カスタマージャーニーの基礎知識を徹底解説!

2020年12月15日

マーケティング戦略において、顧客の行動心理やどのようなプロセスをたどって購入に至るのかを理解することは非常に重要です。精度の高いマーケティング施策に欠かせないカスタマージャーニーについて解説します。

カスタマージャーニーとは?

カスタマージャーニーは、顧客がどのようなきっかけで自社の商品・サービスを知り、どのようなタイミングで購入を検討し、意思決定に至るのか、「行動」「思考」「感情」などの一連のプロセスを旅にたとえて可視化したフレームワークです。

顧客の購買行動や購買心理を可視化することで、顧客接点のどのタイミングにどのようなメッセージでアプローチを行うと効果的なのか、より精度の高い戦略を立てることができます。

カスタマージャーニーの目的とメリット

マーケティング戦略を実行する上で、カスタマージャーニーを作ることには次のような目的とメリットがあります。

1. 顧客の行動に合わせたマーケティングの実行

スマートフォンの普及により顧客の購買行動は多様化しています。数十年前であれば、テレビ、ラジオ、交通広告、新聞や雑誌などが主要なメディアであり、企業側からの一方通行のコミュニケーションが主流でした。しかし現代では、WebサイトやSNSなどさまざまなチャネルに顧客接点が広がっています。
一方通行のコミュニケーションだけではなく、顧客と企業の双方向のコミュニケーションが求められるなか、「顧客が今何に興味を持っているのか」「どのチャネルに重点を置いてアプローチすることが効果的か」など、顧客の行動と心理を図式化して把握することで、顧客の行動に合わせたマーケティングを実行することができます。

2. 顧客視点の戦略立案

技術の進化により、収集・分析できる情報量も増大しました。顧客の一連の行動を高精度で分析し、テクノロジーを活用して一人ひとりに最適なアプローチをすることも可能になっています。
顧客の商品・サービスの認知から購買に至るまでのプロセスのどのタイミングで、どのような感情に、どのようなチャネルでアプローチするのか、顧客視点で戦略を立てることができます。

3. 顧客の共通認識確立と意思決定の迅速化

マーケティング担当者だけでなく、プロモーション担当者や営業部門との間で意見が食い違う時や、そもそも想定している顧客像が異なることもあるでしょう。それぞれ効果的だと思い込んでいるアプローチ方法が異なると、意見がまとまらず、いつまでも先に進めない状態になってしまいがちです。たとえば、マーケティングが見込み顧客のリストを獲得しても、営業が納得していなければファーストアクションに結びつかないかもしれませんし、納得したとしても営業が行動に移すまでに時間がかかるかもしれません。
カスタマージャーニーを可視化することで、顧客に対する共通認識を持つことができ、顧客への素早いアプローチにつなげることができます。共通認識があることで、顧客の一連の購買行動において、どのフェーズでどのようなアプローチをするのか、戦略の企画・立案・実行・検証の意思決定が迅速になります。

カスタマージャーニーマップの作り方

カスタマージャーニーをシンプルな図やイラスト、言葉を使って図式化したものをカスタマージャーニーマップと呼びます。カスタマージャーニーマップの作り方についてご紹介します。

1. ペルソナを明確に設定する

カスタマージャーニーマップを作るには、まずペルソナを設定する必要があります。
ペルソナについての詳細は、前回の記事をご参照ください。

2. カスタマージャーニーマップのゴールを設定する

ペルソナを設定したら、作成するカスタマージャーニーマップのゴールを決めます。
具体的には「認知」「情報収集」「問い合わせ」「購入」「リピート購入」などです。顧客行動のどのフェーズに焦点を置くかによって集める情報や採るべき施策は変わってきます。

3. カスタマージャーニーマップのフレームを設定する

カスタマージャーニーマップの作成のために収集した情報をマッピングしていくフレームを決定します。
よく使われるのは、横軸に購買プロセスである「認知」「興味・関心」「比較検討」「購入」を置き、縦軸に課題と施策である「タッチポイント」「行動」「思考・感情」などを置き、マッピングしていくフレームです。自社の商品・サービスの特徴やペルソナの特徴と照らし合わせて作成します。

4. 顧客に関する情報を収集する

フレームが決定したら、社内に点在している顧客情報や営業および各部門の持つ顧客情報を収集します。
Webから得られるデジタルデータの分析などの定量調査や、アンケートから得られる定性調査の両軸から情報収集しましょう。過去の問い合わせ、顧客システムに登録された商談・受注情報、展示会やセミナーで収集したアンケート、商品・サービスへの満足度調査、カスタマーサポートの対応履歴などのデータは有効活用できます。営業部門は顧客の行動パターンや思考パターンなど顧客の生の情報をマーケティング部門にインプットすることが求められます。リアルな顧客情報を反映してカスタマージャーニーマップの精度を上げるために、営業部門の協力は欠かせません。

5. マッピングする

顧客の行動、思考・感情など集約した情報を、設定したフレームに沿ってマッピングしていきます。
この時、特定の担当者の主観でマップを作成しないように注意してください。組織横断でメンバーを集め、ワークショップ形式で進めるとよいでしょう。営業部門であっても積極的にワークショップ開催を促す、ワークショップの場で積極的に発言する、議論をファシリテートする等の役割を果たすことが重要です。

カスタマージャーニーマップ作成時の3つの注意点

カスタマージャーニーマップを作成する時は、以下の3つの点に注意してください。

1. 企業や担当者の願望や理想像に偏っていないか

最も多く陥りやすいのは、カスタマージャーニーマップが企業や担当者の願望を強く反映してしまうことです。これを回避するには、組織横断で作成に取り組むこと、調査やデータに基づきファクトベースで情報をマッピングすること、明確なファクトでない部分は仮説検証のステップを挟むことが有効です。

2. 必要以上に詳細に作ろうとしていないか

精度の高いものを作成するには、顧客に関するより多くの詳細情報が必要です。作成には膨大な時間と工数がかかり、簡単に作れるものではありません。最初から詳細に作り込もうとしすぎず、まずは粗くても作成してみて、検証・検討を重ねてブラッシュアップしていくとよいでしょう。

3. 作成したことで満足してしまっていないか

カスタマージャーニーマップを作ることが目的・ゴールになってしまったため、完成したところで満足してしまい、その後更新しないケースがあります。ビジネスを取り巻く環境の変化は激しく、顧客の購買行動の変化のスピードも加速しています。一度作ったカスタマージャーニーマップは数年もたたないうちに現実と合わないところが出てくるでしょう。半期や1年単位などのスパンで定期的に見直す必要があります。営業の声や所感も取り入れて組織横断で意見を吸い上げ、必要に応じてバージョンアップできる仕組みを組織内に持つとよいでしょう。
また、大型広告や規模の大きいキャンペーン施策を行う時は、規模や予算に応じて適宜カスタマージャーニーマップを見直すのもおすすめです 。

まとめ

顧客の購買行動が多様化している現代では、商品・サービスの認知から購買に至るまでの顧客行動を旅にたとえたカスタマージャーニーを可視化することが重要です。カスタマージャーニーマップを作成し、社内の共通認識とすることで、より効果的なマーケティング施策の実施や迅速な意思決定が促されます。
営業にとっても、カスタマージャーニーが描けていることで、顧客が自社・サービスの購入検討のどのフェーズにいて、どのようなことに興味があるのか、という仮説に基づき営業アプローチを変えることができます。また、メールでの情報提供を取り入れる等、顧客のフェーズに合わせて営業活動を効率化するといったメリットを得ることもできます。

社内に点在する顧客情報、営業の所感、営業の持つ顧客のリアルな生の声を積極的に反映し、より精度の高いカスタマージャーニーマップを作成できるように進めるとベストです。