従来型の対面営業が難しくなったニューノーマル時代。Webマーケティングやコンテンツマーケティングが重要とわかってはいても、その細かい仕組みやそもそもどういうものなのか、よくわからないという営業部門の方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、コンテンツマーケティングの基本を知りたいけれど今さら人に聞けなくて困っているという方に向けて、コンテンツマーケティングの基本を、また営業部門としてコンテンツマーケティングをどのように理解し、活用していくべきか、をシリーズで解説していきます。
そもそもコンテンツマーケティングとは何か?
コンテンツマーケティングとは、自社の商品・サービスを知ってもらうために、読者にとって価値あるコンテンツを発信して潜在顧客や見込み顧客を見つけ出し、顧客のニーズを育成、購買を経て、最終的には自社のファンとして定着させることを目指す一連のマーケティング手法です。コンテンツマーケティングを成功させるポイントは以下の3つです。
- 価値あるコンテンツを作る
- 顧客を育てる
- ファン化する
コンテンツマーケティングで成果を上げるためには、この3つのポイントを押さえて実行していくことが大切です。
コンテンツマーケティングの歴史
コンテンツマーケティングは比較的新しい概念ですが、その考え方自体は古くから存在しています。
その事例は、紀元前4200年ごろに描かれた洞窟の壁画にさかのぼれるという説もありますが、ビジネスの世界で、最も古いコンテンツマーケティングの事例は、1895年にアメリカの農機メーカーである「Deere & Company」の「John Deere」というブランドが発行した雑誌「The Furrow」だと言われています。
「The Furrow」は農業器具のスペックや新商品情報などを掲載する製品カタログのような雑誌ではなく、顧客層である農家への情報提供を目的とする雑誌です。農家のための農業ノウハウや最新の農業技術の掲載、成功農家になるための秘訣など、商品の売り込みではなく純粋な情報提供に注力し、顧客との信頼関係を構築しました。ダイレクトに商品を売り込むのではなく、顧客が必要としている情報を提供することで顧客との信頼関係を構築するアプローチ方法は、後にさまざまな企業に影響を与えました。
なぜ今コンテンツマーケティングが必要なのか?
ウィズコロナ、アフターコロナと言われ営業活動に制限がかかっている今、従来の営業活動のままでは新規顧客の開拓、そして既存顧客の維持にも限界があります。
同業他社が顧客獲得のために凌ぎを削っているなか、企業自前の情報力に頼っているだけでは経営状態の雲行きも怪しくなっていくでしょう。リアルよりもオンラインが主流となったニューノーマル時代には、オンラインに注力したコンテンツ力が必要不可欠なのです。
価値あるコンテンツのきっかけは営業部門の持つ情報力
コンテンツマーケティングの目的は次の4つです。
- コンテンツを通じて潜在顧客の悩みや不安を解決する
- 潜在顧客が興味を持っている分野について新しい情報を伝える
- 価値ある情報を発信することで潜在顧客を惹きつけてファンになってもらう
- 最終的に商品やサービスの購入につなげる
これらの目的を達成する上で重要となるのが「読者にとって価値あるコンテンツを発信し続ける」ことです。価値あるコンテンツを作るには、自社の商品・サービスを誰よりも理解し、顧客との接点が一番近い営業部門の持つ情報力がカギになります。顧客がどのような課題を持ち、自社に何を求めているのか。そして、課題はどのように解決されたのか。営業の知る顧客のリアルな声をコンテンツに落とし込むことで、顧客にとって本当に必要な情報を発信することができるのです。
コンテンツマーケティングのメリット
コンテンツマーケティングを行うことで次のようなメリットが得られます。
■コンテンツを増やし続けることで顧客接点が増えていく
広く情報を発信することでユーザーに見つけてもらいやすくなります。対面営業のみでは実現できなかったユーザー層に情報を届けることも可能です。価値ある情報を発信し続けることで顧客との接点が増え、企業への信頼が醸成されていきます。
■潜在ニーズを顕在化し、顧客のニーズを育成できる
まだ顕在化されていない潜在ニーズを発掘し、潜在顧客を見込み顧客へと育成することができます。対面営業であれば1回のアポイントごとに多くの労力を要しますが、デジタルコンテンツは少ないリソースで顧客の状態に合わせた柔軟なアプローチを実現できます。
■長期的に見ると費用対効果が高い
マス広告やWeb広告に比べると比較的費用を抑えて制作することができます。コンテンツマーケティングは長期間にわたって運用していくものなので、相対的に見ると高い費用効果が見込めます。
■価値あるコンテンツの蓄積は財産となる
テレビ広告やCMとは違い、一度発信したコンテンツはインターネット上に残り続けます。魅力的で価値あるコンテンツはユーザーを惹きつける集客ツールとなり、自社の財産になるのです。
コンテンツマーケティングのデメリット
一方で、コンテンツマーケティングには次のようなデメリットもあります。
■制作・運営に時間と手間がかかる
コンテンツマーケティングで成果を上げるためには、ユーザーに支持される価値あるコンテンツをなるべく高い頻度で継続的に発信する必要があります。そのため、コンテンツの制作や運営にかかるリソースを確保する必要があります。
■Webマーケティング、SEOライティングなどの専門知識が必要
せっかくコンテンツを制作してもユーザーの目に触れなければ、その効果は発揮できません。ユーザーの心を掴むコンテンツを制作するためのWebマーケティングの知識や、特定のキーワードで検索した際に検索サイトの上位に表示されるSEOライティングなどの専門知識が必要になります。
■効果が出るのに時間がかかる
コンテンツマーケティングは広告のような短期集中型ではなく、長期的に取り組んでじわじわと効果が出てくるものです。そのため、すぐに効果が出るというものではなく、忍耐強く継続していくことが必要になります。また、コンテンツのアクセス数の変動が売上に直結するというものではなく、効果測定が難しいという面もあります。
さまざまなアプローチを実現する多彩なコンテンツの種類
コンテンツにはさまざまな種類があります。ターゲット層にあったコンテンツを選び、組み合わせることで、効果的なアプローチを実現することができます。ここではコンテンツマーケティングで使われるコンテンツの種類をご紹介します。
■動画コンテンツ……YouTube、Instagramなど
動画を使ったコンテンツはユーザーからの人気が高く注目を集めています。内容は、商品説明、サービス説明、使用方法のレクチャー、顧客視点の体験動画、デモ動画、音声配信などさまざまです。年代によっては、何かを検索する時にGoogleやYahoo!といった検索サイトではなく、YouTubeやInstagramで検索する方が多い傾向にあります。自社のターゲット層に合わせて配信するプラットフォームやツールを選ぶとよいでしょう。
■記事コンテンツ……ビジネスコラム、セミナーレポート、お客さまインタビューなど
文章で情報を伝える記事コンテンツは制作しやすく高頻度で発信できることが特徴です。多くの企業がオウンドメディアと呼ばれる情報発信のためのメディアを持ち、コンテンツマーケティングに取り組んでいます。ビジネスコラム、ビジネスブログ、セミナーレポート、社員インタビュー、お客さまインタビュー、対談記事、導入事例、ホワイトペーパー(独自の調査結果やエビデンスに基づいた情報)、e–bookなどがあります。
コロナ禍で注目を浴びるコンテンツマーケティングの潮流
ウィズコロナ、アフターコロナで注目を集めているのがウェビナーです。ウェビナーは「Web+セミナー」の造語で、Web上でセミナーを行うことです。ウェビナーを開催し、その一部を動画コンテンツとして配信したり、当日のセミナーレポートをコンテンツとして配信したりするなど、複数のコンテンツに展開することも可能です。最近では、ウェビナーに営業担当者が登壇するケースも増えています。営業現場で耳にする顧客の現場感あふれるテーマでの登壇や、セミナー開始前後や休憩時間に顧客と積極的にコミュニケーションを取り、信頼関係を築いているケースも多く見られます。
まとめ
企業がコンテンツマーケティングに注力するのは、自社の製品やサービスをまだ知らない顧客に見つけてもらうためです。価値あるコンテンツの制作・発信をとおして顧客との関係を構築し、顧客を育成し、ファン化することが重要です。ウィズコロナ、アフターコロナにおいては、コンテンツマーケティングと顧客のリアルの接点をどのように連携し、Webとリアルをどのように組み合わせて受注につなげていくかが肝になります。
特にBtoBにおいては、「リード」と呼ばれる見込み顧客をスクリーニングしてフィールドセールスへつなげる時に、数値だけでは測れない営業のリアルな声を定義に落とし込んでいくことが重要です。スクリーニングの条件に、成約につながりやすい顧客の特徴を加えていきます。そして、フィールドセールスのフィードバックから、良かった点や今後の課題、顧客のリアルな要望を洗い出し、コンテンツへとつなげていく。さらに、営業の持つ情報力とコミュニケーション能力をWebで活用してファンを育てていく……。この循環を強化していくことが大切なのです。