合意形成は重要なビジネススキルのひとつ‐プロセスとポイントを紹介

2022年3月1日

ウィルソン・ラーニングでは、交渉のプロセスを通して、どうしたらお互いが満足できる最善の合意に達することができるかを学ぶプログラムを提供していますので、ぜひご活用ください。

ビジネスにおける「合意形成」とは、同じ業務やプロジェクトにかかわる内外含めた多様な利害関係者との意見の一致を図るプロセスを指します。

合意形成はさまざまなビジネスシーンで求められます。業務やプロジェクトの目標に対する認識のずれや実行段階でのトラブルにつながる要素をなくし、仕事を円滑に進めるためには不可欠と言えるでしょう。

現在はダイバーシティや働き方改革の推進などにより人材の多様化が進んでいます。価値観やバックグラウンドの多様性があるということは、考え方や求めるものも多様だということです。均質的な人間関係、価値観の中で行うよりも合意形成の難易度が上がることもあるでしょう。

ビジネスにおける合意形成のプロセスやポイントについて紹介します。

合意形成の重要性

ここでは、社内会議やプロジェクトの進行など、同じ仕事に携わるメンバーの意見を一致させることを中心に考えます。
合意形成を確実に行うことは、次のような効果につながります。

  • 会議や対話が有意義となる
    「意見が多すぎて話し合いがまとまらない」
    「結論が形式的(内面では不満を抱えている)」
    「対立が解消できず、合意形成が次回に持ち越しとなった」
    などの状態に陥ってしまうと、せっかくの会議・対話にかけた時間が無意味となってしまいます。
    会議や話し合いを次のプロセスへ進めるためにも、合意形成をきちんと行うことが重要です。
  • 関係者が納得したうえで方針や実行策を決定できる
    合意形成のプロセスを踏むことで、関係者が決定事項に対して納得感を得ることができます。
    結果に対してしこりを残さないようにできれば、良好な関係性が維持できます。
    また、次のアクションに対して関係者が前向きに取り組むことができるでしょう。
  • さまざまな意見や考え方を最大限に活かすことができる
    合意形成とは特定の意見のみを受け入れるものではなく、さまざまな意見を踏まえたうえで、「合意」を「形成」していくものです。多くの意見やアイデアをできるかぎりオープンに、共有・検討することで、より良い結論を引き出すことができます。
  • 関係性を円滑に保つ
    会議や対話のみならず、ミーティングの日程調整や複数ある業務の優先順位を変更・調整するなど、ビジネスシーンで合意を必要とする場面はさまざまです。確実な合意形成は日々発生する多くの対話をスムーズにし、社内の人間関係を良好に保つことにつながります。

合意形成のプロセス

合意形成のプロセスを紹介します。ビジネスにおける合意形成のシーンは「社内」と「社外」に大別されますが、ここでは主に「社内会議」のケースで考えていきます。

1:人と連携する

建設的な話し合いのために、まずは環境を整える必要があります。合意形成の障害となりそうな問題をあらかじめ整理しておくことも重要です。
そのためには、最初に具体的な目的を共有しておきます。目的が不明瞭だと関係者が意見を出しにくく、目的がずれていると意見の方向性が不揃いになりがちです。オープンで、問題解決に前向きに取り組める環境を作ることが、双方が満足できる最善の合意を得ることにつながります。

「プロジェクトの方向性を決定する会議」であれば、プロジェクトの目的や意義だけでなく、そのプロジェクトが自社でどういった立ち位置なのかというところまで共有します。例えば「既存の収益モデルでは収益が下がっているので新たな事業が必要」「既存ビジネスが好調なので、その強みを活かした事業を模索している」のように明確化すると、具体的な意見が出やすいですし、方向性のズレも防止できるでしょう。

2:問題を探る

会議は最終的に「アクションプランの選択」という決定をします。しかし、その前に関係者の解決したい問題や関心事を探ることが重要です。そうすることで問題が解決でき、かつ関係者すべての人が納得できるアクションプランを提案しやすくなるからです。

社内会議の参加者のなかでも立場の違いがあるため、対話が協調的な問題解決の手法であることを意識することが大切です。そのため、相手がなぜこのような主張をしているのか、主張の背後にある問題や関心事を見極めることを特に重視しなければなりません。

アクションプラン選択の前に全員で意見を出し合い、公平にそれらを比較していくことも有効です。アクションプラン決定の過程においては、「なぜその選択をしたのか(別の選択をしなかったのか)」理由を明確にして、解決案を絞り込んでいきます。

3:合意を得る

具体的なアクションを確認しながら合意の意思決定を固めるフェーズです。この段階で意思決定が難航した場合、相手を説得することに注力してしまうことも多いですが、代替案を提案して、その内容が双方にとっていかに最適な案なのか相手が納得できるよう努力することも必要です。

なお、アクションプラン選択の際は双方の利害が一致するように決定しますが、そのためには客観的な視点でアクションプランを選択することが重要です。無事にアクションプランが選択された場合も、そこで終わらせるのではなく、アクションプランを実現するための手順や実行案まで確認・共有します。そうすることで、実行段階における当事者意識を高めることができます。

例えばプロジェクト内容を決定する会議では、決定したプロジェクトを「誰が」「いつまでに」立ち上げるのかといったことまで決定します。その後の具体的な手順や実行案までの合意を進め、合意したアクションプランの内容をスムーズに実行できるようにしましょう。

意見の食い違いが生じたときのポイント

意見の食い違いが生じたときの解決方法について、ポイントを紹介します。

意見の食い違いはあって当たり前ととらえる

多くの意見が出るのは、活発な組織活動が行われていることやオープンな関係性が築けていることの証明です。意見の食い違いが生じても問題ありませんが、解消していくことは必要です。

最初に意見の「食い違い」は健全であることを関係者全員で共有します。それによって方向性の異なる意見もいったんは受け入れる土壌が育まれるでしょう。受け入れる姿勢が定着すれば、意見が出尽くしたあと、スムーズに論点を整理していく段階に移行できます。

論点整理をすれば、一致点と相違点を明確にすることが可能です。それによって意見のすり合わせを試みることができます。ただし、ここで進行役やファシリテーターが特定の意見に肩入れしてしまうと、公平な議論になりにくくなります。中立の立場で議論を進めていける社員を進行役やファシリテーターに任命する、といった工夫も必要でしょう。

意見の対立や衝突を良いパワーに変える方法は、「コンフリクトをポジティブに活用して組織成長の力にする方法」をご参照ください。

意見のすり合わせで重要な「問いかけ」

意見をすり合わせていく段階では、一方的にならないよう「問いかけ」をしながら進めることが重要です。ただし、意見が分散するような問いかけをしてしまうとかえって議論が紛糾してしまいます。必ずゴールを見据え、合意形成につながるように質問することが重要です。

例えば、新しいプロジェクトを決定する会議において「Aのプロジェクトを新規に始めるには初期投資がかかりすぎるので反対」といった意見があるとします。
その場合「では、どんなプロジェクトが良いと思いますか」と議論が広がる問いかけをするのではなく、「初期投資の問題が解決できれば、賛成できますか」や「初期費用が課題とはいえ、Aの事業自体には納得していますか」のように問いかけます。つまり「A事業を始める」に当たっての課題や問題点を、解決する方法を探るための質問によって妥協点を探っていくのです。

合意形成は社外交渉においても重要

ここまで、社内の会議や対話をメインに見てきましたが、取引先や顧客との対話・交渉においても合意形成は重要です。

社外の交渉では、相手を説得することや自社の利益をどう優先するかにとらわれがちです。

しかし合意形成は、関係者すべてが納得する解決策を見つけていくための手法で、互いの利害を一致させることを目的とします。どちらか一方が「勝つ」「負ける」ではなく、「Win-Win」を目指すために行います。

合意形成を軸とした対話・交渉を進めることで、取引先との信頼関係を構築し、自社ビジネスの成果を最大化することも期待できます。

とはいえ、社外交渉においては相手側が自分の考え方に固執することもあるでしょうし、「勝ち負け」をはっきりさせるための交渉を迫られることもあるかもしれません。ときには毅然とした態度も必要です。

ウィルソン・ラーニングでは、交渉のプロセスを通して、どうしたらお互いが満足できる最善の合意に達することができるかを学ぶプログラムを提供していますので、ぜひご活用ください。

合意形成の重要性を改めて周知し、社員のスキル獲得を支援しよう

社員一人ひとりが合意形成のスキルを身に付ければ、会議や対話の質を向上させることができます。確実な合意形成がなされれば実行案に対する認識のズレがなくなり、効率的な対話の実施が可能です。

また、きちんと合意形成のプロセスを経ることは利害関係者の相互理解にもつながるため、取引先との関係構築にも役立ちます。

合意形成の重要性を表面的には知っていても、その内容やプロセスはあまり知られていないようです。企業としては合意形成の意義や重要性の周知に努めたうえで、社員のスキル獲得に向けた指導や研修を実施してはいかがでしょうか。