困難な状況にあってもそれを乗り越えていく力として、「レジリエンス」が注目されています。
人材開発に関する世界最大の会議 & EXPOとして知られるATD International Conference & EXPO(ATD-ICE)においても、「未来に向けて最も強化すべき能力の1つ」として示されています。
変化への対応力としてのレジリエンスは現代人の必須の能力と言えるでしょう。
この記事では、レジリエンスとは何か、注目されている理由、高めるための方法などを解説しています。
レジリエンスが高い人材の育成を検討しているみなさまの参考になれば幸いです。
レジリエンスとは
「レジリエンス」とは、工学や物理学の世界で使われていた言葉で、「はね返り」「復元性」「弾力」などの意味があります。
近年では、「折れない、しなやかな心」という心理学的な意味で使われることが多く、「困難な状況から立ち直り、適応できる能力」をあらわす言葉と定義されています。
これまでは「個人の回復力」とだけとらえられていましたが、最近は「組織全体の回復力」としてのレジリエンスが注目されています。
また、社員のレジリエンスを強化するためには、組織のリーダーがレジリエンスの必要性をよく理解し、強化のためのサポートを行う必要があることもわかってきています。
参考:レジリエンスとは – コトバンク
レジリエンスが最近注目されている理由
企業の合併や買収、あるいは人事異動や業務内容の変更などがあれば、労働環境が大きく変わることは避けられません。
また、各種ハラスメントや災害、テロなど、予期せぬ出来事が起こることもあるでしょう。
そのような状況では衝撃が大きければ大きいほど社員の動揺は大きく、パフォーマンスが低下しやすくなります。
そうした想定外の事態を避けることも重要ですが、避けられず直面した場合、一時的に下がってしまったパフォーマンスを素早く持ち直すためにレジリエンスが必要とされています。
これまでは「個人の回復力」とだけとらえられていましたが、社員全員のレジリエンスを高めるために、組織単位でレジリエンスを考えようとする企業が、最近増えてきました。
そのため、上述のようにリーダーがレジリエンスについて理解し、サポートすることが重要であるという考えも同時に広まっています。
レジリエンスの高い人の具体的な行動例や思考の仕方
社会が刻々と変化し、先が予測できないVUCAの時代において、柔軟な対応を可能とするレジリエンスは、個人にも組織にも必須の能力と言えます。
では、レジリエンスを発揮できている状態にするためには、どのような能力が必要とされているのでしょうか。
具体的な行動例や思考の仕方を紹介します。
事実を受け入れ目標の変更が柔軟にできる
トラブルや困難が生じた際、状況によっては目標を変えざるを得ない場合もあります。
その際に重要となるのは、起こった事実を正確に受け入れられるかどうかです。
部署異動になってしまったり、キャリアチェンジの必要に迫られたりした場合、悲観的になるばかりでは何もできません。
レジリエンスが高い人は、冷静に事実を受け入れます。
現状を理解した上で、今できることに焦点を当て、そこに集中することで、物事に柔軟に対処できるようにします。
広い視野を持っている
レジリエンスが高い状態とは、物事を広い視野でとらえられる状態です。
自分の発案した企画が通らなかった時などに、俯瞰的な判断ができなくなり、別の視点でアイデアを捻出できないことはよくあります。
トラブルが起こってしまうと、人はどうしても狭い視野でしか物事を考えられなくなるからです。
この場合、第三者の立場を想定して改めて考え直すなど、別の視点でとらえ直すことで新たなアイデアが浮かぶことがあります。
視野を広く持つことで、悩みや思考の渦にはまり込んでしまうことが防げるからです。
視点が変われば、おのずと解決策も見つかります。
自分に自信を持ち周りの人を信頼する力
自分は不当に評価されている、誰にも認めてもらえていない気がするなど、自分に自信がなくなり落ち込んでしまうことがあります。
そのような時に「自分はできる」「解決する能力がある」と自信を持つことができれば、自分の気持ちを制御し、適切な行動ができるでしょう。
また、人間関係はパフォーマンスに大きく影響します。
家族や組織内などで信頼がおける人に助けを求められるか、アドバイスをもらえるよう素直に働きかけることができるかどうかは重要です。
レジリエンスが高い状態にあれば、自分に自信を持って行動し、周囲の人を信頼して助けを求めることができます。人間関係は物理的な距離だけではなく、精神的なつながりが大切です。
組織のレジリエンスを高めるために
大きなトラブルや困難が生じた際、早急に組織を立て直すためには、個人のパフォーマンスだけでは乗り越えられません。
組織内においてはチームワークが求められるため、個人の心構えだけではなく、組織全体で取り組むことが必要です。
ここでは、組織のレジリエンスを高めるための方法を解説します。
チームのリスクマネジメント(トラブルを未然に防ぐ力)だけではなく、チームのレジリエンス(トラブルなどが起きた後にしなやかに戻る力)についても注目してみてください。
個人のレジリエンスを高める
組織のレジリエンスを高めるためには、まず、組織に所属する個々人のレジリエンスを高める必要があります。
トラブルや困難なことに遭遇すると、自分の中にある種の喪失感が生まれます。
これらの喪失感からくるネガティブな思考を停止し、自分なりにポジティブな思考に変換していくことで、マイナスの考えやものの見方から脱却することができます。
リーダーはメンバーの言動に日頃から注意を怠らず、ポジティブな思考を引き出すためのサポートを心がける必要があります。
従業員同士でアクションを起こす組織を作る
従業員同士でコミュニケーションを取り、自らアクションを起こすことのできる組織を作ることも、組織のレジリエンスを高める上で重要です。
部門の垣根をなくし、協力し合える企業風土を作り出しましょう。
何かトラブルが起きた時には、企業内で素早く情報共有することで、大事にいたらずにすむ可能性があります。
小さなことでも従業員が連携し合える組織であれば、有事にもいち早く困難を乗り越えられるでしょう。
社外とのネットワークを大切にする
社内の努力だけでは問題を解決できないことはもちろんあります。
日頃から社外とのネットワークを大切にしておきましょう。
ふだんあまり関わりのないサプライヤー・請負業者・政府など社外の関係者とも、良好な関係を築いておくことがトラブルが起きた際の自分たちを支えてくれる絆になるかもしれません。
レジリエンスの強化を意識した体制を整える
レジリエンスを強化するための体制をふだんから整えておくことが重要です。
そのためには環境が変化しても、それに対応できるメンバーを育成する必要があります。
しかし、レジリエンスは、意識し始めたといって、すぐに鍛えられるものではありません。
業務のクロストレーニングやジョブ・ローテーションの有効活用など、メンバーに必要な権限を与えて自立を促すことをお勧めします。
まとめ
組織全体のレジリエンスを高めることができれば、不測の事態に出遭っても全員で困難に対応することができたり、一時的に惑うことがあっても自分なりに状況を戻すことができたりと、弾力性のある態度を持って物事にあたることが可能となります。
そのためには、個人の心構えだけに頼るのではなく、組織全体としての取り組みとして考えていく必要があります。
まずは、レジリエンスに関する情報を集めることから始めてみてはいかがでしょうか。
ウィルソン・ラーニング ニュースサイトでは、レジリエンスに関する情報を配信しています。
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