営業部門は自社の商品・サービスを顧客に訴求する重要な役割を担っています。多くの企業で、営業担当者育成のための研修や取り組みを行っていることでしょう。
一方で、昨今は人材や働き方の多様化などにより、営業手法や営業に求められるスキルが変化しています。変化に合わせて自社の営業教育内容のアップデートを検討する企業も少なくないと思います。
今回は、教育プログラムを見直す際のプロセスとポイントを紹介します。
定期的に営業教育を見直すべき理由
昨今、組織においては人材や働き方の多様化が進み、さまざまな雇用形態、多彩なバックグラウンドを持つ人材との協働が当たり前になりつつあります。
また、DXの促進やテレワークの普及に伴うビジネス環境の変化、ITテクノロジーの進化やコロナ禍による消費者ニーズの変容なども起きています。
そうしたことからも、将来を予測することが難しいといわれる現代は「Volatility(変動性)」「Uncertainty(不確実性)」「Complexity(複雑性)」「Ambiguity(曖昧性)」の4つの言葉の頭文字をつなぎ合わせて、「VUCAの時代」と呼ばれています。
VUCA時代になり、これまでの成功パターンでは通用しないケースも見られるようになりました。現時点では既存のやり方で収益を上げることができていたとしても、今後も継続できるとは限りません。
特に営業現場の第一線では、変化に素早く適応できる人材育成がより重要になっていくと考えられます。
営業教育を見直す際のプロセス
営業教育を見直す際のプロセスを3段階で紹介します。
現在の営業力を把握する
まずは、現在の営業力を把握することが大切です。セールスプロセスごとの達成度や成約率などを数値化して営業担当者のスキルレベルを可視化します。自社独自のスキルマップシートを作成し社内で評価するのもいいですし、能力を測定する外部サービスを活用するといった方法もあります。
ウィルソン・ラーニングでは、営業担当者、上司、顧客へのアンケート結果をもとに、営業担当者の能力とそれを支援する営業管理者の指導能力を測定する「SPMS-営業力向上カルテ」をご提供しています。詳しくは、下記よりご覧ください。
ギャップ分析と課題の抽出
続いて経営戦略・営業戦略に基づいて作成した目的(ありたい姿)を明確にし、現状とのギャップを理解する作業を行います。
- ギャップ分析をもとに課題を抽出
- 課題の重要度に応じて優先順位をつける
- 課題ごとに、「目的に対して何が不足していたのか」「なぜ未達だったのか」など原因を洗い出し、対策を検討する
ここでの対策とは、解決のために身に付けるべき考え方やスキルのことです。原因に則して対策を絞り込むことで、効果が高まることが期待できます。
具体的な教育プログラムの検討
抽出した課題と現在の教育プログラムを照らし合わせて、解決できる手法を検討します。
研修で解決可能な課題の場合は、どういった内容が望ましいか考え、プログラムを組み立てていきますが、内容だけでなく、学習したことを定着させ実践で生かせるための施策も重要です。たとえばロールプレイングを盛り込む、日常の業務を想定した事例演習を繰り返す、などの工夫があれば理想的です。
施策について社内で対応するのが難しい場合は、プロの手を借りることも選択肢のひとつとなるでしょう。より有意義な研修にするために、最適な方法を模索していくことが大切と言えそうです。
ウィルソン・ラーニングでは、成果の見込める研修プログラムや人材開発に関するご質問・ご相談などを喜んでお受けいたします。下記よりお気軽にお問い合わせください。
自社の営業力強化を図るための研修のポイント
営業力強化を図るために研修を実施する場合、意識したい3つのポイントを紹介します。
1 顧客視点を取り入れる
商品開発・実用化までのスピードが速い現代では、差別化できる商品・サービスを持っていても、すぐに競合に追いつかれてしまったり新たな競合が参入してきたりする可能性があります。販売・契約の後も、顧客と長期にわたって良い関係を維持することの重要性が増していると言えます。
顧客との関係性を良好にするには、顧客の課題解決に向け適切な提案をする「コンサルタント」と自社利益を追求する「ストラテジスト」、この両方の視点をバランス良く備えておくことが求められます。営業においてはストラテジストに傾きがちですが、コンサルタントの視点も忘れないよう注意しなければなりません。
営業担当者は、顧客に対して自社商品を「売れる・売れない」といった自社目線、自分目線で評価しがちです。しかし、購買を決めるのは営業担当者ではなく顧客です。「売れる・売れない」ではなく、「買う・買わない」といった顧客目線で考えることこそ重要であり、その目線での分析が今後の営業活動への有力なヒントとなるはずです。
また、成果を急ぐあまり、顧客に対して自社商品やサービスを「買うべき理由」の説明がおろそかになっていないでしょうか。とはいえ、顧客の「買う・買わない」の決定には、商品力以外にも複数の要因が絡んでいます。やみくもに顧客に商品やサービスの強みをアピールして売り込んでも成果は上がりません。
なぜ買ってもらえないのか、顧客が「買わない理由」を理解した上で営業活動を行うことの重要性を知ることが、最終的に顧客に購入してもらうための第一歩です。買わない理由を知ることの大切さについては、以下の動画でも紹介しています。
顧客の購買心理を妨げている本当の理由は?>>「営業活動は「買わない理由」から始めよう」
ストラテジスト、コンサルタントの視点をバランス良く備え、顧客理解と信頼関係を重視した交渉や合意形成ができる人材となることを目指すような、研修内容が理想的です。
2 営業マネジャーを教育する
マネジメントを体系的に指導・育成する人材がいない組織では、マネジャーになった人間がやむなく自己流でマネジメントをしています。当然、自身の経験則に基づいたマネジメントになってしまうため、タイプの異なる人材には適さない指導・育成となる場合があります。営業マネジャーと営業担当者の組み合わせによってはどちらも苦労し、成果に影響を及ぼすことも少なくないでしょう。
新任の営業担当者に教育・研修の場を設けるのと同様に、新任の営業マネジャーにはマネジメントの原理原則を体系的に学べる教育・研修の実施が必要です。
営業マネジメントにおける課題と解決策について詳しくは、「営業マネジメントの陥りやすい課題とは? 改善に向けた企業の取り組み方を解説」をご覧ください。
3 営業組織全体で考え方を統一する
組織で考え方を統一化・共通言語化することも重要なポイントです。営業に必要な考え方やマインドを共有できていれば、組織のメンバー全員で同じ課題感を持つことが可能になり、改善する場合も効率よく行うことができます。
共通言語化がされていると、認識違いを防ぐことができ、同じ説明や確認を繰り返す手間が省けるため、平素の業務におけるコミュニケーションが円滑化するといった利点もあります。
まとめ:営業力強化のためには営業教育の在り方を多方面から見直そう
将来の見通しが立たないVUCAの時代では、変化に柔軟に対応できる組織・人材が必要です。そのような組織・人材を育成するべく定期的に自社の教育内容を見直し、適宜調整することが求められます。営業研修を見直し・調整する際には、個人だけではなく組織として価値観の共有・統一化を行うことも重要なポイントです。営業力強化のために教育内容のアップデートを検討されているご担当者は、多方面から見直されてはいかがでしょうか。
なお、営業力強化の取り組み方や取り組み例など営業力強化に関する基礎知識は、「営業力強化とは? 現状分析や社内連携で自社の競争力を高めよう」でご紹介しています。ぜひ、合わせてご覧ください。