誰もが持っているアンコンシャスバイアスとは

2020年4月14日

組織内で、「このプロジェクトは新人にはまだ早い」「時短勤務者に管理職やプロジェクトリーダーは無理だろう」といった言葉を耳にしたことはありませんか? また、知らず知らずのうちに、このような発言をしてしまったことはありませんか?

人は誰でも無意識の思い込みや過去の経験からくる、「偏ったものの見方」を持っています。そのため、何げないひと言や良かれと思って発した言葉が相手を傷つけてしまったり、人や組織の成長を妨げてしまうことがあります。こうした無意識の思い込みや偏見のことをアンコンシャスバイアスと呼びます。

今、企業で注目されているアンコンシャスバイアスについて解説します。

アンコンシャスバイアスとは?

アンコンシャスバイアスは、「無意識の思い込み」や「無意識の偏見」などと訳されます。
自分自身が気づいていないものの見方やとらえ方のゆがみ・偏りのことを指します。
ネガティブにとらえられがちですが、人は誰でもアンコンシャスバイアスを持っています。それは、無意識の内に生じるものであり、過去の経験や習慣、周囲の環境、蓄積された情報などから生まれるものです。

企業の人材開発分野においては、無意識の思い込みや偏見、物事のとらえ方に偏りがあることで、ダイバーシティに対応できなかったり、組織の成長の妨げやイノベーションの妨げになったりすることがあります。
また、良かれと思って発した言葉が逆に相手のモチベーションを下げてしまうことや、パワーハラスメントやセクシャルハラスメントに該当してしまうケースもあります。

そのような理由から、企業の中でアンコンシャスバイアスが注目されているのです。

アンコンシャスバイアスがもたらす影響

人は誰でも無意識のうちに物事を判断し、行動しています。誰もがアンコンシャスバイアスを持っているのです。

たとえば、以下のようなケースがアンコンシャスバイアスに該当します。

  • 新人にこのプロジェクトはまだ早い
  • 最近の若者はすぐに会社を辞めてしまう
  • 時短勤務者にプロジェクトリーダーは無理だ
  • 子どものいる女性社員に管理職は務まらないのではないか
  • シニア層はIT技術の進化についていけなのではないか
  • 長年この手法でやってきたのだから、この手法に間違いはない

いかがですか? 一度は耳にしたことがあると思った方もいるのではないでしょうか?

たとえば、リーダーが入社2年目の社員に「君はまだ新人だ。新人にこのプロジェクトはまだ早い」と言ったとします。それを聞いた社員は、自分がまだ新人扱いされていることにショックを受けるかもしれません。意欲的で上昇志向の高い社員であれば、戦力としてみなされていないと感じてモチベーションの低下につながるおそれもあります。

また、「女性だから○○だ」「男性だから○○だ」という性別による思い込みからくる発言は、セクシャルハラスメントやパワーハラスメントに該当する可能性があります。

社員の中に「会議では正しい意見を述べなければならない」「発言してもどうせ聞いてもらえないだろう」というアンコンシャスバイアスがあると、会議でのブレストや議論が進まず、無言の会議になってしまう可能性があります。

アンコンシャスバイアスは悪いことなのか?

アンコンシャスバイアスがあることは悪いことなのでしょうか?
いいえ、アンコンシャスバイアスは誰にでもあるものです。

それ自体が悪いことなのではなく、自分のアンコンシャスバイアスが周囲にどのような影響を与えているのか、思い込みに基づく言動が他者に対してよくない影響を与えていないか、それに気づくことが重要なのです。

自分の言動が周囲との人間関係や職場の雰囲気を乱していないか、仕事における自分自身の成長の妨げになっていないかなど、振り返ってみることが大切です。

アンコンシャスバイアスに対処するための3つのステップ

アンコンシャスバイアスに対処するには、自分自身で物事のとらえ方の傾向や思考のクセ、思い込みに気づくことが必要です。とはいえ、無意識のうちに起こるものですから、自分のアンコンシャスバイアスに気づくことは難しいものです。
ここで、アンコンシャスバイアスに対処するための3つのステップをご紹介します。

知る

まずは、「アンコンシャスバイアスというものがある」ということを知ることから始まります。

気づく

自分のアンコンシャスバイアスに気づく方法として、「記録して振り返る」という方法をご紹介します。

1日または過去を振り返って、思わず感情的になってしまった出来事、自分の言動で相手を不快にさせてしまった出来事、良かれと思ってとった言動に対して周囲の反応が思わしくなかったことなどを思い出し、自分の言動と周囲の反応を書き留めていきます。

それを数週間続けてみてください。書き留めたメモを振り返って見ると、自分の感情のクセや思い込みによる行動パターン、発言のクセなどが見えてきます。

対処する

自分のアンコンシャスバイアスの傾向に気づいたら、なぜそう思ったのか、なぜそのような行動をとったのか、自分自身と対話してみましょう。そこには古い習慣に根付いた思い込みや相手の属性や経歴だけで判断してしまったもの、相手をコントロールしたいといった欲求が隠れているかもしれません。
そして、自分のとった言動が適切だったのか、もし違う表現で相手に伝えるとしたらどう伝えるかなどを考えてみてください。
自分のアンコンシャスバイアスに気づき、改善すべき点を変えていけば、自分自身も組織も成長し続けることができます。自分の言動を振り返る機会を増やしていくことが大切なのです。
アンコンシャスバイアスは誰にでもあるもの
アンコンシャスバイアスは誰にでもあるものです。もちろん相手にもあります。
相手のアンコンシャスバイアスに気づいたら、「自分にも似たようなアンコンシャスバイアスはないだろうか?」と振り返るきっかけになります。相手のアンコンシャスバイアスを「それはあなたのアンコンシャスバイアスです!」などと一方的に指摘するのではなく「なぜそう思ったのですか?」と、丁寧に会話を重ねてください。会話を重ねることでお互いのアンコンシャスバイアスに気づき、対処できるかもしれません。
ネガティブに受け止めず、相手との対話を通じて双方向のコミュニケーションをとることが大切なのです。

まとめ

アンコンシャスバイアスは、「無意識の思い込み」や「無意識の偏見」のことです。
アンコンシャスバイアスは誰にでもあるもので、自分にも相手にもあります。
あること自体は自然なことですが、アンコンシャスバイアスの偏りが大きいと、状況の変化に対応できなかったり、無意識のうちにとった言動が周囲に予期せぬ影響を与えたりします。

人間関係は複雑で繊細なものです。
ささいな言動から、せっかく築いた信頼関係が一瞬で崩れてしまうことがあります。自分の言動による周囲の反応、相手の表情など、ちょっとした変化に気づく習慣をつけましょう。

そして、自分のものの見方やとらえ方の傾向、感情からくる言動のクセ、長く根付いている思い込みなどに気づき、対処していくことが大切なのです。

自分のアンコンシャスバイアスに気づいたら、どのようにすれば良かったのか、どのような表現で相手に伝えるのが適切だったのかを振り返って考え、次の行動に生かしていくと良いでしょう。