこなす現場スタッフの地道な試行錯誤や職歴の浅い社員の素朴な疑問などから、小さいけれども価値のあるイノベーションが生まれることも多くあるのです。

また、ひとりの天才から生まれる場合もありますが、複数の人の気づきがさまざまに重なり合って生まれるものも少なくありません。

イノベーションを期待するなら、ゼロの状態から新しい価値を生み出すひとりの天才を待たなくても、誰もが小さなイノベーションを起こしやすい環境を整える方が、企業にとっては格段に効率が良いと言えます。

また、イノベーションに重要なのは、才能・スキルなどよりも核になるWillです。仮に高い技術や天才的なひらめきを持った人がひとりいても、その技術やひらめきを活かすWillがその組織になければ、イノベーションを起こすことは困難と言えます。

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イノベーション人材を育成できる企業

イノベーション人材となり得る社員はどの企業にもいるはずです。

大切なのは、ポテンシャルを持つ社員がイノベーションを生み出しやすい組織になっているかどうかです。イノベーション人材が活躍するためには、次のような組織であることが望まれます。

  1. イノベーションに挑戦する社員の心理的安全を確保する組織
    イノベーションの核となるWillがあったとしても、それを口に出せなければ想いは埋もれてしまいます。安心して意見やアイデア、想いを口にできる組織であることが重要です。
  2. イノベーションに対する想いを理解し、支援する組織
    部下やメンバーがイノベーションにつながる想いを口にしたならば、それを受け止める上司の存在が重要です。事業構想にまで育っていないアイデアや想いを上司がサポートすることで初めてイノベーションとして昇華させていくことができるのです。
  3. 新しい取り組みを賞賛する組織文化
    新しい取り組みを始めようとしても、ひとりだけで成功に到達するのは困難です。ほかのメンバーに対し、一緒に取り組むよう協力を要請することもあれば、それまで行っていた既存業務をほかのメンバーで分担してもらうこともあるでしょう。ひとりの想いにより発生するそのような負担を余計な負担ととらえず、挑戦を積極的に受け入れるような組織文化が望まれます。

形になっていない個人の想いを尊重し、あと押しできる組織であれば、主体的な挑戦が生まれやすく、イノベーション人材が育ちやすい企業となることが期待できます。

イノベーション人材が自然と育まれやすい企業組織の醸成について参考になる資料「一人ひとりの挑戦が生まれ続ける、創造的な組織文化とは」「新規事業が生まれ続ける組織へのカルチャーアップデート 探求オンラインサロン 開催レポート」を無料でご提供しております。お気軽にダウンロードしてください。

なお、「人材」をはじめ情報や資金などのリソースを効果的に使う、イノベーション実現のための取り組み全般をイノベーション・マネジメントと言います。イノベーション・マネジメントの必要性やそれをシステムとして国際規格化したISO 56002について、「日本企業に求められるイノベーション・マネジメントとは?」で紹介しています。ぜひご覧ください。

イノベーション人材は育成と組織文化の醸成から

イノベーションを生み出す人材は、必ずしも最初から高い能力が必要なわけではありません。重要なのは起点になる想いや、アイデアの素が生まれたときにそれをあと押しする組織文化です。社員一人ひとりが新しいことに挑戦する気持ちを常に持てる組織文化を醸成できると、イノベーション人材が活躍する企業へと成長していくことでしょう。

Willはあっても事業化へのイメージがわかない、イノベーションへ昇華させるプロセスに悩んでいるといったケースもあるでしょう。そういったケースでは、「価値創造リーダーシップ体験プログラム」をおすすめします。同プログラムではWillを事業化する過程を疑似体験できる「価値創造体験カードゲーム」を使用します。その体験セッションと、内容や開発背景などを「HRプロ」に取材いただいたレポート記事を以下よりダウンロードしていただけます。

「価値創造体験カードゲーム」を通じて イノベーションを起こす人や組織を探求する

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