【ウェビナーレポート】7/21開催【豊田通商グループ挑戦事例】価値創造・変革を実現する次世代経営人材育成の成果と課題とは?

2023年9月21日

2023年7月21日、ウィルソン・ラーニングは「【豊田通商グループ挑戦事例】価値創造・変革を実現する次世代経営人材育成の成果と課題とは?」と題したウェビナーを開催しました。

本ウェビナーでは、ウィルソン・ラーニングが半年以上にわたり育成施策を伴走した豊通ヒューマンリソース株式会社 浅野 英二 様にご登壇いただき、次世代経営人材の育成施策の取り組みと実践プログラムから見えてきた成果と課題についてお話しいただきました。
さらに後半では、ウィルソン・ラーニングの三浦がモデレーターを務め、インタビューセッションや参加者の皆様からの質問をもとにしたQ&Aを実施しました。

登壇者プロフィール

浅野 英二 様
豊通ヒューマンリソース株式会社 組織・人財開発部

電気機械器具(公共システム関連)メーカーにて営業、人事(採用・教育)、品質保証、情報システム部門など経験。2013年より豊通ヒューマンリソースにて、組織開発・人材育成施策の企画、開発、ファシリテーションを手掛ける。2018年からは豊田通商(株)人事部D&I推進室に出向し、組織変革活動(いきワク活動)推進に従事し2023年4月に帰任。豊田通商およびそのグループ企業の次世代リーダー、経営層向けをはじめとしたさまざまな対象者への研修の企画と実施に取り組んでいる。

三浦 英雄
ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社
執行役員 事業開発室長 兼 ”イノベーション・イネーブルメント”事業ディレクター
“越境リーダーシップ”プロジェクト ファウンダー

2012年に共創型実践研究「越境リーダーシップ」プロジェクトを産学連携で設立。
想いを起点に、既存の枠組み(組織、事業領域、国)を“越境”し、異分野との共創関係を構築して社会的価値創造を実現するリーダーシップ、イネーブルメント、組織文化の実践研究をアカデミア、実践者、クリエイターと共に取り組む。
企業における個人の想いを起点とした社会的価値創造の実践、持続的な価値創造が生まれる組織文化の創造、価値創造イネーブルメントの実装を多数手がける。

開催概要

  • 次世代経営人材育成のお取り組みについてのプレゼンテーション(豊通ヒューマンリソース 浅野様)
  • ウィルソン・ラーニングによるインタビュー
  • Q&A

豊田通商グループの抱える経営人材課題

豊田通商グループは1948年に設立、現在ではグループ会社総数1,000社(※2023年4月時点の連結会社数)を超える大規模な企業グループに成長しています。人的資本経営の取り組みに力を入れ、2022年10月31日にはグループの親会社である豊田通商がアジアで2社目となる「ISO30414」の認証を取得。「4つの人事戦略の柱」を軸にGlobal Vision「Be the Right ONE」を掲げ、事業戦略・人事戦略の実現、次世代経営人材の育成に力を注いでいます。

しかし、企業の成長フェーズの進化に伴い、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーなどを支える新たな事業体を生み出しつつ、既存の関連会社の持続的成長をも支えていくだけの経営人材の育成・輩出は難題です。現在は親会社である豊田通商からの出向社員が関連会社の経営を担うことが多い中で、これからは関連会社生え抜きの社員が経営を担えるようになること、そのための経営人材としての素養の醸成が、豊田通商グループの持続的成長において不可欠となります。

TOYOTSU PROJECT STORY
https://www.toyota-tsusho.com/about/project/

これからの経営人材には“やり抜く力”が求められている?

これからの経営人材には何が求められているのか? 現状どのような不安を抱えているのか?
これらを調査する為に、2020年に国内関連会社の現任CEOに将来の経営人材の確保・育成に関する意識調査を実施。その結果、約7割が不安を抱えており、現任CEOとして後継者をどう育成していくのか危機意識を持っていることが明らかになりました。

また、経営人材が持つべきスキルについては、
「組織マネジメント・人材育成スキル」(約87%)
「戦略・財務などのビジネススキル」(約75%)
「人心掌握・D&Iリーダー、イノベーションへの柔軟性」(約64%)
が挙がる一方で、約70%が「やり抜く力・精神力」を期待するという結果が出ました。

この結果を受けて浅野氏は、「現任CEOがこれからの経営人材に対して『やり抜く力』が必要だと考えていることは、興味深かった」と述べています。

過去の取り組みから得た教訓

豊田通商グループでは親会社に倣い、2014年から2016年にかけて、新規事業開発をメインとする『イノベーション育成塾』、既存の自分の殻を破り経営課題解決に取り組む『破殻塾』と称した、関連会社向け次世代リーダー/幹部候補育成プログラムを導入した経緯があります。

研修の場で習得した戦略・マーケティング・財務などのビジネスフレームワークを自らのテーマに当てはめて考えるアクションラーニングを実施し、受講者からも概ね好評でした。
しかし、残念ながら受講後に自社での実践に至っていない、研修で扱ったテーマを自社に提案しても採用されない、という現状に直面し、「研修の成果物」としては有益だが自社での価値創造に活かされないという課題が浮上しました。

個人起点の価値創造とそれを支えるイネーブラーの存在が重要

「”やり抜く力が大事”だとされていながら、実際にはやり抜けていない。一体、何が起きているのか。やり抜けない原因は何だったのかを探究した」と、浅野氏は当時を振り返ります。
要因の一つではと思ったのは、選抜型研修参加にあたって「会社から指示されたテーマ」を取り上げていることでした。

「会社起点のテーマでは、困難に遭遇した時にどうしても他責の念が生じる。だからやり抜けない。やり抜くためには個人の想いが起点となったテーマであることが大事だと痛感した。VUCAと呼ばれる不確実な時代に、予定調和型でビジネスが進むことはそうそう無い。困難に遭遇したときにやり抜く力を発揮する為には、個人起点の価値創造は非常に大事である」と浅野氏は語ります。
さらに、「個人の想いを活かして組織の成果に繋げていくには、価値創造型リーダーの育成だけでは足らず、イネーブラーの存在とイネーブルメントな企業文化の醸成が併せて必要不可欠だと強く感じた」と心の内を明かしました。

そうした中、ウィルソン・ラーニングの価値創造イネーブルメントの考え方に出会い、深く共感した浅野氏は、過去の教訓を活かし、この2つを両輪で進めるプログラムを実現するためにウィルソン・ラーニングとタッグを組み、2022年に次世代経営人材育成プログラムを実現させました。

豊田通商グループにおける次世代経営人材育成プログラムの概要

プログラムは、「課長層向けプログラム」と「部長・執行役員向けプログラム」の2つの層を対象に実施。開催時期を揃えて両層から2名1組での参加を募り、合同開催日を設けるなど、両輪で同時進行するプログラムとしました。

運営上の4つの工夫点

また、個人の想いを引き出し、やり抜く力を養成するために、運営では4つの施策を実施しました。

  1. 受講者一人ひとりの状態やニーズを把握するために事前に提出してもらったエントリーシートをもとに個別インタビューを行い、丁寧にヒアリングを重ねた。
  2. 受講者同士でピアサポートができるように、受講者コミュニティ「ラーニンググループ」を設置。
  3. 価値創造/触発セッションでは、社外ゲストだけでなく、グループ内部(関連会社)における実践者をゲストに招聘。自分ごと化を図った。
  4. 取り組みテーマの選定や進め方に悩んだ際には、事務局がメンター役として伴走。

実施を通して見えてきた成果と今後の展望

プログラムの評価について、受講者・オブザーバーからの満足度は非常に高く「隔年ではなく、毎年開催して欲しい!」という声も上がっているほどです。

今後の展望について浅野氏は、「取り組みとしてはまだ初回でありPDCAを回している最中ですが、豊田通商単体で行われている経営人材育成プログラムとの接続をより強化していくことを検討しています。価値創造の取り組みの源泉となる志やパーパス、自分で自分をリードしていくセルフリーダーシップの醸成を強める取り組み、また、親会社と関連会社の人材が分け隔てなく学び合い高め合っていくようなプログラムを作りたい。第1期生の今後の活躍を調査し、個人の挑戦実現はもちろん、卒業生がどれだけ経営人材として実際に経営層入りしたかをKPIにして、より実効性の高いプログラムを構築していきたいです」と締めくくりました。

  • 黄色… 課長層向け価値創造プログラム参加者
  • 緑 … 部長・執行役員向けイネーブラー養成プログラム参加者
  • 白 … オブザーバー(各社の経営層・事業部門の責任者)

インタビューセッション

後半は、ウィルソン・ラーニング 三浦が今回のプログラムを企画した浅野様の想いやビジョン、受講者の変化についてインタビューを実施し、最後にウェビナー参加者の皆様からの質問にお答えいただきました。

Q.浅野さん自身がまさに挑戦者であり、挑戦者を支えるイネーブラーそのものだと感じています。今回のプログラム実施に至った原体験を教えてください。

浅野: 社名の通り、トヨタ自動車を源流とする我々ですが、社内に身を置くと、商社グループでありながら製造業的なコマンド&コントロール、あるいは部分最適、ある意味ではサイロ化した組織文化を感じることがあります。過去はそれが効率的に機能していたのでしょうが、同じ仲間同士なのに、親会社が機能移管先である関連会社を下に見たり(なので「子会社」とは言いたくない)、営業本部を跨いだ掛け合わせの価値創造が起きにくかったりと色々な弊害を目にする度に、もっと可能性があるはずなのにもったいないと感じていました。この組織体質を変え、次のステージにみんなで上っていきたいというのが一番の想いです。

関連会社の社員には現場を支えているという誇りや情熱があるのに、それが活かされていない。もっと社員一人ひとりが脚光を浴びて輝きながら活き活きと働いて欲しい、自分らしく働く喜びと幸せを感じてもらいたいというのが私の願いです。
関連会社の成長は親会社の成長にもつながります。企業の成長フェーズを考えた時に、自分らしさを解放して活き活きと挑戦していくことで良い循環が作れるのではないか、その一助になれたらと思い、今回のプログラムを企画しました。

Q.不確実な個人の想いに対してどのように向き合われたのでしょうか?

浅野: 豊田通商グループ、特に関連会社の人材の特徴として、非常に真面目で熱心、誠実であり、相手の期待に応えてしっかり仕事をする人が多いと感じています。これは我々の強みですが、その一方で、自らの意志で挑戦し価値創造する人がまだ少ないとも感じています。
顧客の要望や会社の方針に忠実に従い、実現させることを自分のミッションとし、評価や成果を得られることで喜びを感じているのなら健全ですが、それが「言われたから、会社の決め事だからやる」では、結果が出なかった時にどうしても他責になります。ですから、受講者とは何度も対話を重ね、「本当に自分の意志でテーマを選択しているのか?」「どのようなWillを持っていて、会社が目指す方向性とどう重なるのか?」など、気づきと個人の想いを引き出せるよう、講師のお二人と一緒に関わっていきました。

Q.受講者にはどのような変化がありましたか?

浅野:プログラム終了後、部門や組織を超えたビジネス共創に向けて始動した方、グループ会社で新たに役員に就任された方が生まれるなど、非常にパワフルなポテンシャルの変化を感じました。願っていた、嬉しい変化が現れています。

Q.イネーブラーとしての経営人材になるために大切なことは何でしょうか?

浅野:挑戦しようとする部下に対して、共感できることが最低限必要だと思います。まずは肯定して受容して尊重する。内容の良し悪しではなく、なぜそれをやりたいのか、その人ならではの想いや背景を受け止めることができれば、次に繋がる道筋が生まれてきます。
私自身、前職時代に新規事業を提案して挫折した経験がありますので、共感の大事さ、してもらえない時の辛さは痛感しています。挑戦する個人の想いをまずは会社として受容して尊重し、支援し続ける風土醸成が非常に重要だと思います。

Q.今後のビジョンや取り組みたいことを教えてください。

浅野:トヨタの工場には「よい品(しな)よい考(かんがえ)」という看板が掲げられています。ものづくりは人づくりから。何が「よい」なのかには色々な意味合いが含まれますが、よい考えのできるよい人こそがよい商品・サービスを作り、よい商品・サービスがよりよい社会を作っていく、この考え方が好きで、私はよい仕事をするためによい考え方ができる人を増やす支援をし続けたいと考えています。

仕事とは自己表現だ、というのが私の持論です。社員一人ひとりが自分らしく活き活きと働き、仕事を通じて喜びや幸せを得られるようなウェルビーイング(Well-being)を実現したい。豊田通商グループはサステナブルな社会を実現するリーディングサーキュラーエコノミープロバイダーでありたいと思っていますから、活き活き働く社員が増えることが豊田通商グループの成長に繋がり、そして社会への貢献に繋がることを心から願っています。

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