アフターコロナの新しい当たり前では、「営業とマーケティングの連動」が不可欠

2020年8月4日

世界各地で猛威をふるう新型コロナウイルス。いまだ収束の見通しは立っておらず、経済に与えるインパクトはリーマンショック以上とも言われています。先行きが見えないビジネス環境が日本企業に与える影響は非常に大きく、日本経済も危機的な状況を迎えています。業界によっては、業績悪化によるリストラや倒産に追い込まれる企業も増加しており、誰もが非常に厳しい局面と感じているでしょう。

コロナ禍で営業担当者が直面している課題

「顧客企業の業績が悪化し、仕掛かり中の案件が消滅してしまった」「これまで会えていたお客さまに会えなくなってしまった」「契約は継続しているものの受注額が減少した」といった悩みや課題に直面している営業担当者は多いのではないでしょうか。顧客側にも新規の投資や支出を控える動きが広まっています。また、大規模な展示会や来場型のセミナーは軒並み中止または延期となり、新規の見込み顧客を獲得する機会を失っている企業も多いと思われます。小規模の展示会やセミナーであっても、今までどおりに開催することは難しく、これまでの成功パターンが通用しなくなることが予想されています。

非対面では商談の「上流」工程が困難に

緊急事態宣言下に比べると状況は緩和されていますが、リスク管理の観点から多くの企業で対面での接触を避ける傾向が継続しており、直接会って商談を行うことは引き続き難しいでしょう。これまで回数を重ねることで作り上げてきた顧客との関係性を短時間で築き、ヒアリングを効率的に実施する必要があります。これまで以上に準備に時間をかけて営業の「上流」をより効果的に実施しなければ、提案率、ひいては、受注率まで下がってしまいます。営業活動が制限されることで、既存顧客のアフターフォローにも影響が出るでしょう。対面営業などこれまでの標準的な営業活動が困難になった今、もはやコロナが蔓延する前の状態に戻ることは期待できません。営業戦略やマインドセットを新たに切り替えていく必要があります。オンラインを活用した商談の実施、Web上でセミナーを実施するウェビナーの開催など、多くの企業は営業戦略の舵を転換し始めています。

アフターコロナ時代の成長戦略とは

コロナショックによる経済の低迷は長引く恐れがあります。低成長時代に加えて消費者の行動様式も変化しています。特定の商品の買いだめ、新規購入の買い控え、非対面化の希望など、コロナの影響は消費者の購買心理にも影響を与えています。このような状況下では、新規顧客獲得のみに依存した成長モデルの実現は困難です。企業が経済活動を維持し、成長していくためには、既存顧客のリピート率の向上、アップセルの向上が重要になります。

既存顧客のアップセルに注力する

新規顧客を獲得するためには、既存顧客の5倍のコストが発生すると言われています。マーケティング用語では、これを「1:5の法則」と呼びます。コロナ禍における新規顧客の獲得が困難な状況では、新規顧客の獲得にリソースを使うよりも既存顧客にリソースを使う方が有効です。既存顧客はすでに自社の商品やサービスを購入してくださったお客さまですから、顧客接点(タッチポイント)を増やしてリピートを促したり、上位商品やサービスをご紹介したりするなど、購入単価の向上、すなわちアップセルを狙います。

新規顧客獲得は従来よりも効率化が重要

一方、新規顧客へのアプローチとしては、より可能性の高い見込み顧客を発掘し、ダイレクトアプローチを行うなど、効率化を図ることが重要です。従来通りの営業活動を行うことができない現在、オンラインを活用し、マーケティングと連動した営業戦略に切り替えることで状況を打開している企業が出始めています。そうした企業の多くは、従来、営業が対面で行っていた新規名刺の獲得、ニーズの喚起、アポイント取得から受注までの工程にSEO(Webサイトを活用した集客)、前述のウェビナー、メルマガやホワイトペーパーといったオンラインのマーケティング施策を融合させています。SEOやウェビナー施策の実施により新規名刺獲得を、メルマガやホワイトペーパー施策によりニーズ喚起と有望顧客の発掘を、効率的に進めています。

今後の成長戦略を実現する顧客リレーションシップのあるべき姿

今後の成長戦略を実現するためには、自社の魅力をさらに高めることで市場における競争優位性を高め、顧客との関係性を深めていくことが重要です。企業と顧客がどのような関係性を構築していくことが自社にとって望ましいのか、今後の成長戦略も含めて立ち返ってみましょう。そして、顧客とのより良い関係性を築いていくために、自社のブランド力とカスタマーロイヤリティを強化していきます。

1. ブランドアウェアネスの向上

  • 認知率の改善
    市場における自社の商品やサービスがどれほど認知されているか把握していますか? おそらく営業部門やマーケティング部門など全社を通じても、自社ブランドの認知度を正確に把握している人は少ないのではないでしょうか。ブランド認知度は、どのくらいの人が自社ブランドを認知しているのか、競合に対してどのポジションにいるか、という2つの側面があります。認知率の改善には、コーポレートサイトやブランドサイト、SNSなどを活用してブランドの魅力を伝えるコンテンツを発信することが効果的です。ブランドアウェアネスを高めることで、そのブランドを指名買いする顧客やリピート購入する顧客の増加につながります。
  • 信頼の強化
    顧客の信頼はブランド力の強化につながります。質の高い商品やサービスを提供することはもちろん、ソートリーダーシップを通じたポジショニングの強化も有効です。ある特定の分野や社会問題に対して、自社の強みを活かしていち早く問題を解決することや、革新的なアイデアで業界の第一人者となるようなリーダーシップを取ることをソートリーダーシップと呼びます。強力なソートリーダーシップを発揮することは企業の信頼やブランドイメージの形成につながります。ブランドの魅力に惹かれた顧客は、熱心なファンとなるため、周囲にブランドの魅力を伝えてくれるコア・リピーターになる可能性が高くなります。

2. 顧客との新たな関係性の構築

  • エンゲージメントの向上
    ここで言うエンゲージメントは、企業と顧客との間に生まれる信頼関係を意味します。自社の商品やサービスに対して高い信頼性を感じている顧客は、その商品を長く愛用し、継続して購入してくれます。顧客エンゲージメントを獲得できれば、時代の流行や経済状況に大きく左右されることのない安定した売上が見込めるようになります。顧客エンゲージメントを向上していくことは、安定した長期経営のための重要施策になります。
  • カスタマーエクスペリエンスの改善
    カスタマーエクスペリエンスとは、顧客が商品やサービスを利用した時に感じる心理や感覚的な価値のことです。これは商品そのものや金額などの物質的な価値だけでなく、購入検討から購入後のアフターフォローも含めたブランドに関連するすべての顧客体験が対象になります。顧客満足度が顧客の不満や心理的欲求を満たすことに重点を置くのに対し、カスタマーエクスペリエンスは顧客の期待を上回る価値を提供することやサプライズなどの感動体験を生み出すことに重点を置きます。企業はさまざまなチャネルを通じて顧客と接点を持つことができます。顧客の行動に基づいてアクションを起こし、カスタマーエクスペリエンスを改善していくことで、顧客との良好な関係性を持続させることができます。

ブランド力を高め、新規顧客の獲得に成功しても顧客からの信頼度を高めることができなければ、リピート率は減少し、顧客は離れ、売上も下降します。顧客からの信頼度が向上すれば、LTV(Life Time Value=生涯顧客価値)の向上にもつながります。新しい当たり前の中で、企業が活動を継続的に維持し成長していくためには、顧客との関係性の構築、維持、強化を進めていくことが重要です。

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アフターコロナに求められるマーケティングと営業の連動強化