[ウェビナーレポート]
8/23開催【栗田工業株式会社の実践事例】価値創造に挑む企業に求められる「イネーブルメント」とは?

2024年8月30日

【第一部】イノベーション本部の人づくりの取り組み


栗田工業株式会社
執行役員
イノベーション本部長
鈴木 裕之 様

第一部は、経営者の視点から、イノベーション本部の人づくりの取り組みと事業戦略における人材育成・組織文化づくりのねらいをご説明いただきました。

価値創造の挑戦者を育てる組織文化づくりの取り組み

栗田工業は、1949年にボイラの水処理薬品事業(ボイラ薬品)会社として創業、事業基盤を水処理装置事業・メンテナンス事業へと拡大し、今年で75周年を迎えます。

「“水”を究め、自然と人間が調和した豊かな環境を創造する」を企業理念に掲げ、さまざまな産業・社会インフラ・宇宙などの水処理に関わり、お客さまの抱える課題に対する最適なソリューションの開発・提供を行ってきました。

国内の高度経済成長期の公害問題に対して環境企業として発展し、21世紀には電子産業向けに自社で設備・資産を保有、超純水を供給するという新たなビジネスモデルを展開しています。さらに、欧米を中心とした企業買収を通じて、2000年当初より売上を約3倍に拡大しています。

国内・海外における特許保有数は2600件を誇り、その特許資産としての評価はエンジニアリング業界でトップクラスであり、知財による競争優位性を意識した研究開発を実施してきました。

「水の新たな価値」の開拓者を目指して

2023年度からスタートした中期経営計画では、サスティナビリティを経営戦略の中核に位置付けています。新たなステージへの変容へと舵を切り、顧客接点を起点とした技術の取り組みに加え、潜在的な社会課題に対してもクリタグループの「水に関する知」を駆使した新たな事業や市場を開拓、より広く世の中に共通価値を提供することを目指しています。

中期経営計画に基づき、2030年のクリタグループの目指す企業ビジョンは、持続可能な社会の実現に貢献する「水の新たな価値」の開拓者です。
「この企業ビジョンには、持続可能な社会の実現につながる社会価値を新たに生み出しながら、高収益企業となる経済価値を創出し、企業価値を向上させるという意思が込められている」と鈴木氏は説明します。

マテリアリティの解決に向けてイノベーション本部が担う役割

クリタグループのマテリアリティ(重要課題)は、3つの共通価値テーマと、その実現を支える5つの基礎テーマから構成されています。従前の研究開発では、お客さまの抱える課題に対し最適なソリューションの開発を進めてきましたが、中期経営計画では、「水資源の問題解決」「脱炭素社会実現への貢献」「循環型経済社会構築への貢献」という社会との共通価値の創出をイノベーション本部が担い、「革新的な製品・技術・ビジネスモデルの開発と普及」を目指します。

マテリアリティの解決に向けて、イノベーション本部が担う役割は、従来の枠にとらわれない、顧客起点のビジネスモデルの創出やビジネスプロセスのトランスフォーメーション、潜在的社会課題を起点としたイノベーションの創出です。
Value Pioneering Pathについて鈴木氏は、「この価値創造の道筋の原動力は人材です。中期経営計画の目標達成の実現に向けて、戦略的な人材育成と活用が最重要課題です」と説明しました。

クリタグループの人材戦略の目指すD&Iビジョン

クリタグループの人材戦略の目指すD&Iビジョンの鍵となるのは、多様性の活用とエンゲージメントの醸成です。この2つのサイクルが共に交わり、循環を続けることで、イノベーションが生まれ、水の新たな価値を創造する企業グループへ変化していくことを目指しています。

D&Iビジョンの実現に向けて策定した人材ポリシーでは、クリタグループの仕事を通じて、顧客・社会・地球環境への貢献に喜びを感じ、新たな価値の創出に邁進する多様な分野のプロフェッショナル集団であるための人材と組織のあり方を定めています。
「挑戦することが歓迎され、失敗から学ぶことが尊ばれる組織の醸成が重要である」と鈴木氏は説明します。

エンゲージメント調査から見えてきた課題は「組織、人、風土のマインドセット」

人材戦略に向けて、中期経営計画の始まる前年度に本部内で討議した結果、「理想とする方向性と現状に大きなギャップがあり、従来の延長線上にイノベーションを起こすことは難しく、組織、人、風土のマインドセットが必要なことに気づかされた」と鈴木氏は語ります。

従来の研究開発活動は、顧客の課題に対するソリューションの開発という技術や製品の改良・改善であり、インプルーブメント主体で、マネジメントも上意下達による管理統制型でした。今後、社会起点で新しい価値創造のイノベーションを目指していくためには、従来のような受動型ではなく、主体的に提供価値を考える必要があります。

それは、人づくり(組織・ヒト・風土)の変革においても同様です。インプルーブメント主体の研究開発であれば、組織内のOJTで技術伝承を含めた人材育成を行うことで十分です。しかし、「社会課題を起点とした水の新たな価値の創出を目指すとなると、従来の組織では教えることができず、社内での人づくりの限界を感じた」と鈴木氏は説明します。

そこで、「人づくりの専門家」である人材開発コンサルティング会社の協力を得て、社員の「挑戦」を促進し、新たな価値創造を加速させる組織文化変革に取り組むことにしました。

想い(WILL)を大事にする考えが導入の決め手に

ウィルソン・ラーニングを選定した理由について、鈴木氏は、「提案いただいた各社が自前の教育プログラムの素晴らしさを訴求する中で、ウィルソン・ラーニングは本部員の想い(WILL)を大事にし、WILLをベースにした失敗を恐れないチャレンジャーの育成、挑戦を後押しするマネジメント側のイネーブラー育成が重要であると説明しました。ウィルソン・ラーニングの提唱する価値に心を打たれ、伴走を依頼しました」と述べ、講演を締めくくりました。