バーンアウトの原因や対処法を解説! ハイパフォーマンスの裏側にあるリスクを理解する

2021年9月21日

バーンアウトとは、それまで意欲的に仕事をしていた社員が仕事に対して無気力な状態となってしまうことです。
いったんバーンアウトが生じると回復には時間がかかり、休職や退職の事態に陥る可能性もあります。バーンアウトの原因と回避する方法を紹介します。

バーンアウトの症状

バーンアウトは「燃え尽き症候群」とも呼ばれ、仕事に対して意欲が低下する状態のことです。具体的な状態については、バーンアウトの測定において多く利用される「マスラック・バーンアウト尺度(the Maslach Burnout Inventory:MBI)」から、症状を紹介します。

MBIでは、バーンアウトを「情緒的消耗感」 「脱人格化」 「個人的達成感の低下」の3つの主症状から定義しています。

  1. 「情緒的消耗感」
    それ以前は仕事をこなしていた人が、急に燃え尽きたように意欲を失ってしまうこと
  2. 「脱人格化」
    仕事への対応がマニュアル的・無機的になること
  3. 「個人的達成感の低下」
    仮に業務を遂行しても達成感を得られないばかりか、自己否定感が強いなどネガティブな状態になること

バーンアウトに陥る人は最初から意欲のない人材だったわけではありません。むしろ、それ以前は、「優秀」だと周囲から認められ、生産性も高く、人並み以上に「頑張り屋」であるケースは多々あります。

バーンアウトが起きてしまうと、優秀な人材が休職や退職に至る可能性があり、会社の人材的損失が大きくなります。また、部署のメンバーの1人にバーンアウトが発生して生産性が落ちると、それを他のメンバーがフォローしなくてはならず、部署全体の生産性が落ちる可能性があります。

そのような事態を避けるためにも、バーンアウトの原因と対策法を知っておく必要があるでしょう。次章以降で、それらを紹介していきます。

仕事への前向きな気持ちだけでなく、企業に対する信頼や愛着心なども含む「従業員エンゲージメント」については、「エンゲージメントとは?その重要性と高めるメリット・施策例を紹介」で詳しく紹介しています

バーンアウトの原因

バーンアウトが生じる原因を「個人的要因」と「環境的要因」の2つの側面から解説します。

  1. 個人的要因
    個人的要因は本人の性質や気質といった側面です。
    まじめで仕事に対して一生懸命な社員はバーンアウトに陥りやすい傾向があります。頑張り過ぎることで気持ちや神経をすり減らして消耗してしまうためです。
    また、自分への評価が厳しい、理想が高い若手社員もバーンアウトのリスクがあります。経験が浅い時代に仕事がうまくいかない時があるのは当たり前なのに、理想と現実のギャップに苦しんでしまうのでしょう。
    この場合は経験を積むにつれ、現実に即した対応ができるようになります。一時的な危機を乗り越えることができさえすれば、個人の成長とともにギャップが縮まり、バーンアウトのリスクも減っていくことが期待できます。
  2. 環境要因
    環境要因とは仕事内容や業務環境のことです。
    ここでは勤務時間の「長さ」や業務の「量」だけでなく、「質」が関係してきます。同じように「業務量が多い」「長時間労働」の状況だったとしても、裁量権がありスケジュールや作業方法を自分で調整できる場合と、与えられたスケジュールや手順を厳格に守らなければならない場合とでは、心理的な負担が異なるためです。
    「厳しいノルマ」「強要される仕事」など、上から一方的に与えられる仕事は、バーンアウトの要因となりやすいと言われます。また、慢性的な業務過多によって「仕事の達成感がない」「頑張っても疲弊感が残る」ような労働状態も良くありません。
    個人要因、環境要因ともに「ストレス」とも近い概念です。そのため、仕事とプライベートの切り替えが苦手な人はバーンアウトに陥りやすいと言えるかもしれません。仕事で生じたストレスをプライベートでうまく発散できなかったり、仕事上でのミスの指摘を「人格に対する批判」と混同してしまったりするリスクが高くなりがちだからです。

バーンアウトを回避するために重要なことは

バーンアウトには、社員一人ひとりの「仕事との関わり方」「業務内容」が密接にかかわっているため、回避を考えるためにはマネジメントする立場であるリーダーの存在が非常に重要です。

具体的な回避方法としては、部下の気質に応じたマネジメントを心がけることです。「頑張り過ぎる」「仕事とプライベートの切り替えが苦手」など、一人ひとりの気質を把握し、バーンアウトのリスクが高いと思われる社員にはこまめなコミュニケーションや適切なフィードバックでフォローします。

また部下の状態を見極めながら業務をアサインします。優秀な社員だからといって仕事が集中しないようにすること、役割を明確化して仕事にやりがいを感じてもらうことも有効でしょう。

生産性が高く成果も出している社員が、実は仕事に対しての充実感が薄い、自身の役割を感じられないなどの状態に陥っていることがあります。能力が高い社員や成果を出している社員が「優秀だから大丈夫だろう」「評価されているから問題ないだろう」と思われて適切なフィードバックを得られず、そのため成長実感を持てない状態になるケースです。このような理由で優績者が離職してしまうことは、企業にとって大きな損失です。リーダーには、部下の内面まで見極めたマネジメントが求められるのです。

リーダーのコミュニケーション能力

適切なマネジメントを行うためには、リーダーが社員の状態を個別に見極めることが重要ですが、簡単なことではありません。必要な時だけ急に把握できるものではないため、日頃からのこまめなコミュニケーションが不可欠です。

また上下のコミュニケーションに加え、メンバー同士の横のコミュニケーションを図れる環境も大切です。チームにおいて風通しの良い雰囲気をつくることもリーダーの重要な役割と言えます。

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著者に聞く!アフターコロナに求められるリーダーのあり方とは

バーンアウトが生じた時の対処法

バーンアウトは予防が最善の策ですが、もしバーンアウトが生じてしまった場合は、社員のようすの変化を常にチェックするなど、細かな目配り、気配りが善後策になります。善後策となる社員への対応を具体的に紹介します。

レジリエンスの支援

バーンアウトの徴候が見られたら、それ以上進行しないよう、レジリエンス(回復)のための支援をします。

バーンアウトの徴候とは、たとえば「何のために働いているのかわからなくなった」「納得がいかない」「何もしなければ失敗することもないしこのままでいい」などの主旨を含む発言が見られることです。他には、仕事に対して以前はあった積極性が失われている、しぶしぶ従っているように見えるといったことも徴候と考えていいでしょう。

そういった言動の背景には、方向性喪失感や自己喪失感、無気力感などがあると考えられます。バーンアウトの徴候が見られたら、以下のような支援を行います。

  1. 方向性喪失感に対する支援
    「自分はどこに行き、どう働くことになるのか」など、将来の方向性を見失った状態です。一緒に目標を確認したり、その人への期待を伝えたり、役割を明確にするなど、方向性を明らかにするサポートをします。
  2. 自己喪失感に対する支援
    以前と比較して働くことに対する喪失感が強い状態です。その人の重要性と期待する役割を言葉で伝えたり態度で示したりして、自信を取り戻してもらうように働きかけます。
  3. 無気力感に対する支援
    意欲が落ち、「このまま何もしないでおこう」と感じる状態です。その人の貢献が会社の将来性に関係することを言葉で伝えたり態度で示したりして、モチベーションを取り戻してもらうよう働きかけます。

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バーンアウトで休職した場合のフォロー

バーンアウトは、症状が進むと強制的に仕事との距離を取らなければならないことがあります。業務の軽減やフォローでは状態が回復しないと判断したら、退職に至る前に休職を検討します。

その際、バーンアウトの症状や回復までにある程度の時間がかかることを周知し、十分な休職期間を確保します。さらに、社内に残ったメンバーに対して該当社員の休職の必要性を説くことによって、休職に対する理解を促します。これらの働きかけによって、バーンアウトした社員が復帰しやすい環境を整えることができるでしょう。

徐々に復帰させる、復帰時の職種を検討する、復帰時の不安をていねいにヒアリングするなど、無理のない職場復帰プランを作成します。

バーンアウトの原因や対処法を知り、人材損失を回避しよう

バーンアウトにより休職者や退職者が生じてしまうと、企業の人材的損失が大きいだけでなく、社員本人も不本意なはずです。また、組織全体のエンゲージメントにもマイナスの影響を与えるでしょう。

「頑張り屋」「まじめ」「誠実」など、本来社会人として好ましい要素がバーンアウトの原因にもなり得るのも注意したい点です。会社やリーダーは、本人が気づかないままバーンアウトの状態に陥ることがないよう留意しなければなりません。社員の心身の健康を守りつつ、貴重な人材の損失を回避していきましょう。