組織文化とは何か? 組織風土との違いやその重要性などについて解説

2021年11月2日

組織文化とは、ある組織のメンバーの間で共有される考え方や行動様式のことです。企業で組織文化を醸成することは、社員の労働意欲向上や責任感の喚起につながり、対外的には企業イメージの形成につながります。また、企業イメージに共感する人材が多く集まり、彼らが長期的に組織に貢献してくれることも期待できます。組織文化は、継続的な企業活動には欠かせないものとも言えるでしょう。

組織文化について、基本的な知識と重要性を解説します。

組織文化とは

はじめに、組織文化の定義と組織風土との違いを説明します。

組織文化の定義

組織文化は、英語で“Organizational Culture”と表記され、「組織カルチャー」とも呼ばれます。組織固有の価値観や考え方、組織の中で望まれる行動様式などを指し、組織の構造に関するハード面ではなく、人に関するソフト面を示す言葉です。

組織が目標に向かって成長する段階において、組織の価値体系は、外部環境への適応や、内部環境の課題克服を通じて形成され、企業が成長するとともに組織文化として定着します。

なお、組織文化には、「明文化されているもの」と「明文化されていないもの」が存在します。明文化されているものは簡単には変えられませんが、明文化されていない組織文化は、個人が影響を与えて変化させることが可能です。

ウィルソン・ラーニングは、創造的な組織文化とは、「組織の目的やビジョンを共有した個人が、想いを起点に価値創造に挑戦し、その実現支援を組織が行う相互作用により、個人の願う変化を生み続ける思考・行動様式」であるととらえています。

組織風土との違い

「組織文化」によく似た言葉に、「組織風土」があります。「風土」とは、その土地に根付いたルールや価値観であり、自然発生する概念です。文化と風土は相互に影響をし合っていると考えられるため、境界線を明確に定義することは難しい部分もあり、広い意味で文化と風土それぞれを含む形で捉えて話すこともありますが、ここでは違いについて少し触れたいと思います。

組織風土は、企業内では「当たり前」とされる通念的な価値観や暗黙のルールで、時代やトレンドの変化、社会環境といった外部の影響を受けにくい特徴があります。そのため、組織風土を短期的に変えることは難しいと考えられています(長期的に変わっていくことはもちろんあります)。

一方、組織文化は変化し、成長していくものです。個人が影響を及ぼしたり、また、影響を及ぼし合ったりしながら変化する可能性があるものです。こちらも、短期的に変化するものではありませんが、企業の方針や社会環境を含む外部環境などによって影響を受け、良い方向にも悪い方向にも変わっていくものだと考えられています。

ビジネスにおける組織文化

次に、ビジネスで「組織文化」という言葉が、どのような経緯で注目されてきたのかを解説します。

組織文化が注目されるようになったきっかけ

組織文化という言葉が広く使われるようになる以前から、組織のメンバーが作り出す共通の価値観や行動様式といった概念自体は存在していました。

しかし、ビジネスの現場で組織文化が注目されるようになったのは、1980年前後のことです。

1980年代前半には、トム・ピーターズ、ロバート・ウォーターマン著の『エクセレント・カンパニー』や、テレンス・ディール、 アラン・ケネディー著の『シンボリック・マネジャー』が刊行されました。これをきっかけに、組織文化と業績との関係を分析する多くの研究がなされるようになったことが始まりといわれています。

組織文化の重要性

組織文化は現在、「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」に続く経営資源と見なされることがあります。

組織文化が十分に醸成されていない企業は、競争力や持続性において強さに欠けます。社会全体が激変する時代を生き抜くために、企業の求心力を支える組織文化は重要度を増していると言えるでしょう。

企業の選択や、離職の判断には組織文化が強く影響を及ぼすため、組織文化は人材の動向にも大きく関連しています。人材の安定的な確保を考える上でも、組織文化の在り方は重要です。

実際に企業の多くが組織文化の重要性を認識しており、自社の組織文化について、進化が必要であると感じる経営幹部層も少なくありません。

日本企業の組織文化の特性

日本企業の組織文化にはどのような特性があるのでしょうか。オランダの社会心理学者ホフステードの「6次元モデル」を参考に考えていきましょう。

ホフステードの6次元モデルとは、72カ国、11万6千人のIBMの社員を対象に調査を行い、「権力格差」「集団主義/個人主義」「男性性/女性性」「不確実性の回避」「短期志向/長期志向」「人生の楽しみ方」の6つの要素につき、国別の傾向を指標化したものです。

この6つの要素のうち、日本は「男性性」、「不確実性を回避」、「長期志向」の傾向が強いといった特徴があります。

男性性・女性性は、このモデルでは強さ・優しさを意味しています。ビジネスで言うと、男性性が目標達成や成功を重視する文化、女性性がオフの生活も大切にする文化といった捉え方ができます。高度経済成長期に多く見られた「企業戦士」は、まさに男性性の象徴と言えるでしょう。

不確実性回避とは、未知の状況に対して不安を覚え、それを避ける傾向を言います。たとえば、不確実性を取り除くため、細かくルールや規則を作るといったことも、この傾向の強い組織で見られます。また、従来の日本企業の大きな特徴である終身雇用・年功序列制度も、不確実性の回避という文化的傾向が関係していると言えそうです。

なお、変化の激しい現代のビジネス市場においては、迅速に、かつ柔軟に対応していく必要があります。不確実性回避傾向の強さは、その障壁となる場合があります。

長期志向は、結果が出るのに時間がかかっても、目標に向かって根気強く努力を重ねていく傾向です。すぐには戦力にならない新卒者を一括採用し、基本的なビジネスマナーから教育するのも、長期志向の表れと言えるでしょう。

以上、実際は業種や企業によって傾向は異なりますが、日本企業の一般的な特性として把握しておくといいでしょう。

組織文化をアップデートするための流れ

組織が時代に合わせて持続的に成長するためには、組織文化のアップデートが必要です。目指したいカルチャーの実現に強い意志で取り組まなければなりません。

ただし、現場の実情を無視してアップデートしようとしても成功しません。実践者である社員の視点から行動・体験を企画していくことが大切です。

組織文化をアップデートするための取り組みや考え方は、多く紹介されていますが、よく取り上げられるものとして、リーダーシップ論で知られるジョン・P・コッター氏が提案する企業変革の8ステップがあります。今回はこの考え方を応用し、組織文化をアップデートするための流れの一例を紹介します。

  1. 危機意識を高める
    市場と競合の現状を分析し、変革に携わるメンバーで危機意識を高め、組織文化をアップデートする必要性を理解します。自社の組織文化の強みや弱み、それが業績に与えている影響、変化の激化するビジネス市場において、競争優位性を保つためにどこをどう変革していけばいいのかなど現状を把握し、危機意識を持つことが、組織文化変革への原動力となります。現状を的確に把握・分析し、健全な危機意識を持つことが第一歩になります。
  2. アップデートのためのチームをつくる
    アップデートするためのチームを編成します。組織文化をアップデートするには、実践者である社員の納得とモチベーションが不可欠です。チームメンバーは、経営者層だけでなく、中間管理職や現場の社員など幅広い層で編成する必要があります。
  3. ビジョン・戦略を描く
    変革するためのビジョンを明確にし、それを実現するための戦略を練ります。組織文化の重要性、現在の自社の課題、目指したいカルチャー、そうなるための具体的な戦略を描いていきます。組織文化単独で考えるのではなく、事業戦略と紐づけて描くことが大切です。
  4. ビジョン・戦略を全社で共有する
    3のビジョン・戦略を全社で共有します。その際ビジョン・戦略の意図が正しく伝わるよう留意しなければいけません。最終的にまとめた戦略計画だけでなく、組織文化がどのように自社の業績に影響するのか、今なぜ組織文化のアップデートが必要なのかといった、背景まで含めてメッセージする必要があります。
  5. 社員が自発的に動ける環境を用意する
    社員が組織文化の重要性やアップデートの必要性を理解すると、ビジョン・戦略に即して自発的に行動してくれることが期待できます。支障となるようなルールがあるなら撤廃し、行動を起こしやすい環境を整えることも大切です。また、組織文化に限らず、変革には失敗のリスクがあります。社員が自発的に行動をして、仮に失敗しても大丈夫と思える「心理的安全性」が担保された組織であることも重要です。

    心理的安全性については、「チームワークは? 高める方法やエンゲージメントとの関連性などを紹介」でも触れています。ぜひご参ください。

  6. 短期的な成果を実現する
    組織文化のアップデートには時間を要します。変革へのモチベーション維持のためにも、まずは短期的成果を見込める計画を立案し、実現をするといった繰り返しが現実的です。
  7. さらなる変革を推進する
    短期的な成果の実現で弾みをつけ、さらなる変革を進めていきます。その際、それまでの成果を可視化し、全社で共有することがモチベーションにつながります。
    売上額や利益額といった財務的なインパクトのみが成果指標にされがちですが、人材の行動変容や社員エンゲージメントなど非財務的インパクトにも目を向ける必要があります。
  8. 変革を組織文化に定着させる
    6や7で組織文化アップデートの成功パターンが明確になってきたら、それを定着させていきます。進捗状況やその成果などを、アンケートやサーベイツールを利用して可視化することも、アップデートへのモチベーション維持に有効です。

企業経営に貢献する組織文化づくりを

多くの企業でオープンイノベーション、事業創造プログラム企画、社内ベンチャー、アクセラレーターなど、多様な取り組みが推進されています。しかし、実は組織文化が、新しい取り組みが進まない障壁になっているというケースが多く存在するのです。新しい取り組みを支援し、人を生かせる組織文化を持つ企業には、一体感と柔軟性があります。外的要因の影響を受けずに、自社らしく歩み続ける力があるのです。

ウィルソン・ラーニングでは、メンバー自らが変化をつくり出す企業であり続けるための組織文化づくりをサポートしています。まずは自社の組織文化の現状を分析し、価値創造に向けた課題の見える化をしてみませんか?

組織カルチャーの分析と課題の見える化を目的とした調査サービス
2/1「クリエイティブ・カルチャー・プロファイル」提供開始

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