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ハウス食品株式会社は、食品の製造・加工・販売を行う大手食品メーカーです。カレー、シチュー、スパイス、デザート、菓子などの香辛・調味加工食品事業に加え、健康食品事業領域の製品の国内家庭用販売を一手に担います。
1913年創業以来、長年培ってきた技術とノウハウを生かし、食を通じてお客様の食生活と健康に貢献し、安全で価値のある商品を提供し続けています。
経営戦略に沿った組織風土への変革に挑戦する一方で、新たな組織風土をどのように浸透させればよいのか悩んでいる企業の人事担当者もいらっしゃるのではないでしょうか。
ハウス食品株式会社は、2025年3月期から2027年3月期の3ヵ年を対象とする「第八次中期計画」に沿った営業変革に取り組んでいます。
昨年、社員一人ひとりの自発的な行動を促し、自走できる強い営業組織を作るための施策として、「価値創造イネーブルメント」プログラムを導入いただきました。
前回の挑戦事例インタビューでは、目指す組織の姿や導入に至った経緯、さらに受講者の想いを取材しています。
この時は、プログラムの導入はサプリメント的な位置付けであり、結果が出るのは少し先になるというお話でしたが、導入から半年が経ち、営業本部のエンゲージメントが飛躍的に向上するという驚くべき結果が出ました。
なぜ、組織のエンゲージメントは大きく向上しつつあるのか、イネーブルメントがどのような効果をもたらしつつあるのか、全社をリードする熱量を持った組織へと進化する取り組みの軌跡を取材しました。
データが示す営業本部の現在地、定量×定性で見る組織の変化
営業変革への取り組みは「道半ば」ということですが、実は、ハウス食品グループが独自に実施している組織風土診断において、3ヵ年比較で営業本部のエンゲージメントが飛躍的に向上しています。
組織風土診断は、社員一人ひとりが、所属する会社や組織が目指す組織風土になっているのかを評価するもの。「多様性を受け入れ、チャレンジを後押しする組織風土」醸成のためのチェックプロセスの起点となり、年次の肯定回答率が前年を上回りながら、組織コンディションを引き上げていくことを目標としています。
今年度の営業本部の全設問の平均肯定回答率は前年度の71.8%から77.5%に上昇し、ハウス食品グループ全社平均の肯定回答率72.8%を超えています。
また、もともとの強みであった、人間関係・信頼関係・協力体制に関する回答では、前年度91.0%をさらに上回る94.0%という高い結果が出ています。信頼関係と強固な協力体制という強みをさらに強化し、組織として誇れる強さに昇華していることがうかがえます。
チャレンジを後押しする仕組み・環境においては、これまでは全社水準を下回っていましたが、今回は超える結果となりました。

オレンジ色:グループ企業含む全社、黄色:事業会社ハウス食品の全社、緑色:ハウス食品営業本部
さらに、イネーブルメントと親和性の高い、「新しい方法や改善の賞賛」「大小問わず新しいチャレンジにやってみようという雰囲気」「良い仕事や特別な努力に対するタイムリーな感謝」に関する肯定回答率は、いずれも80.0%台へ上昇。
組織内の関係性や対話が良好なだけでなく、個人の想いを伴った内発的動機を引き出すイネーブルメントが実践され、組織に浸透している様子がうかがえます。
また、働きがいについては、「個性を発揮しながらいきいきと働いている」は69.0%から79.4%へ上昇、「変革に向けたチャレンジが後押しされ、皆が前向きに働いている」は66.7%から74.4%へ上昇し、全社の肯定回答率を凌駕する結果が出ています。
組織の状態は、定量・定性ともに着実に上を向いており、働きがいや変革推進を含む総合的なエンゲージメントにおいて全社をリードする組織へと進化しているようです。
一体どのように変革を推進していたのか、これまでの取り組みの軌跡とイネーブルメントを浸透させるための秘訣について、営業本部 営業企画推進部 営業企画二課長 西山様にお話をうかがいました。
エンゲージメントが全社平均を抜いた理由
- 【Q】前回のインタビューでは、取り組みの結果が出るのは少し先になるとのお考えでしたが、営業本部のエンゲージメントが飛躍的に上昇しています。この結果についてどう思われますか?
はい、正直、私も驚いています。
マネジメント変革の現在地を把握する目的で、組織風土診断、ストレスチェック、1on1の質に関する定点調査、多面診断(360°調査)の結果を統合して分析し、定量と定性の切り口で検証したところ、いずれも営業本部のエンゲージメントは上昇傾向にありました。
仕事に対する意欲や意義、働きがい、組織方針に対する共感、人間関係、意思疎通の充足感、上司サポート、傾聴における充足感など、どの切り口から見ても上昇傾向にあり、組織のモチベーションが上がっていることがわかっています。
なかでも、チャレンジに向けた支援とアドバイスのエンゲージメントが一昨年比で10%近く上昇していることからも、対話の質が上がり、イネーブルメントが効いてきているのだと前向きに捉えています。
- 【Q】イネーブルメントの実践は、組織にどのように浸透していますか?
インプットとフォローアップの二度の学習機会を経て、対象階層全員が理解と実践に励んでいます。
日常的にイネーブルメントというキーワードが出て会話が通じるようになり、意思の疎通や意図が伝わりやすくなったことからも、着実に浸透している実感があります。
また、取り組みを風化させないために、営業活動上の繁忙期を避けた読みやすいタイミングを図って、毎月1回、「イネーブルメント通信」を発信しています。
ライトなタッチのメルマガのようなものです。お昼の休憩中に読んでもらうことを前提として、12時1分や5分にメールを送るという工夫をしています。
11月のフォローアップセッションで「読んでますよ!」と声をかけてくれたマネージャーもいて、個々の意識に届いていることを実感しました。
双方向のインプットが相互理解を促進。変革の鍵は地道な土台づくり
- 【Q】イネーブルメントが順調に浸透している成功要因は何ですか?
プログラム内容の質が高いだけでなく、受講者の日々の業務に近く、共感性や納得感が高かったことが効いていると思います。
複数の受講者から「今まで受けた外部研修の中で一番自分にとって近しいもので面白かった、楽しかった」という意見が寄せられたのはとても印象に残っています。
なかには、「西山さん、これ使ってますよ!」と、イネーブルメントパターンカードをクリアファイルに入れて携帯している姿を見せてくれたマネージャーもいました。カードを見ながら実践していると聞き、やらされ感なく純粋に取り組めていることが非常に重要であると感じています。
最大の成功要因は、同一内容のインプットを所課長層とTM層で共有したことにより、職場内の共通話題化が進み、浸透が加速したことです。
片方のみの受講では相互理解が得られず、取り組みは浸透しません。所課長層からTM層に内容を伝えるにしても、イネーブルメントの概念を伝えるには労力がかかります。
反対に、TM層が受講して所課長層が受講していない状態では、具体的に何をすればいいのか分からず、共感が得られない。
当初から今年度の実装キーワードは「イネーブルメント」と「ミドルアップダウンマネジメント」だと伝えていました。そこを理解してもらえたことが、浸透の速度と理解の質の向上に繋がったと思います。
- 【Q】前期から変革のための下地づくりを行っていたそうですが、具体的にどのような施策を行われたのでしょうか?
八次中計の一期目にあたる前年度は、マネジメント変革に向けた下地づくりとして、部署長/所課長/TM各層のマネジメントにおける実情と課題の洗い出しからスタートしました。
営業本部のTMに対する期待役割の伝達が不十分で、コミュニケーション不足によるエンゲージメントの停滞が課題認識であり、前年度から当事者意識の醸成に取り組んできました。
「マネジメントのリテラシー」や「あなたたちも当事者」というメッセージを段階的に伝えていくなかで、全国所課長会議、TMサミット(各層毎に対面で集う会議体)の場を活用・新設し、対面でディスカッションする場を設けたところ、マネジメントにおける日々のありのままの実情を広く深く、現場サイドから教えてもらうことができました。
継続してほしいというリクエストがあった上で、今年度の「マネジメント変革学習会」「イネーブルメントワークショップ」「イネーブルメントフォローアップセッション」に繋げています。
他にも、二期を通してさまざまな施策を実施していますが、マネジメント変革の核となる施策をウィルソンラーニングに支援いただいた反響は大きかったですね。
浸透させるための下地作りからていねいに実施してきたことで、当初、思い描いていたロードマップ通りに推進できたという自負はあります。
強制はNG!小さなチャレンジも称える奨励制度
- 【Q】さまざまな取り組みを経て、新たに見えてきた課題はありますか?
人のモチベーションの核は目に見えないため、イネーブルメント行動が部下に伝わっているのか、行動変容を促せているのか、手応えや実感が湧きづらいという課題はあります。
また、特にバックオフィスのメンバーは自らの実務プロセス上創意工夫したアクションを「チャレンジ」とは認識しづらく、今まで業務上重要視してきた「失敗しない」「Noミス」を目指す、すなわち「できてあたりまえ」と捉える価値観が、今求められる変革に向けた挑戦の「可視化」の障壁となっている場合があります。
そこで、日々の業務の中で埋もれてしまっているチャレンジを「れっきとしたチャレンジ」と認識するために、「チャレンジ賞」の導入を推進しています。
- 【Q】チャレンジ賞はどのような取り組みですか?
チャレンジ賞は、チャレンジの大小や成否に関わらず、チャレンジに取り組む姿勢や志の高さ、チャレンジすることの大切さを示す事例を集めて、仮に失敗したとしても次につながる経験の蓄積になることを認め、褒め称える取り組みです。
以前からグループ全社には導入されていた、人材部門主管の既存の仕組みですが、営業本部では今ひとつ機能していませんでした。
奨励の機会創出により、チャレンジを支援する風土を強化する目的で営業本部にも今回本格的に導入してみることにしました。
私としてはこの2年間の取り組みストーリーにおいて、まさに今この仕組みを入れる合理性があると判断しました。
各課のメンバーには、自分のチャレンジを他者へ伝えたい、知らせたいという内発動機を基に、どんな小さなチャレンジでもいいので、アクションを起こしてエントリーしてほしいと思っています。
エントリーにあたっては、所定の帳票に自身のチャレンジ内容を言葉にして書き出します。アウトプットされた内容を介して、チームコミュニケーション、特に個々の日々の頑張りに対する相互の前向きな声の掛け合いが行き交うことを企図しています。
理想の状態に至るためには、部課長、TM層によるイネーブルメント・マネジメントが必要です。ただし、強制した時点でイネーブルメントは論理破綻しますから、本人にとって少しでも「やらされ感」「やっつけ感」が出るようであれば、エントリーを控えてほしいと伝えています。
- 【Q】変革への挑戦は順調に進んでいるようですね。西山様のご経験から、変革の推進や新たな組織風土を浸透させるための秘訣を教えてください。
これは私の経験則ですが、人事が発信する全社に最適化されたメッセージでは限界がありますし、正しいことを正しく言っても広がらないと思っています。
全てがそうだとは言いませんが、人事と事業現場の間に横たわる「伝える」と「伝わる」の狭間の大きな溝や、その溝にこぼれ落ちてしまう大事なものを、私自身は過去の人事経験から痛感してきました。
部門間の対立構造には生産性がなく、当事者意識の醸成や新たな組織風土の浸透は難しいでしょう。
本社のメッセージを現場に翻訳し、現場の声を対等にフィードバックする建設的なコミュニケーションを担う存在が必要です。そのためには、経営、人事、事業部をつなぐHRBP(Human Resource Business Partner)を設置するのが有効だと思います。
骨太の営業組織を目指し、来期の重点テーマは「アイデンティティの再定義」
- 【Q】来期は八次中計の最終年度になります。今後の構想や展望を教えてください。
来期以降の重点テーマは、次の中計に向けた営業組織のアイデンティティの再整理・再定義とリニューアルです。
ハウス食品が将来にわたりすべてのステークホルダーのグッドパートナーであるために、ハウス食品の営業とは何なのか、どこを目指しているのか、マインドセットも含めたアイデンティティの再定義が命題だと思っています。
社員は皆、責任感が強く帰属意識が強い反面、無理が生じてでも「自力でやりきってしまおう」とする点で、人に頼るのがやや苦手な側面があります。
自前自走主義で進めていると、一人相撲のような盲目的かつ蛸壺的な発想に陥りますから、自分たちを客観視することが強く求められてくると思っています。
変化に対してよりポジティブにフットワーク良く動き出せる組織になっていくためにも、社外の知見をいただきながら、「外から見たハウス食品はどう見えるのか?」という問いは常に持ち続けていたいと思います。
高まる人材流動性を前提として捉えて、働きがいの高まりが市場競争力になるような骨太の営業組織を目指し、来期以降も充実した組織風土のさらなる実現に向けて取り組んでいきます。

