ウィルソン・ラーニングは創業 60 周年を記念し、2025 年11 月 20 日に特別フォーラム「学びの未来 Beyond 60」を開催しました。
基調講演では、代表取締役社長 根岸 正州より、ウィルソン・ラーニングが掲げる新ビジョン「L×ETC 構想」 について述べ、AIとテクノロジーが拓く学びの未来について紹介しました。
ゲスト講演では、「L×ETC 構想」の実現に向けた戦略パートナーである有識者をお招きし、人的資本経営の深化や AI 時代におけるリーダー育成など、企業が直面する人材戦略の進化・課題に焦点を当てた未来の学びと組織づくりについて、ご講演いただきました。
会場には、組織開発、人材戦略、リーダー育成に携わる多くの方々にご来場いただき、満員御礼となった特別フォーラムの様子をレポートいたします。
代表取締役社長
根岸 正州

ウィルソン・ラーニングのミッションは、人や組織が、もてる力を最大限に発揮できるようにお手伝いすることです。創業以来、すべての人や組織が充実感を伴ったパフォーマンス(Performance with Fulfillment)を実現できる世界を目指して、人や組織の支援に情熱を注いでいます。
創業 60 周年を機に、「ラーニング(L)」を基軸に、教育機関との連携(Education)、テクノロジーの活用(Technology)、コンサルティング(Consulting)の3領域を強化する『L×ETC構想』を新ビジョンとして掲げ、「学びの未来」を創造することを目指しています。
ウィルソン・ラーニングは、単なる「ラーニング(L)」の会社に留まらず、次の10年を見据えて事業領域を拡大する方針です。
私は、教育とイノベーションの根幹には「愛」があると考えています。より一層の情熱を持って企業の課題解決に貢献していきたいと考えています。
成長モデル『L×ETC構想』の概要
E (Education)の領域では、教育機関との連携の強化を目指しています。
中高生向けに自己肯定感を高める「ウィルソン・ラーニング for Kids and Youth」の開発を始めています。また、社会人の学びを促進することを目的として、社会人向けプログラムと大学院単位互換方式を検討しています。
例えば、ウィルソン・ラーニングの研修プログラム受講で大学院の単位(最大約20単位)を取得、追加で約10単位を取得すれば修士号を得られる仕組みを構想中です。厚労省のリスキリング補助金(最大9割)活用により、企業の研修費負担の大幅削減が可能になると考えています。
T (Technology)の領域では、幅広い年代に対応した『AIティーチャー』、一人ひとりの学びによりそう『AIエージェント』と人材開発の掛け合わせに着目しています。今後10年以内に、AIティーチャーやAIメンターが普及し、企業や教育機関における学びのDXが加速すると予測しています。
C (Consulting) の領域では、HRコンサルティングを強化し、研修提供だけでなく、人材に関するあらゆる悩みに対応できる「伴走型パートナー」を目指しています。
また、教育テック大学院大学との単位互換、ベンチャー企業とのAI教育インフラ開発、アリゾナ州立大学サンダーバードグローバル経営大学院、アイディール・リーダーズ株式会社との提携など、オープンイノベーションを促進するために他社との戦略的パートナーシップを積極的に活用して、次世代の教育インフラの構築を目指しています。
ウィルソン・ラーニングと教育テック大学院大学の理事長兼務によるシナジー創出を目指す
私は、2025年4月に開学した、学校法人OCC 教育テック大学院大学の理事長を兼務しています。
教育テック大学院大学は、教育テックを活用し、教育現場の変革を推進するリーダーを育成する、日本初の教育DXと経営に特化したフルオンライン大学院です。
企業研修と社会人教育は親和性が高い一方で、両者の間には壁も存在します。学習者の学びを深めるためにも、大学と企業研修の間の壁を取り払い、シナジー創出を目指しています。
今後10年でAIメンターが普及、倫理的課題への対応が重要になる
教育テック大学院大学のロードマップにも示していますが、生成AIを活用したAIメンターやAIティーチャーは、今後10年以内に完全に普及するのではないかと考えています。
まずは、メンターやコーチ、講師をサポートする「AI for Teacher/Mentor」として導入し、蓄積したデータに基づいてAIが直接メンターやコーチングを行うモデルへと段階的に進化していくと予測しています。これは、AIがいきなりメンターやコーチを行うことで起こり得るリスクを回避するために必要な段階的進化だと捉えています。
企業におけるAI活用は、個人情報保護等の制約が多い学校現場よりも早く進むと予測していますが、AIの普及が進めば、AIリテラシーの強化、プライバシーとデータ保護、バイアスと公平性、透明性といった倫理的課題への対応がより重要になります。
AI時代における教育・研修の根幹には、人間ならではの「愛」が不可欠である
教育の本質には、他者や社会への貢献意欲、次世代へ繋ぎたいという、人間的な「愛」が存在します。この「愛」は恋愛的な意味ではなく、野中郁次郎氏(一橋大学名誉教授)が提唱する、知識創造の原動力となる主観的な意志、すなわち「信念」や「意図」にも通じます。AIには感情や主観的な「愛」がないため、こうした人間的な信念と意図を活かしていくことが非常に重要になります。
イノベーションは、社会や人のために役立ちたいという、野中氏の知識創造理論(SECIモデル)でいう「理不尽なこだわり(=愛)」から生まれるものです。ウィルソン・ラーニングがL(Learning)から始まるように、Lは「Love(愛)」でもあると捉えています。私たちは、「愛と情熱」を持ってお客様の支援に全力を尽くしたいと考えています。
学部長兼教授
Lawrence Ablen

はじめに、アリゾナ州立大学サンダーバードグローバル経営大学院の学部長兼教授であるLawrence Ablen氏より、同校の長年にわたる国際教育推進の歴史と、自身のキャリアから得たリーダーシップにおける二つの教訓についてご講演いただきました。
ダイバーシティ(多様性)とインクルーシビティ(包括性)は組織の大きな強みになる
アリゾナ州立大学サンダーバードグローバル経営大学院は1946年に設立された世界でも最も歴史あるグローバルマネジメントおよびグローバルビジネス専門の大学院大学です。
私は、長年にわたり、多くの組織でリーダーシップ育成を支援してきた経験から、二つの教訓を得ました。
一つは、「仕事は簡単だが、人はそうではない」ということです。組織が仕事を難しくすることもあれば、人もまた私たちの仕事を非常に難しくすることがあります。
もう一つの教訓は、「リーダーが多世代のチームを管理することの重要性」です。
多くの企業や組織では、4〜5世代にわたる人々が働いており、リーダーは、多世代をマネジメントする能力を持ち、異なる価値観や視点を理解し、オープンな組織文化を醸成する必要があります。さらに、新しいアイデアを提案することへの恐れをなくし、受容的環境を作り出すことが必要です。私は多くの経験から、ダイバーシティ(多様性)とインクルーシビティ(包括性)は組織の大きな強みになり得ると改めて感じています。とくに、Z世代、 α世代にとって、新しいアイデアを受容できるオープンな組織文化は、イノベーションと学習の促進になると考えています。
今回、ウィルソン・ラーニングとのパートナーシップという素晴らしい機会をいただき、このコラボレーションがもたらす可能性に期待しています。
教授
David Slocum

続いて、アリゾナ州立大学サンダーバードグローバル経営大学院 David Slocum 教授より、「学習者としてのリーダー(leader as learner)」についてご講演いただきました。
学習者としてのリーダー(leader as learner)とは
リーダーシップと学習は、まず学び、次にリーダーシップを発揮するといった順序的なものではなく、同時進行し相互に形成し合うプロセスです。私たち全員が毎日リーダーであり、多忙なスケジュールの中で、自分の注意、エネルギー、時間を管理することで、自分自身をリードしています。私たちの多くは、他者、タスク、組織をリードしており、その中で必然的に学習を始めることになります。そして、リーダーシップと学習と内省を繰り返し、強化しているのです。
「何を学んだか」より「どのように学んだか」が重要である
私たちはリーダーとして完成することはなく、学習者として完成することもありません。
学べば学ぶほど優れたリーダーになり、リーダーシップを発揮すればするほど、より多くのことを学びます。常に継続的なリードと学習のプロセスを繰り返し、「何を学んだかだけでなく、どのように学んだか」が重要であり、定期的に内省する必要があります。
心、頭、手を使い、匠のようにリードと学びを繰り返していく
私は、リーダーシップを「クラフト(craft/職人的な営み)」と捉えています。日本には「匠の精神」という概念がありますが、匠は、熟練したスキルを習得にするのに約60,000時間を費やします。これを労働時間に置き換えると、20年から30年、あるいはそれ以上の期間に及ぶ可能性があります。リーダーシップの真の熟達とは、「心(献身)」、「頭(知識)」、「手(スキル)」を使い、卓越性、深み、思いやりを常に追求し、生涯をかけてリードと学びを繰り返し、スキルを磨き続けることだと捉えています。それは、完璧に到達することではなく、自分のあり方、関わり方を、日々、少しずつ磨き上げることであり、実践そのものが目的なのです。
リーダーシップ熟達の3段階を示す螺旋状モデル
リーダーシップの習熟は、特定のスキルを獲得してから次のスキルへ進むような直線的かつ段階的なプロセスではないと考えています。私たちの持つテクノロジーと学習者の創造性を合わせれば、リーダーや他の学習者を螺旋状に導くことができると考えています。
これは、匠の持つ「スチュワードシップ(指導的役割/奉仕の精神)」に至るまで、熟練度が高まっていく相互構成的なプロセスです。
| フェーズ1:見習い | 指導を受けながら学び、実践していく |
|---|---|
| フェーズ2:熟練工 | 学びと実践を繰り返し、実践をチームや組織と共有する |
| フェーズ3:匠 | “組織を預かる者(スチュワード)として導きながら、学び続ける存在”であり、その実践は、内省的で、かつ全体を見渡した体系的なものである |
人間にしかできない技を極め、生きた実践を繰り返す
デジタル時代におけるリーダーシップは、AIと共に学び、人間にしかできない「見極める力」という技を深め、機械化できない学びを積み重ねることが重要です。
リーダーシップと学習は、同時進行し相互に形成し合うプロセスであり、その目的は実践にあります。AIがどれだけ進化し、巧みに使いこなせるようになったとしても、リーダーとしての真の「クラフト(craft/職人的営み)」とは、日々学び、感じ取り、判断し、注意深く、洞察力を持って生きることであり、人と深く関わり続ける「生きた実践」にあると言えます。
- 注:Lawrence氏、David氏の講演は英語で行われました。
/AI事業本部 本部長
株式会社Arty Intelligence Lab. 代表取締役
橋口 剛

続いて、「L×Technology:テクノロジーが変える未来の学び」をテーマに、元グーグル・クラウド・ジャパン、現 株式会社Arty Intelligence Lab. 代表取締役 橋口 剛 氏にご登壇いただきました。
はじめに、最新の生成AIについて、資料作成(Gemini、Gamma)、画像生成(Gemini)、動画生成(OpenAI Sora)、音楽生成(Suno)を用いたライブデモンストレーションが行われました。
わずか数分から数十分で完成したスピードとクオリティの高さに聴衆から驚きの声が上がりました。
「退屈な学び」の原体験がAI×教育分野に関わる原動力になった
橋口氏は、義務教育から企業研修に至るまで、従来の画一的な座学が「非常に退屈であった」と告白し、「一斉授業(One-to-All)の形式が自身の理解度やペースと合わず、既知の内容を繰り返し聞かされたり、未知の部分が飛ばされたりする体験が苦痛だった」と明かしました。
その一方で、必要な知識は自身のペースと独自の方法で主体的に学んできた経験から、生成AIと教育の相性は非常に良く、AIを活用して学習体験を向上させられると考え、自身の原体験がAIを活用した教育事業に注力する原動力になっていると語りました。
真の個別最適化学習を支えるパーツは揃った
Googleの「LearnLM」や「NotebookLM」「MathGPT.ai」に代表されるように、AIは単なる情報検索ツールから「学習パートナー」へと進化しています。すでに、個人の理解度に合わせて学習内容を掘り下げてくれるアダプティブラーニングや、隙間時間を活用するマイクロラーニングを実現するためのツールが多数存在し、ツールを使用した生徒の方が満足度も成績も向上したという結果も出ています。
「ブロックチェーン技術を活用すれば、グローバルな単位互換のような仕組みもよりシームレスに実現可能になります。学習を支援するための技術は一通り揃ってきたと感じています。AIを活用した教育事業を通して、僕が嫌いだった教育体験を覆す手伝いをしたい」と、熱意を込めて語りました。
企業におけるAI活用のメリットは、暗黙知の形式知化
企業におけるAI活用のメリットの一つは、経験や勘に基づく暗黙知を誰でも理解できる形式知に変換し、ナレッジとして蓄積できることです。例えば、AIによる会議の全自動文字起こしと要約で、重要な議論や決定事項が確実に組織に蓄積され、全員の共通資産(形式知)になります。また、プレゼンテーションの際に口頭で補っていた大半の情報も文字情報として残し、それを基にAIにスライドを自動生成させることで、全ての情報を形式知として蓄積することができます。
企業の活用事例として、優秀な営業担当者と新人営業担当者の商談内容をAIで分析し、「間の取り方」「キーワードの使用頻度」「話の構成」の差を定量的に言語化することで、改善ポイントを即座にフィードバックすることができます。「先輩によって指導内容が違う」という問題も解消し、スキルの平準化が期待できます。
また、コールセンターのオペレーターの会話内容をリアルタイムで分析し、顧客の感情(怒り、喜びなど)を可視化して蓄積することで、将来的には、AIがオペレーターに応答方法をリアルタイムで提案することが期待されます。すでに、通話終了後に応対品質を評価し、フィードバックを自動生成するソリューションも存在しています。
AIによる労働市場の変化は、リスキリングと雇用のマッチングが鍵となる
「AIの普及は、パンドラの箱を開けた状態であり、労働市場において、10年後には1100万人の労働者不足が見込まれる一方で、特にジュニア層においてAIが雇用を奪う懸念がある」と橋口氏は指摘します。
「この課題解決のキーポイントは「リスキリング」と「雇用のマッチング」です。特定領域でエンジニアが不足し、その一方で、営業職が過剰になるなど、職種のミスマッチを簡単に解消することは難しい。しかし、リスキリングと雇用マッチングを円滑にする仕組みを構築できれば、労働者不足とAIによる雇用代替という二つの課題を同時に解決できる可能性があります。AIによる業務自動化と労働人口減少がうまく噛み合えば、その相乗効果が福音となる可能性があります」と見解を述べました。
AI導入の第一歩は、ユースケースを学び、遊んでみること
最新のAI技術を活用すれば、簡単な指示で高品質なマルチモーダルコンテンツが生成可能であり、AI生成コンテンツをプロモーションに活用し始めている企業も増えています。すでに多くの企業で「AI推進チーム」といった専門組織が設置され、AIの活用が積極的に行われています。
これから導入する企業に対し、橋口氏は、「AIの進化は速すぎるため、全員がついていくことは不可能です。完璧に追随しようとせず、まずはAIが「何に使えるのか」というユースケースを学び、とにかく触って遊んでみてください。AIを活用しないという選択肢はないので、成功事例も失敗事例も含めた情報を組織内で広く共有していくことが重要です」と述べ、講演を締め括りました。
株式会社H&Eテクノロジー 代表取締役
一般社団法人ソフトウェア協会 理事
原山 青士

懇親会もAIの未来を語る場に
フォーラム終了後の懇親会では、原山 青士 氏(教育テック大学院大学 特任講師/株式会社H&Eテクノロジー 代表取締役)によるAIデモンストレーションが実施されました。
原山氏は、教育分野におけるAIの具体的な活用例として、「映像×AIによる質評価&人材育成(AIコーチ)」や「高校の探究学習用生成AIアシストシステム(AIティーチャー)」、さらには「テキストデータをベースとした自動クイズ生成システム」などを紹介。
参加者は、食事を楽しみながらもAIが創り出す未来の学びの形に興味を示し、活発な質疑応答や意見交換が行われました。
気兼ねない雰囲気の中で、最先端の技術がもたらす可能性について語り合い、AIの未来について深く考える貴重な機会となりました。
アステナホールディングス株式会社 社外取締役
永井 恒男アイディール・リーダーズ株式会社

続いて、アイディール・リーダーズ株式会社 代表取締役 CEO 永井 恒男 氏より、「人と組織のトランスフォーメーション」についてご講演いただきました。
組織開発とは何か?人材開発とどう違うか?
欧米の多くのグローバル企業では人材開発部と並んで組織開発部が存在しますが、日本では「組織開発」という職務の認知度が低いという現状があります。人材開発と組織開発の違いについて、永井氏は次のように説明しました。
「人材開発のアプローチは「個人」に焦点を当て、個人の能力向上により全体のパフォーマンスの総和を高めることを目指します。一方、組織開発のアプローチは、人と人との「関係性」に焦点を当て、個々の能力の掛け算による相乗効果により組織全体のパフォーマンスの最大化を目指すものです。従来の組織変革がトップや一部のリーダーという「個人」起点の取り組みだとすれば、組織開発は、共に考え、組織を理想の状態へと変革を促す取り組みです。」
組織の状態が「アクセル」にも「ブレーキ」にもなる
永井氏は、ある従業員が別の組織に異動したことで以前より活躍するケースを例に挙げ、個々の能力が高くても組織の状態が「ブレーキ」になるケースがあると指摘します。
「社員の主体性を高めたい」という経営者からの要望は非常に多いのですが、企業が優秀な人材を採用・育成しても、組織の状態が原因でその能力が十分に発揮されず、主体性が低くなっているのであれば、組織開発のアプローチが必要です」と述べ、「自組織の状態は、理想の実現に向けたアクセルになっているのか?それともブレーキになっているのか?」という問いを持つことの重要性を強調しました。
組織の現状把握の難しさと、「主体性」という曖昧な指標の問題点
組織開発における最初の難関は、「組織の現状をどう測るか」と「理想の状態をどう明確に定義するか」の2点です。しかし、一般的なアセスメントツールでは、業界平均や同規模の企業と比較した結果を4象限のシンプルなマトリックスに落とし込むような単純なものが多く、組織の現状の詳細や社員の主体性が低い原因を究明することが難しいという課題があります。
組織カルチャーを多角的に分析するアセスメントツールを開発
そこで、アイディール・リーダーズ株式会社では、組織カルチャーを多角的に分析するアセスメントツール「組織文化インサイト診断」を開発し、提供しています。
「組織文化インサイト診断」では、「個人主義/集団主義」、「不確実性の回避/許容」「長期志向/短期志向」など、6つの組織文化の軸の傾向の強弱を可視化し、主体性の低さが何に起因しているのかを分析するための組織の現状把握に役立てることができます。
組織変革におけるもう一つの重要事項は、「理想の状態」を具体的に定義することである
近年、中期経営計画で人的資本経営や組織カルチャーについて言及する企業も増えていますが、「その中身を見てみると事業目標のみで、理想とする人・組織の状態に関する定義が欠けている会社が多い」と永井氏は指摘します。
「顧客価値創造といった事業面の目標と同時に、人・組織をどうしていきたいのかを明確に定義し、そこに向かって進むという共通認識がなければ、組織を理想の状態にすることは難しい」と述べ、目指す姿、あるべき姿といった理想の状態をより具体的に定義し明示していくことの重要性を示しました。
モチベーションの構成要素を知り、内発的動機を促す
組織開発の有効なアプローチとして、『ToMo指数』について説明しました。
『ToMo指数』とは『Total Motivation(トータル・モチベーション)』の頭文字をとった略語で、『マッキンゼー流 最高の社風のつくり方』著者のニール・ドシ氏とリンゼイ・マクレガー氏によって提唱されている“仕事のパフォーマンスに影響を与える総合的な動機”に関する指数です。
人が働く動機には直接的動機と間接的動機があり、長期的にパフォーマンスを向上させるためには、直接的動機を意識したマネジメントに転換する必要があります。
人と組織のトランスフォーメーションが理想の組織を実現する
最後に永井氏は、「組織開発は、個人が組織に所属しているだけで自然と人が育ち、成果が生まれるような状態を目指すためのアプローチです。組織が理想を実現するためには、「人のトランスフォーメーション(個人の能力開発)」だけでなく、「組織のトランスフォーメーション(組織開発)」が重要です。組織開発の可能性を感じて欲しい」と述べ、講演を締め括りました。