
JA共済連は、全国共済農業協同組合連合会の愛称であり、全国のJA(農協)グループで「共済(保険)」の領域を担う組織です。生命保障と損害保障を兼ね備えた「ひと・いえ・くるま」の総合保障を提供しており、JAの共済事業を全国組織として統括・バックアップしています。東京都に全国本部を設置し、47都道府県に都道府県本部を設置しています。
課題・背景
- これまでLAトレーナー向けには、「何をすべきか(ToDo)」を学べる研修はあったが、指導スキルを学んだりマインドセットに寄与する研修がなかった
- LAトレーナー個人の力量により支援方法にばらつきがあり、LAの接し方に悩みが生じている
- 具体的な支援方法を体系化して全国標準モデルとして展開したい
支援内容
- JAグループの組織構造やLAの活動を理解した上で、寄り添った伴走を行う
- 全国の優績LAトレーナーにヒアリングを行い、成果につながるプロセス・スキルを整理して体系化
- 本展開前にパイロット版を実施。課題を把握して改善を重ねる
JA共済に関する専門知識を持ち、組合員や地域の利用者の生活設計をサポートする専門スタッフをライフアドバイザー(LA)と呼びます。そのLAの成長を支援する重要な役割を担うのがLAトレーナーです。
ウィルソン・ラーニングは、1993年よりLAおよびLA育成者向けの研修開発を支援しています。このたび、LAのさらなる成長支援とLAトレーナーに求められるスキルの標準化を目的として、LAトレーナー向け研修「J-Trainers」の開発支援をさせていただきました。
導入に至った経緯や取り組みの効果について、人材育成企画グループ 課長 野田 俊樹 様、調査役 山岸 竜也 様にお話を伺いました。
課題・背景
■不足していたのは支援者としての心構えと支援方法を教える研修
- 【Q】所属する組織の役割を教えてください

野田:JA支援実践部は、全国共済農業協同組合連合会(JA共済連)の全国本部に置かれている組織・部署の一つであり、各地域の農業協同組合(JA)や職員に対して共済事業の推進活動をサポートする役割があります。部内には、実際に研修を行うインストラクターのグループや、税金や共済の保障内容などさまざまな知識も必要になりますので知識研修を行うグループもありますが、私たち人材育成企画グループは、研修の企画や研修以外の人材育成施策の検討・企画を主務としています。
- 【Q】どのような課題がありましたか?
野田:LAトレーナーは、組合員や地域の利用者の生活設計をサポートするライフアドバイザー(LA)を支援する重要な役割を担っています。既存のLAトレーナー向け研修は、開発から年数が経過しており、内容の見直しの必要性を感じていました。
山岸:従前の育成体系では、活動管理の方法といったLAトレーナーのToDoを学ぶ内容が中心になり、LAトレーナーとしての必要な心構えと考え方、指導の型を体系的に学ぶ機会が限られていました。そのため、具体的な支援方法が分からず、LAへの接し方や、成果が伸び悩むLAとの向き合い方に悩むLAトレーナーも少なくありません。
野田:行動管理はできても、結果に至るまでの行動プロセスをどう支援するかは、個々の考え方や経験値によって差が出ます。成長を支援するスキルを標準化し、全国のLAトレーナーが共通して育成の考え方や支援の型を学べるような新たな研修体系が必要だと感じて、J-Trainersの開発に至りました。
支援内容
■成果につながるプロセスに着目し、優績者の成功事例を収集
- 【Q】導入にあたり苦労した点をお聴かせください

山岸:J-Trainersの開発で私たちが重視したのは、単に知識を教える研修ではなく、現場で実践し、LAの成長を支援できる人を育てるための研修を作ることです。そのためには、どのタイミングで声をかけ、何を伝え、どのような問いかけをするのか、どのようにフィードバックを行うのか、といった具体的な支援方法を明確にして、体系化する必要がありました。
数ある育成手法の中から、成果につながるプロセスに着目した「プロセスコーチング」の考え方を研修の軸として設定し、全国の優績LAトレーナーの実践事例や知見を収集して整理するのに苦労しました。
J-Trainersは、一方通行の講義だけではなく、ケース討議やロールプレイなどを通じて、自分自身で考えながら学べる研修設計にしています。「何を教えるか」よりも「どうすれば現場で実践できるようになるか」という観点で、ウィルソン・ラーニングと何度も議論を重ねたことが印象に残っています。
■都道府県本部からJAまで、同じ熱量で届けていくための工夫とは
- 【Q】導入にあたり工夫した点を教えてください
山岸:私たちの組織構造では、全国本部が研修を作って都道府県本部に展開し、都道府県本部がJAに研修を行います。そのため、都道府県本部が実施・運用しやすい研修を作ることは常に意識していました。
また、JAへの講師をする都道府県本部の仲間も、この研修から部下育成や後輩との関わり方を学んでほしいという思いもありました。
そういった中で、開発に携わった私が登壇することで、研修の意図や想いが100%の純度と熱量で伝わりますし、そこからさらに同じ熱量で都道府県本部の方々からJAに展開いただくことが重要だと思っています。
J-Trainersを理解していただき、都道府県本部のどの担当者であっても一定の水準で実施していただけるように、「何を」だけでなく「なぜ」を押さえたインストラクターズガイドを作成して展開しています。
また、全国展開の前に一部のJAにてパイロット版を実施したことで、説明の滞りや、想定していた受講者の反応と実際の反応のギャップを解消して改善することができました。
急な要望にも柔軟かつ迅速に対応し、より質の高いものを作るために伴走いただけたので、ウィルソン・ラーニングを選んで良かったです。
効果・成果
■「すぐに実践したい」など、受講者からの高評価が励みになった
- 【Q】どのような成果・効果がありましたか?
山岸:研修を実施した都道府県本部の仲間から、「受講したLAトレーナーが「すぐに現場で実践して今後の活動に活かしたい」「先輩トレーナーの話が非常に参考になった」「他JAのLAトレーナーと悩みや考えを共有できて良かった」といった前向きな感想を多くもらっている」と聞いています。
とくに印象的だったのは、「これまで結果ばかりを見ていたが、行動のプロセスに目を向けることの大切さに気付いた」「LAに答えを教えるのではなく、考えを引き出す関わりを意識したい」という声です。
野田:プロセスコーチングについても、「フィードバックの大切さを実感した」「LAの気持ちを汲み取りながら支援する重要性を学んだ」「一方的に伝えるのではなく、LA自身に考えてもらうことの大切さに気づいた」といった声がありました。
山岸:受講者からの高評価は励みになります。J-Trainersを通じて、私たちが伝えたかった「LAの成長を支援する」という考え方が受講者に届き始めていると感じています。
J-Trainers全体像
受講者の声(抜粋)
【LAトレーナー】
【都道県本部】
■「指導する人」から「成長を支援する人」へ意識変革が起こり始めている
- 【Q】導入して良かった点をお聴かせください

野田:LAとして活動していたプレイヤーが、育成者・支援者になるためには、マインドチェンジが必要です。この点を、ロジカルに説明できているところが特にいいなと感じています。
山岸:J-Trainersを通じて、LAトレーナー自身が「指導する人」から「成長を支援する人」へと意識変革が起こり始めていると感じています。
野田:スキルとマインドの両輪でLAの支援方法を体系化した「J-Trainers」の導入により、LAトレーナーとして期待される役割や心構え、LA育成の考え方を体系的に学べる環境を整備することができました。
山岸:私たちの組織構造(全国本部、都道府県本部、JA)と、LAとLAトレーナーの関わり方の構造は近似しています。プロセスコーチングの考え方が浸透していけば、組織全体にも良い影響が波及していくと考えています。
野田:J-Trainersは人材育成において重要な施策であると位置付けています。今後も継続的に取り組んでいくためにも、J-Trainersの内容や成果を都道府県本部、JAに発信し、人材育成の必要性と重要性を啓蒙していく必要があると考えています。
■JAグループへの深い理解と寄り添った伴走がありがたかった
- 【Q】ウィルソン・ラーニングを選んで良かった点を教えてください

山岸:外部の委託会社に協力いただく際には、まず、JAグループの組織構造や事業理念を理解いただく必要があります。その点、ウィルソン・ラーニングには、LAの根幹となる新任LA研修をはじめとするさまざまな施策で支援いただいています。JAグループおよびLAの活動内容に深い理解があり、都道府県ごとの特性を汲み取った上で、私たちの理想に寄り添って伴走いただけたことが選定の決め手になりました。
また、こちらの意図を整理してきれいにアウトプットすることに長けている外部業者は数多ありますが、研修のプロであるウィルソン・ラーニングが作る資材はむしろシンプルで、でもいざやってみると、そういう方がやっぱりちゃんと伝わるということがわかりました。何が書いてあるかよりも、「どう伝えるか」が大事だという気づきを得られたのも良かったです。
あとは、研修のコンテンツを決めてから、資材を作りこむのがかなり速いと感じました。こういう方向性がいい、となったらすぐに作ってくれましたし、映像が必要とかメモ欄が必要とか、そういったことを先回りして出してもらえて、本当に楽でした。
野田:開発にあたり、全国の優績LAトレーナーへのヒアリングや活動分析を通じて、現場で実践されている知見を整理していただくとともに、その内容を研修として分かりやすく構造化する部分で多大な協力をいただきました。
山岸:単なる研修制作ではなく、私たちと同じ熱量を持って一緒に考えて、議論を重ねていけたことで、「これからのLA育成のあり方を一緒に考えるパートナー」として最も寄り添って伴走していただけたことが非常に大きかったです。
今後の展望
■研修を持続するために、高い熱量でコミットする人材が必要になる
- 【Q】今後の展望についてお聴かせください
山岸:現在は、次期の施策に向けて準備を進めています。まだ導入の初期段階ですが、受講したLAトレーナーのその後の悩みや体験談、プロセスコーチングを活用した成功事例などを共有できる場を設けていきたいです。
ウィルソン・ラーニングには、研修開発だけでなく、組織内に同じマインドを浸透させていく方法や、高い熱量を持って取り組める担当者をどう育てていくかについても、知見や事例を共有していただけると心強いです。研修という枠を超えた、幅広い視点からの支援を期待しています。
野田:J-Trainersは非常に良い研修ですが、数年経てば、内容の見直しが必要になるタイミングがくるでしょう。「LAを支援したい」という想いは共通していますから、全国本部、都道府県本部、JAをつなぐ円滑なコミュニケーションを取りながら、高い熱量で普及していく職員が必要です。
私は、足元の課題だけ見て対応するよりも、将来を見据えた上で必要な人材育成施策を考えていくことが重要だと考えています。LAからLAトレーナーになり、支店管理者、本店管理者へと続くキャリアパスに沿った人材育成施策を考え、高い熱量を持って研修など人材育成にコミットできる職員を増やしていくことが、今後の課題だと考えています。
研修をきっかけに意識が変わり、組織を変えていく人もいます。組織の皆が同じ方向を向いて、笑顔で働いている組織づくりを目指して、私たちのグループにできることを実施していきたいです。
